【節分】鬼は外、福は内、本物の鬼は内に有り｜リアクション

【節分】鬼は外、福は内、本物の鬼は内に有り

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　三人が鬼に敗れたのと同じ頃、深縹露草は四次元を探索していた。
　節分を楽しみにやってきたのに囚われてしまった怒りもあるが、四次元空間も色々と気にはなる。
　鬼の目論見を潰すような、重要な発見があるかもしれないし。
　メモ用紙に紋章を描き、『我が紋章は、光り輝く道標』を発動。
　念じるのは、『他に囚われた人への直線経路を数メートルごとに』。
　しかし四次元には暗闇が広がるばかりで、光はちらりとも見えなかった。
　先ほど既に夏朝と真白に出会っていて、彼女らの向かった方向もわかっている。そちらを振り返っても、豆電球程度の光ひとつない。
（やはり、通常の距離の概念は通じないんデースね）
　自分が囚われていた場所を試したときは光っていたから、おそらくそういうことなのだろう。
（次は……）
　もう一度ろっこんを発動する。今度は、『先ほどいた森以外の、普通の寝子島へ繋がる出口』を念じながら。
　……光はない。
　できれば森は避けたいところだが、そうも言ってはいられないらしい。
　『普通の寝子島へ繋がる出口』を念じる。
　暗闇のずっと向こうに、光が灯った。瞳をこらしていなれば、暗闇の中であっても気づけないかもしれない小さな光が。
　おかげでついでにわかったが、囚われていた樹々は決して出口にはなり得ないようだ。
　四次元を探索する他の人たちにも伝えておきたいが、どうするか。
　まさかねこったーが使えるわけはないだろうし……と少し考えた後、露草はメモを一枚破り取った。
　書き置きがどれだけアテになるかはわからないが、なにもないよりはよほどマシだろう。
　その場にメモを残し、露草は再び四次元を進み始める。
　それにしても、囚われてしまったときは、もっと地獄のような空間に放り込まれるのではないかと思ったのだが。
　不自由はあれど、この空間自体には「人を苦しめる」ような環境やシステムは今のところ見当たらない。
　それだけに、目的が見えない。
（人間を『道端の石ころ』に例える割に、干渉して捕えていますし）
　『取り替えたら解放してやる』と言うからには、何かと取り替える気ではある。
　一体あの鬼は、何をするつもりなのか。
「人間を一時的に四次元に入れる事で、何らかのエネルギーを得る……」
　あるいは。
「『特定の誰かを四次元に入れて何かを起こす』……？」
　四次元空間の暗闇のように、思索の答えは見えてこない。
　
（あれには関わりたくない。どこぞの鳥の時みたいに、襲われて嘲笑われるなんてごめんよくそったれぇ！）
　かつて寝子島で悪さをしていたどこぞの烏のことを、三夜深夜子は未だに引きずっているようだった。
　あの鬼だって、変に関わったら他の鬼だの悪魔だのを呼ばれるに違いない。
　そして襲われて、嘲笑われるに違いない。
　だから鬼には絶対に関わらない。深夜子はそう決めていた。
　そう。そんなことより、四次元を探索するのだ。
　もしかしたら鬼の道具や情報、他の世界へのつながりが見つかるかもしれない。
　何かしら、手がかりになるようなものを見つけることができれば。
　そう思っていた矢先、前方斜め上の空間に穴が空いた。
　まさか鬼が、と慌てて身を隠そうにもそんな場所はなく、とりあえず縮こまって様子を伺う深夜子。
　すると穴の向こうから覗くのは、深夜子が囚われたのと同じ森の風景。
　そこから伸びた鬼の腕が少年を一人、ゴミ捨てのように無造作に放り込む。
（あの鬼、好き勝手暴れて～！）
　気付かれないようにしながら、深夜子は鬼の腕をにらみつける。
　自分が怒りにかられて何か仕掛けたところで、やられてしまうのが関の山だ。
　けれど、「人を捕えるとき、鬼の身体は一瞬こちらへ入り込む」――このことがわかったのは、結構大きいような気がする。
　鬼の手が引っ込んで穴が閉じるやいなや、深夜子は少年――豪へと駆け寄った。