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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
Real Thing Shakes
お願いしまーす、と豊田 華露蘿はIDカードを示す。
入り口の警官は顔なじみなので、「ご苦労様です。寒いですね」と気さくに声を掛けてくれた。
「ですよね。また雪降ってきたし」
ぺこりと一礼して勝手口のゲートをくぐった。ごろごろと台車を押して進む。
さすが警察署、警備は厳重だ。
いや、ちょっと今日は厳重すぎるかもしれない。
数メートルもいかぬうちに、
「ごめんなさい、ちょっといいですか？」
婦人警官が出てきて華露蘿を止めたのである。なにげない風を装ってはいるが、奥に通さないという姿勢をナチュラルにとった。
「ボディチェックさせてください。すぐ終わりますので」
「あ、はい。どうぞ」
任せておく。婦人警官は丁寧にも台車に積んだ荷まで調べはじめた。
なんだろう。
指定時間の五分前に来たせいかな、妙に慌ただしいぞ？
そういえば……表にテレビ局の中継車が停まっていたような。
華露蘿は警察署に文具の納品と入札照会に来ていた。定期的な業務だ。
しょっちゅう来ている自分にこれだけ警戒するとは。
何か事件でもあったのかな？
とは思うがまさか警官に尋ねるわけにもいくまい。訊いたとて「ええちょっと……」と体よくごまかされるのが関の山だろう。
華露蘿はめったにテレビを観ない。新聞もとっていないためニュースソースはもっぱらネットだ。それだって毎日チェックしているわけではないから、どうしてもホットトピックには縁遠くなる。文具の新商品展開には誰よりも詳しいが、残念ながら同業者以外に喜びをわかちあえる相手はまれだった。
間もなく許可が出て、華露蘿は台車ごろごろを再開した。
事務室にたどりつく。
「こんにちはー」
入って社名を告げ担当者を探した。
あれー？
やっぱり今日は様子がちがうな。
呼ばれるとすぐ出てくるスキンヘッドな事務長さんがいないのだ。いつもなら机の間から、それこそモグラ叩きみたいにひょこっと顔を出してくれるのに。
「滑山（なめらやま）さんは？」
手近な事務員に尋ねてみる。滑山というのがスキンヘッドさんの本名だ。頭つるつるだけに『滑』山さん――という至極イージーな記憶法を実践しているのは華露蘿だけではあるまい。
「はい？」
顔を出した事務員を見て、
やったラッキ！
華露蘿は心の中でガッツポーズを取った。
「ごめんなさい、滑山さんは急用で不在だから、廊下の長椅子で待っててくれませんか」
応対してくれた事務員が星下さんだったから。
ああ星下さん、星下さん、あなたはどうして星下さんなんですか……。
うっとりした目で華露蘿はうなずく。
星下というのは新入りの女性事務員だ。まだ入って三か月らしい。月十二回出勤の臨時職員なので毎日いるというわけではない。華露蘿も会えたり会えなかったりだ。いや実際会えない日のほうが多い気がする。
星下はかわいいのである。
いやさ華露蘿の個人的意見を反映して表現するなら『キャワイイ』のである。
ファンタジーに出てくるエルフみたいに細くて華奢できれいでそのクセ天然ボケで、華露蘿の好みど真ん中ストライクなのだ。
先日などは真顔で「『富士額』って『不治額』って書くんだと思ってました。生え際が後退してもう戻らない、って意味で……あ、それ『猫の額』でしたっけ？」などと真剣に語っていた。二重三重にまちがっている。
ぽつんと長椅子に座って華露蘿は、エルフの国の星下さんを眺める。キャラは天然ボケかもしれないが業務はできる人だ。てきぱきと仕事をこなしているのがわかる。遠目に見える表計算ソフトの画面が、みるみる埋まっていくではないか。
そんなギャップも胸キュンだなあ。
ボクが男なら放っておかないね！
華露蘿は、星下になら確信を持ってそう言える。（言わないけど）
しかし今日は指をくわえて眺めているしかない。
納品だけなら、星下にお願いして、ついでにお近づきになるチャンスではあるのだが。
でも今度の入札の仕様書で確認したい件もあるし……待つしかないか。
なおその上司である滑山は、星下とはまったく異なるコワモテだ。
見かけだけならマル暴（組織犯罪、つまり暴力団対策部署）の刑事や某自由業の人たちより怖いくらいだが、システムやネットワークにも精通していて、仕事もさばける凄腕なのである。
この上司にしてこの部下あり、優秀な滑山の下に優秀な星下がついているということになるだろう。
ちなみに星下以外の事務員については、華露蘿はあんまり記憶がない。
「……あれ？」
つい声に出してしまった。
ふたりの警官に付き添われ、華露蘿の見知った姿が歩いてきたからだ。
取調室から出てきた。
