ファンタジーDay★｜リアクション

ファンタジーDay★

～シーサイドタウン駅最上階～

　ノーラ、夏朝、松生、まほろのグループ及び、
　みさき、翡翠、修、月、真央のグループが最上階に達する。

「月ちゃんどうだったのだ？　ボスいたのだ？」
　偵察に出ていた常闇月に後木真央が尋ねる。
「居ました。この先の広くなっている場所に、このぐらいのが」
　両手を拡げて大きさを指し示す。
「まあ実際はもっとおおきいですが」
　八神修の方に向き直る月。
「そ、そうか……ご苦労様」
　視線を外す修。
「？　どうかしましたか？」
　無意識なのだろうが、大きく胸の開いた衣装でそんな格好をすると……なんとも刺激的だった。
「にゃはぁ～～～やっとボスとご対面にゃ～～！　よぉし、突撃にゃ！」
　アメショ柄の猫村翡翠がメンバーを振り返って言い放つ。
　体毛も逆立ち始め、既に戦闘準備万全といったところだ。
「待って。ちょっとだけ私に時間を貰えないかしら」
　ノーラが手を上げる。
「スライムの中には知性を感じさせる物も居たわ。ボスだもの、意志の疎通が出来るかも知れない」
　メンバーを見渡す。鎧が金属音を立てる。
「話が出来れば戦いも避けることが出来るかも。それに……この異変の解決の糸口が掴めるかも」

　ノーラの意見を取り入れ、先ずは交渉することになった。
　ノーラ達のグループは彼女の護衛に回る。
　翡翠達のグループは背後に回り、交渉決裂時の為に待機する。

　縦横１５メートル程の、ガランとした室内。そこここに破壊された機材が散らばり、壁には焼け焦げた跡が着いている。
　ロータリーに面した側は一面のガラス張り。
　そこからは今も戦闘を続ける轟達の姿が見える。
　天井には日差しを取り込む用の天窓があり、オレンジ色の光が差し込んでいた。

　そのオレンジの光を受けて巨大なスライムが鎮座している。
　体色は灰色。形は小型の物と同じだったが、頭には何か宝石のような物が煌めいている。
　ときおりぷるぷると蠢く巨大スライム。
　床が粘液で濡れていた。
「（ノーラさぁ～～ん、ＯＫですよ～）」
　美咲紀が両腕で輪を作ってサインを出す。
　裏側の非常口から回り込んだ翡翠達のグループが、配置についた。
　コクリと頷くとノーラは一人歩み出る。刺激しないように剣は仲間に預けてあった。

　ピチャ……ミシィ　ノーラに気づいたのか、巨大スライムが身じろぎをする。
　巨体の下敷きになっていたスチール机が軋みを上げた。
―なんて大きさ……早まったかしら……―
　ごくりと喉を鳴らす。弱気の虫が頭をもたげる。
　そんな自分を叱咤するように名乗りを上げるノーラ。
「私は……白雪の騎士、ノーラ・ブランネ―ジュ。当方はあなたと争いたくはありません。平和的解決を望みます！」
　一歩近づく。
「あなたの目的は何ですか？　私達に出来る事であれば、応えたいと思います」
　ノーラの声がガランとした室内に朗々と響く。
　巨大スライムは動きを止め、微動だにしない。
―聞いている？　もしかしたら、話し合いで解決できるかも―
　更に一歩近づく……
　ピチャ、ピチャ……
　ピチャ……ミシィ！！！
　粘液を滴らせていた巨大スライムが、不意にソレを飛ばしてきた。
「あ、あぶないにゃあ～～～～～～！！」
　夏朝の声がホールに響く。
「え！？　うわあああ！！」
　シュバ！　人影が飛び込み、ノーラを抱え上げる。
　そのまま宙を跳躍し、スライムの攻撃圏外に逃れる。
　松生と夏朝のにゃんこーずだ。
　間一髪難を逃れたノーラ。
　同時に、巨大スライムの背後からわらわらと通常のスライムが姿をあらわす。

「……ふぅ～まったく……無茶するにゃ……」
　ペロペロと丸めた前足を舐める松生。
「……ワレ交渉決裂ナリ……」
　まほろが決めておいたサインを出す。
　それを合図に巨大スライムとの戦闘が始まった。