【節分】鬼は外、福は内、本物の鬼は内に有り｜リアクション

【節分】鬼は外、福は内、本物の鬼は内に有り

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　黄色と黒のロープに覆われた切り株を、ハルキは樹々の陰から見つめていた。
（何も出来なかった。も、受け入れて。今できること）
　ロープの周囲に、さらに釣り糸は巡らせた。
　遭遇した時の口ぶりからして、おそらくはヤツの帰り路。
　そうでなくとも、何か起きてもおかしくない。見張るくらいは、しておいてもいいだろう。
（特殊能力とかある人は、走り回ってる。なら、裏方くらいはね）
　それにしても、実際に相対してなお山羊鬼は分からない。
　目的も正体も、「ただの悪い鬼」というだけではないのは確かだが。
　子供だろうと邪魔なら殴り飛ばすわりには、積極的に殺そうとまではしてこない。
　その気になればお祭りに直接乗り込み、大惨事だって引き起こせただろう。
　なのに決して、大勢の人の前には出てこようとしなかった。
　悪い鬼というよりはむしろ、ある意味では仕事人の類のような。
　切り株を見やる。
　あれが異界の門で、山羊角があそこからやってきた存在で。
「異界の何かの手下、なのか？」
　その時、切り株の近くの空気が波打ったような気がした。
　連絡を取ろうとしたハルキだが、何か様子がおかしいことに気づく。
　波打った向こうから覗いているのは、人の手だ。
　手から腕、腕から肩、首、でもって頭。
「脱出成功デース……？」
　露草が顔を出し、きょろきょろと辺りを伺っていた。
　とりあえず一報入れて、露草のほうへと歩み寄るハルキ。
「もしかして、山羊角に捕まってたとか？」
「そうです！　他の人もいるんですが、あの、鬼は……」
「詳しくは、俺も。少なくともこの辺には居ないです」
　四次元に捕らわれていた人々は、無事に脱出を果たした。
　
　山羊鬼がどこへ消えたのかはわからない。
　もしかしたら、もう傷が原因で死んでいるのかもしれない。
　ひとつ確かなのは、山羊鬼が健在だったなら。
　一度は脱出できたとしても、送り返されて二度とは戻れなかっただろうということだけだ。
　
◆
　――後日。
　節分祭が終わった寝子島神社を、桜栄あずさ理事長は一人訪れていた。今日はほろ酔いではない。
　出店の撤収はとっくに終わっていて、境内にはいつもどおりの静けさが広がるばかり。
　祭りの喧騒も何もかも、まるで一夜の夢だったかのよう。
　あるいはただの悪夢であったなら、どれほどよかったのだろうか。
　祭りの喧騒の裏に現れた、あの山羊のような角をした鬼のも。
　あの鬼から、自分も守ろうとして傷ついた子たちの姿も。
　やがて理事長は、寝子島神社に背を向ける。
　薄暗くなりはじめた空を、黒い雲が覆いだしていた。
　

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あとがき

担当マスター：風雅宿
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さて皆様、節分の鬼退治はいかがでしたでしょうか。

山羊鬼を撃退し、NPCを守ることには無事成功いたしました。
ですが山羊鬼の討伐には至らず、逃走を許すことと相成りました。

いつもの風雅よりも難度高めということもありまして、思っていたような結果にならなかった方も相当数いらっしゃるのではないかと思います。
特に山羊鬼とぶつかることになった方は、かなり厳しめに判定をさせて頂きました。
山羊鬼自体が強力な敵ということもあり、アクション次第では何も出来ずにやられてしまったように見える方もいらっしゃるかと思います。
ですが微かなダメージや時間の積み重ねが、山羊鬼の撃退へと繋がったのは確かです。
そのうえでもっと連携を取って、「全員で一斉に山羊鬼を叩く」といった状況を作り出せていれば、よりスムーズに撃退・討伐ができていたかもしれません。

なお、「四次元に行ってた人たちが捕まってた人たち救出してきたから、山羊鬼と戦った意味ないんじゃないの？」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これについてははっきりと否定させていただきます。
リアクションでも触れておりますが、山羊鬼が健在だった場合
「四次元から脱出をしたところを山羊鬼に襲撃され、もう一度捕らえられる」
「四次元からの脱出中に山羊鬼からの干渉を受けて脱出できない」
のどちらかが発生していたからです。

四次元で奮闘していた皆さんと、山羊鬼と戦った皆さん。そのどちらが欠けてもダメだったわけです。

また半ば余談のような内容となりますが……今回ダメージ描写がいつもの風雅よりキツめとなっています。
これは「高難度の物理戦闘」「敵は異界の鬼のため、遠慮する理由がない（これは鬼側のダメージ描写も同様です」等の要因によって、
「命のやり取りに匹敵する戦闘」と判断したことによるものです。

ゆるーい日常が楽しめるらっかみ！でも、なんだかんだと戦闘アリのシナリオを書かせて頂くことも多い風雅ですが、
このような厳しいタイプは（風雅の担当の中では）今まであまりなかったかと思います。
たまの機会に、皆さんが濃密な時間を過ごしていただけたのであれば幸いです。
風雅としてもこういったものは久方ぶりでしたので、アクション拝読から楽しく書かせて頂きました。

それでは、またお会いいたしましょう。

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