蒼い月の夜｜リアクション

蒼い月の夜

「むむむ？」

　エロ・イーアールオーはある日の夜、頭上に浮かんだ蒼い月を不思議そうに見て首を傾げていた。
　あの蒼い月は何なのでしょう？　と、暫く見ていたが突然何だか巨大化したくなってきたのだ。

「巨大化したくなったのですー」

　声色はとてもほんわかしているが、内容は結構物騒である。
　何故、突然巨大化したくなったのか。どうやら何故かエロのろっこんの力が突然際限なく強くなってしまった事が原因のようだ。
　それはあまりにも強くなってしまったろっこんの暴走か、それとも強くなったろっこんがその放出される先を望んだのだろうか。

「ろっこんで大きくなるのですー」

　やはりほんわかした声だが、その声を合図としてエロはどんどんどんどん大きくなっていく。
　ろっこん名は『おっきくなったのですー』。名前から分かるようにエロを巨大化させるろっこんである。

「うわー、頭が雲を突き抜けたのです」

　エロの言う通りに幾つもの雲をエロの頭が貫いて行く。しかし、それでもエロの巨大化は止まる事はない。
　流石にそろそろまずいと思ったのか、エロは何かを踏みつぶさないように注意しながら海へと入っていく。しかし、普通ならばここまでの巨体が海に入れば津波が起りそうだが、何故か不思議な事に津波が起きる気配はない。

「わー、大気圏を突き抜けて宇宙空間に届いたのです」

　そうこうしている内にエロの頭は宇宙空間に届く。暗くしかし幾つものの星が瞬く世界は美しく、それに引き寄せられるようにエロは宇宙へと飛び出した。
　これ程の巨体がそんな事をすれば地球は崩壊してもおかしくはないはずだが、やはり先程と同じように何も起きる事はない。もしかしたら、エロは望まない事は起きないのかもしれない。

「宇宙は無重力でふわふわで気持ちいいのです」

　言葉通りに巨大なエロは宇宙の中をぷかぷかと漂う。まるでお風呂で浮かぶように。
　エロの巨大化は未だに止まる気配はなく、ついには銀河よりも大きくなってしまった。

「銀河は小さくて弱いので、エロは潰さないよう触らないようにするのです」

　銀河が小さくて弱いなんて考える生物はきっといない。今のエロ以外は。
　確かにエロは銀河よりも大きくなった。しかし、変化しているのはもしかしたら身体の大きさだけではないのかもしれない。エロが銀河やそこにある星を見る目はどこか超常的な光が宿っていた。

「ついに宇宙がエロでいっぱいになったのです」

　宇宙空間の星以外の全てがエロで埋め尽くられる。それはつまりこの宇宙空間はエロになったと言ってもいいだろう。
　しかし、それでもエロは止まらない。

「宇宙はあまりにも小さくて弱いので、潰さないよう気をつけるのです。でももっと大きくなるのです。一気に無限倍に大きくなるのです」

　そこから更に無限に大きくなるエロ。それから全てを超越するまで大きくなるのに大した時間はかからなかった。

「ふふふ。全てからの視線が感じられるのです。エロは全てから見られているのです」

　究極の大きさとなったエロからすると、エロ以外の全ては無限に小さな点となった。
　それと同時に宇宙自体がエロとなった事で、全てがエロと同一とも言える。無限に大きなエロと無限に小さな点が同一なのだ。一にして全、全にして一。
　だけど、そうなる前と生命がいる星の環境は変わっていない。唯一の違いは、無限の大きさを持つエロを全ての生命が認識できるようになった事。しかし、何故か誰もそれをおかしな事とは思わなかった。エロでさえも。

「ちょっと色香を放って悩殺してみるのです」

　元々露出が多いミニキャミソールドレスなのだが、そこからスカート部分をたくし上げたり肩紐を一つ程外してみたりしてみるエロ。恐らくきっと多くのDの者が即死した事だろう。

「夜はまだまだ長いので、皆さんエロと遊ぶのです。エロはまだまだ無限に大きくなるのです」

　エロはただ楽しそうにそう呟くのだった。

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