蒼い月の夜｜リアクション

蒼い月の夜

　その日、八神修は自室にて勉強をしていた。
　元々勉強が得意で好きでもある修は集中しながらも、無意識の内に猫や犬をかまっているので自然と勉強中は周囲に何匹か集まる事があった。
　そして、最後の一問が解き終わったところで――

「終わったのにゃ？」

　と、そんな声が聞こえて来た。
　慌てて周囲を見回すが部屋の中には修以外は猫と犬しかいない。

「どうしたのかにゃ？」

　そして、もう一度同じ声が聞こえる。今のは間違いなく出窓にいるパトラから聞こえて来た。

「……パトラ？」
「んにゃ？」

　問われて首を傾げるパトラ。
　どういう事か分からないがどうやらパトラの声が分かるようになったみたいだ。
　そこで自分の頭に違和感がある事に修は気付く。鏡を見てみると何故か猫耳が生えている。このせいでパトラの声が聞こえるようになったのだろうかと考え、ハッとなる修。もしかしたらと気付いたのだ。

「ブラック！」
「んー？」
「やっぱり！」

　そう。声が理解できるようになったのはパトラだけではなかったのだ。

「マジか！　また皆と話せるなんて！」

　修は以前にも飼っている猫と言葉が通じた日を体験しているのだが、まさか再び会話ができるなんてと大興奮である。
　そして、その修の声を聞いて他の猫が何にゃ何にゃと大集合である。

「御飯も良いけどオヤツもくれにゃ」
「遊んでにゃ」
「修様の御膝はあたしのにゃ！」

　と、もうわちゃわちゃも良いところである。
　だがしかし、修は喜んでばかりもいられなかった。何故なら犬達の声は分からずに犬達から期待と落胆の様子が伝わってきたからだ。
　落胆している犬達を慰めるようにギュッとする修。いつか犬語が分かる時がくれば良いのだがと思わずにはいられなかったようだ。

「ん？」

　すると、そこで遠藤健からパソコンに通話がかかってくる。
　出る前に咄嗟に帽子を被ってから対応する。何故ならテレビ通話なのでそのまま出たら猫耳を見られてしまうだから。
　だが、結論から言えばその必要はなかった。何故なら、画面の向こうの健に犬のものらしき耳が生えていたからである。

「遠藤も耳が生えたのか！？」
「え？　あぁ、もしかして八神もか？　何で帽子被ってるんだろうとは思ったけど」
「うん、俺も猫耳が生えてね。遠藤のは……犬にように見えるけど」
「多分犬だろうなぁ」
「という事はもしかしたら犬の声が聞こえるのか？」
「ん、どういう事？」

　修は健に猫耳が生えたら猫の声が聞こえるようになった事を説明し、健の場合は犬の声が聞こえるのではないかと説明をする。

「実は犬達が言葉を通じない事に落ち込んでいてね。それで遠藤が声を聞けるなら通訳して貰えるんじゃないかと思ってね」
「なるほど。それなら今から行こうか？」
「え、でももう夜だぞ！？」
「そこまで遠くってわけじゃないから問題はないさ。犬達と話したいんだろ？」
「そりゃそうだけど……じゃあ明日の用意持っておいでよ」
「分かった。……と、そうだ。それともう一つ」
「ん？」
「この犬耳が生えた時、何か妙な記憶を思い出したんだよ。何かとてつもなくでかいおっぱいに吹き飛ばされるってものなんだけど……八神、何か知らない？」
「とてつもなくでかいおっぱい？　それはまさかあの破壊兵器の事を言っているのか！？」
「知っているのかヤガミン！」
「誰がヤガミンだ」

　猫や犬の耳が生えようともこの二人のやり取りにはあまり影響がないようであった。