蒼い月の夜｜リアクション

蒼い月の夜

「わぁ……今日のお月様、蒼い」

　自らの上で存在を主張する蒼い月を見て、恵御納夏朝は目をまん丸にして驚く。こんな月は見た事がなかったからだ。
　そう言えば、『その夜の間、変化が訪れる』なんて噂があったような事を思い出す。もしかして、これがそうなのだろうか？

（僕と夏夜ちゃんが分離・共存の願いを叶えられる変化だったら……いや、違う）

　そう。確か噂では変化は永続的なものでなくあくまでも蒼い月が浮かんでいる夜のみの限定的なものだったはずだ。つまり、今夏朝が考えている変化はきっと起らない。
　と、そんな事を考えていると何だか頭の上に違和感を夏朝は感じた。

「……あれ？　頭の上に何か生えてる？」

　手を頭上に伸ばしてみるとそこには本来何も当たらない筈の感触がある。
　触り心地が良くて、くすぐったい。もしかしてこれはケモミミだろうか？　しかし、何故こんなものが一体出てきたのだろうか？　夏朝には分からなかった。

「ケモミミ……どうせだったら猫さん風のお耳だったらいいな」

　触っただけではケモミミという事までは分かっても、何の耳かは判別が付かない。
　何の耳か確認する為に夏朝は鏡で見てみようと歩き出そうとしたところで、塀の上を伝って一匹の猫が歩いて来た。

「あ、猫さんだ。可愛い……」

　ふにゃっと笑うが、しかし、次の瞬間その笑顔は驚きに染まる。

『うにゃあ……寝過ぎてご飯を食べ損ねたにゃあ』
「……って、何か聞こえた！？」

　そう、はっきりと猫の言葉が夏朝に聞こえたのだ。
　一体何故と思ったところで、このケモミミの効果なのかもしれないと推測する。

「という事は、やっぱり猫さんの耳かも！　あぁ、鏡で見てみたいけどでも、猫さんとお話できる機会を逃すわけにもいかない……！」

　それはあまりにも切実な言葉。自分にネコミミが生えているところを見てみたくもあるが、それ以上に猫との会話タイムは貴重という事だ。
　と、夏朝が自問自答をしているとそんな様子を不思議に思ったのか、塀の上にいる猫が話しかけて来た。

『ねぇねぇ』
「え？　あ、どうしたの、猫さん？」
『やっぱり言葉分かるんだ。それならちょっとご飯くれない？』
「あ、そう言えばお腹空いてるんだっけ？　じゃあ、一寸待っててね」

　そう言って夏朝は近くのスーパーに小走りで向かい、猫缶と猫おやつに割り箸と紙のお皿を購入して戻って来た。

「はい、どうぞ」

　猫缶を開封して紙のお皿に出してから猫へと差し出す。すると、猫はお腹が空いていると言う言葉通りにガツガツと食べ始めたのだった。

「おいしい？
『美味いにゃ！』
「なら良かった！」

　そして、猫が食べ終わった後、暫く夏朝と猫は話をしていたが、そろそろ猫が帰ると言う事で別れる事になった。

「ありがとう、猫さん……またねー！」
『うむにゃ』

　塀を伝ってどこかへと消え去っていく猫。それを見届けた夏朝は自分も帰る準備をする……わけがなかった。
　当然だ。何せ夏朝にとって今日と言う日は千載一遇の日。正確には夜だが。
　頭の上にネコミミがある限り、猫と会話する事ができる。用意周到な事に先程の猫にこの辺の人懐っこい猫の情報の事は聞いていた。これならば効率的に話しができる猫を探す事ができるだろう。

「よし、寮に帰るまで猫さん探しだー！」

　そう。夏朝の今日の夜はまだ始まったばかりなのだ。

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あとがき

担当マスター：昂祈
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昂祈です。
蒼い月の夜のリアクションをお届けいたします。

変化というのは人間にとって良い部分と悪い部分があります。
しかし、ここ数十年の歴史だけを見ても、基本的に変化がないという事は有り得ないでしょう。
ただ、それでもあまり急激な変化は起こって欲しくはないなぁと思いながら日々生きていたりします。

さて、今回はここまでという事で。
それでは、この度のシナリオにご参加頂きありがとうございました！

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