入り口の警官は顔なじみなので、「ご苦労様です。寒いですね」と気さくに声を掛けてくれた。
「ですよね。また雪降ってきたし」
ぺこりと一礼して勝手口のゲートをくぐった。ごろごろと台車を押して進む。
さすが警察署、警備は厳重だ。
いや、ちょっと今日は厳重すぎるかもしれない。
数メートルもいかぬうちに、
「ごめんなさい、ちょっといいですか？」
婦人警官が出てきて華露蘿を止めたのである。なにげない風を装ってはいるが、奥に通さないという姿勢をナチュラルにとった。
「ボディチェックさせてください。すぐ終わりますので」
「あ、はい。どうぞ」
任せておく。婦人警官は丁寧にも台車に積んだ荷まで調べはじめた。
なんだろう。
指定時間の五分前に来たせいかな、妙に慌ただしいぞ？
そういえば……表にテレビ局の中継車が停まっていたような。
華露蘿は警察署に文具の納品と入札照会に来ていた。定期的な業務だ。
しょっちゅう来ている自分にこれだけ警戒するとは。
何か事件でもあったのかな？
とは思うがまさか警官に尋ねるわけにもいくまい。訊いたとて「ええちょっと……」と体よくごまかされるのが関の山だろう。
華露蘿はめったにテレビを観ない。新聞もとっていないためニュースソースはもっぱらネットだ。それだって毎日チェックしているわけではないから、どうしてもホットトピックには縁遠くなる。文具の新商品展開には誰よりも詳しいが、残念ながら同業者以外に喜びをわかちあえる相手はまれだった。
間もなく許可が出て、華露蘿は台車ごろごろを再開した。
事務室にたどりつく。
「こんにちはー」
入って社名を告げ担当者を探した。
あれー？
やっぱり今日は様子がちがうな。
呼ばれるとすぐ出てくるスキンヘッドな事務長さんがいないのだ。いつもなら机の間から、それこそモグラ叩きみたいにひょこっと顔を出してくれるのに。
「滑山（なめらやま）さんは？」
手近な事務員に尋ねてみる。滑山というのがスキンヘッドさんの本名だ。頭つるつるだけに『滑』山さん――という至極イージーな記憶法を実践しているのは華露蘿だけではあるまい。
「はい？」
顔を出した事務員を見て、
やったラッキ！
華露蘿は心の中でガッツポーズを取った。
「ごめんなさい、滑山さんは急用で不在だから、廊下の長椅子で待っててくれませんか」
応対してくれた事務員が星下さんだったから。
ああ星下さん、星下さん、あなたはどうして星下さんなんですか……。
うっとりした目で華露蘿はうなずく。
星下というのは新入りの女性事務員だ。まだ入って三か月らしい。月十二回出勤の臨時職員なので毎日いるというわけではない。華露蘿も会えたり会えなかったりだ。いや実際会えない日のほうが多い気がする。
星下はかわいいのである。
いやさ華露蘿の個人的意見を反映して表現するなら『キャワイイ』のである。
ファンタジーに出てくるエルフみたいに細くて華奢できれいでそのクセ天然ボケで、華露蘿の好みど真ん中ストライクなのだ。
先日などは真顔で「『富士額』って『不治額』って書くんだと思ってました。生え際が後退してもう戻らない、って意味で……あ、それ『猫の額』でしたっけ？」などと真剣に語っていた。二重三重にまちがっている。
ぽつんと長椅子に座って華露蘿は、エルフの国の星下さんを眺める。キャラは天然ボケかもしれないが業務はできる人だ。てきぱきと仕事をこなしているのがわかる。遠目に見える表計算ソフトの画面が、みるみる埋まっていくではないか。
そんなギャップも胸キュンだなあ。
ボクが男なら放っておかないね！
華露蘿は、星下になら確信を持ってそう言える。（言わないけど）
しかし今日は指をくわえて眺めているしかない。
納品だけなら、星下にお願いして、ついでにお近づきになるチャンスではあるのだが。
でも今度の入札の仕様書で確認したい件もあるし……待つしかないか。
なおその上司である滑山は、星下とはまったく異なるコワモテだ。
見かけだけならマル暴（組織犯罪、つまり暴力団対策部署）の刑事や某自由業の人たちより怖いくらいだが、システムやネットワークにも精通していて、仕事もさばける凄腕なのである。
この上司にしてこの部下あり、優秀な滑山の下に優秀な星下がついているということになるだろう。
ちなみに星下以外の事務員については、華露蘿はあんまり記憶がない。
「……あれ？」
つい声に出してしまった。
ふたりの警官に付き添われ、華露蘿の見知った姿が歩いてきたからだ。
取調室から出てきた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年08月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年08月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2020年08月29日 11時00分
