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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
Real Thing Shakes
受験番号は、理緒がA12833。紗月はE11461だ。
理緒は芸術学部の写真学科、紗月は経済学部となる。
土臭い廊下を歩いて行くと途中で道がわかれた。チョークで書かれた案内板を見るに、理緒は右手の道をさらに奥までいった教室、紗月のほうはすぐそばの大講堂が受験会場らしい。
分岐点に立ち、結びあった手をほどく。
「理緒ちゃん、ここで一度お別れだね」
「……じゃ、ラスボスやっつけに行くか」
理緒の声が明るい。
大丈夫、紗月は思った。
いまの理緒ちゃんなら、普段の実力を出せる。
試験は午後まで続く。昼休憩で待ち合わせる場所も決めておいた。
理緒と紗月はうなずきあって別れた。
ここから先は、互いに孤独な戦いとなる。誰にも頼れない、自分の力だけの戦いだ。
振り向くまい。紗月は歩き続ける。
私は……私はいつでも理緒ちゃんのそばにいるよ紗月。
だって私のそばには、いつでも理緒ちゃんがいてくれているから。
講堂への階段をのぼっていく。
「ふふ」
自然に笑みが口をついて出た。
ここまで理緒ちゃんのことばかりで、自分の試験、ほとんど心配してなかったな。
振り向くまい。理緒は歩き続ける。
紗月と一緒の大学に行くんだ。この気持ちは絶対に譲らない。
もし試験中パニックになりそうになったら目をつぶろう。
そしたら紗月がそばにいるって、思い出すことができるだろう。
あたしだって、紗月のそばにいるからね。
試験教室のドアは開いていた。受験番号を確認して席に着く。
「よーし」
小声で理緒はつぶやいた。
ちゃちゃっと終わらせるか！
□ □ □
ここからは少し未来の話になる。
簡単ながら、合格発表時のキャンパスについて書いておこう。
インターネットでも発表を見ることはできるが、ふたりは直接大学に行って目で確認することを選んだ。
学部ごとに臨時の掲示板が用意されており、貼りだされた白い紙に、ゴシック体の大きな文字で合格者の受験番号があきらかにされている。
今どきは直接発表を見に行く受験生も少数派なのだろう。人手は多くない。おかげで経済学部の合格者発表ボードにはすぐたどりついた。
結果もすぐにわかった。
E11461
まるでそこにあるのが当たり前のように、紗月の受験番号が印刷されていた。
紗月の心は特に動くことがなかった。
試験当日は、流れるようにすらすらと解けてしまったため時間があまって仕方なかったくらいだったのだ。全教科満点に近い結果だったと思う。（実際、首席合格だったと後でわかった）
「やったね紗月っ！」
理緒は自分のことのように喜んでくれたものの、紗月の顔は晴れなかった。
「うん、ありがとう。それより……」
「あたしの結果、だよね」
芸術学部の合格発表ボードは二十メートルほど先だ。
なのに、
「ごめん！」
理緒は動けないと言った。
「紗月……後生だから見てきて！」
あたしの発表、と言ったきり両の拳を握りしめて理緒は足を止めたのだった。こうなったらテコでも動かないだろう。
「……いいの？」
「お願い。勇気が出ないんだ」
気持ちはわかる。
紗月はうなずいた。
「じゃあ、見てくるね」
芸術学部のボードが近づくにつれ視界が揺れ始める。呼吸が荒くなる。自分の番号を探すのとは比較にならない。心臓はもう張り裂けそうだ。
どうか。
どうか。
どうかお願いだから――。
意を決し、ボードの真下に紗月は立つ。
見上げた。理緒の番号を探す。
A12815
A12822
A12831
A12833
A12840……。
「あっ……た……！」
振り向いて約二十メートル先の理緒を見た。
「あった！」
紗月の目から涙があふれていた。駆け出す。
「あったよ、理緒ちゃん！ あった！」
理緒も駆け出している。理緒は早くもしゃくりあげベソをかいているではないか。
衝突するように抱き合うと、ふたりは崩れ落ちるようにしてその場にしゃがみこんでいた。
――『Real Thing Shakes』 了
理緒は芸術学部の写真学科、紗月は経済学部となる。
土臭い廊下を歩いて行くと途中で道がわかれた。チョークで書かれた案内板を見るに、理緒は右手の道をさらに奥までいった教室、紗月のほうはすぐそばの大講堂が受験会場らしい。
分岐点に立ち、結びあった手をほどく。
「理緒ちゃん、ここで一度お別れだね」
「……じゃ、ラスボスやっつけに行くか」
理緒の声が明るい。
大丈夫、紗月は思った。
いまの理緒ちゃんなら、普段の実力を出せる。
試験は午後まで続く。昼休憩で待ち合わせる場所も決めておいた。
理緒と紗月はうなずきあって別れた。
ここから先は、互いに孤独な戦いとなる。誰にも頼れない、自分の力だけの戦いだ。
振り向くまい。紗月は歩き続ける。
私は……私はいつでも理緒ちゃんのそばにいるよ紗月。
だって私のそばには、いつでも理緒ちゃんがいてくれているから。
講堂への階段をのぼっていく。
「ふふ」
自然に笑みが口をついて出た。
ここまで理緒ちゃんのことばかりで、自分の試験、ほとんど心配してなかったな。
振り向くまい。理緒は歩き続ける。
紗月と一緒の大学に行くんだ。この気持ちは絶対に譲らない。
もし試験中パニックになりそうになったら目をつぶろう。
そしたら紗月がそばにいるって、思い出すことができるだろう。
あたしだって、紗月のそばにいるからね。
試験教室のドアは開いていた。受験番号を確認して席に着く。
「よーし」
小声で理緒はつぶやいた。
ちゃちゃっと終わらせるか！
ここからは少し未来の話になる。
簡単ながら、合格発表時のキャンパスについて書いておこう。
インターネットでも発表を見ることはできるが、ふたりは直接大学に行って目で確認することを選んだ。
学部ごとに臨時の掲示板が用意されており、貼りだされた白い紙に、ゴシック体の大きな文字で合格者の受験番号があきらかにされている。
今どきは直接発表を見に行く受験生も少数派なのだろう。人手は多くない。おかげで経済学部の合格者発表ボードにはすぐたどりついた。
結果もすぐにわかった。
E11461
まるでそこにあるのが当たり前のように、紗月の受験番号が印刷されていた。
紗月の心は特に動くことがなかった。
試験当日は、流れるようにすらすらと解けてしまったため時間があまって仕方なかったくらいだったのだ。全教科満点に近い結果だったと思う。（実際、首席合格だったと後でわかった）
「やったね紗月っ！」
理緒は自分のことのように喜んでくれたものの、紗月の顔は晴れなかった。
「うん、ありがとう。それより……」
「あたしの結果、だよね」
芸術学部の合格発表ボードは二十メートルほど先だ。
なのに、
「ごめん！」
理緒は動けないと言った。
「紗月……後生だから見てきて！」
あたしの発表、と言ったきり両の拳を握りしめて理緒は足を止めたのだった。こうなったらテコでも動かないだろう。
「……いいの？」
「お願い。勇気が出ないんだ」
気持ちはわかる。
紗月はうなずいた。
「じゃあ、見てくるね」
芸術学部のボードが近づくにつれ視界が揺れ始める。呼吸が荒くなる。自分の番号を探すのとは比較にならない。心臓はもう張り裂けそうだ。
どうか。
どうか。
どうかお願いだから――。
意を決し、ボードの真下に紗月は立つ。
見上げた。理緒の番号を探す。
A12815
A12822
A12831
A12833
A12840……。
「あっ……た……！」
振り向いて約二十メートル先の理緒を見た。
「あった！」
紗月の目から涙があふれていた。駆け出す。
「あったよ、理緒ちゃん！ あった！」
理緒も駆け出している。理緒は早くもしゃくりあげベソをかいているではないか。
衝突するように抱き合うと、ふたりは崩れ落ちるようにしてその場にしゃがみこんでいた。
――『Real Thing Shakes』 了
あとがき
担当マスター：
桂木京介
ファンレターはマスターページから！
ご参加ありがとうございました！ 桂木京介です。
今回も難産でしたが、それは皆様のアクションのせいではありません、いやむしろ、アクションが素晴らしいからなんとかラストまでたどり着けたというほうが適切でしょう！
途中いささか体調を崩したりもして、あれこれ四苦八苦したもののそれだけの価値はあったと思っています。
いつも書いておりますが、ご意見ご感想お待ち申し上げております！
桂木京介でした！
今回も難産でしたが、それは皆様のアクションのせいではありません、いやむしろ、アクションが素晴らしいからなんとかラストまでたどり着けたというほうが適切でしょう！
途中いささか体調を崩したりもして、あれこれ四苦八苦したもののそれだけの価値はあったと思っています。
いつも書いておりますが、ご意見ご感想お待ち申し上げております！
桂木京介でした！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2020年08月22日
- 参加申し込みの期限
-
- 2020年08月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2020年08月29日 11時00分
