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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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朧冬の蜃気楼／a hazy mirage of winter
灰色。
空は灰色だ。
灰色から綿ぼこりのようなものが舞い落ちてくる。雪だと気付くのに少し時間がかかった。
身体中にはしる疼痛と、鋭い冷たさで目が覚めた。
仰向けで雪の上に倒れている。
着衣は乱れていた。ひどいものだ。前をかき合わせてわずかでも冷気を防ごうとする。
傷ついた白鳥のように、朝鳥 さゆるはゆっくりと身を起こした。
何があったのか。
記憶を探る。ばらばらになったパッチワークを縫い直すようにして。
昨夜遅く、さゆるは寝子ヶ浜海岸近くを歩いていた。
背中越し、最初に伝わってきたのはひやりとした触感だった。背後からナイフを突きつけられたのだ。なにか短いやりとりがあったが、意味をなさないものであることはすでにわかっていた。そのまま、ワンボックスカーに連れ込まれた。
あとは記憶が、赤と青と緑の混じった斑（まだら）に塗り潰され断片しか見えない。
身体に残る痛みや傷跡から、自分の身に起きたことは理解できた。最後は雪上に転がされ放置されたのだ。命があっただけでも奇跡というべきかもしれない。それを幸運だったと思うかどうかは別にして。
……忌々しいが、似たような目には何度か遭った。
傷つくことにはもう慣れ切っていた。
今日が何曜日かもわからない。ただ、いつの間にかカレンダーが取り替えられたことだけは知っている。
いい年末年始ではなかった。執拗に付きまとう『あの女』に殺意と恐怖を感じて、ステッラ・デッラ・コリーナへ逃げこんだだけの日々だったから。
されどそこも安全ではなかった。コンクリート壁のひび割れから汚水が浸食してくるように、『あの女』が追ってきたのだ。
『諦めなさい。あなたを手に入れるのは私よ、愛しい子』
彼女が取ったスイートルームは、甘い監獄となり果てた。
それでもさゆるは昨夜、なんとか逃げ出すことができた。コートだけはつかんできたが他は何も持たなかった。惑いながら海岸までたどり着いたところで、待っていたのはまた別の災難だったのだが。
コートのボタンを留めて、ボタンが取れている場所はつかむようにして押さえる。
寒い。
靴は両方とも近くに転がっていた。立ち上がって髪を整えた。
水の流れる音。雪に埋め尽くされ変わり果ててはいるが、ここは河川敷らしい。せめて雪がおさまるまでしのごうと、高架橋に向かってよろめき歩いた。
誰かいる。高架橋の支柱あたりだ。
コート姿の小柄な背中、しゃがみこんでいる。
雪踏む音を聞いたのだろう。怯えた猫のようにふりかえった。
少女だ。コートの合わせ目から中学の制服がのぞいている。少女は青ざめていた。無理もないとさゆるは思う。今の自分はきっと、幽鬼のような顔色をしているだろうから。
少女は両腕を合わせて伸ばし、さゆるに向けた。
何か握っている。
「私に近づくなッ！！」
空は灰色だ。
灰色から綿ぼこりのようなものが舞い落ちてくる。雪だと気付くのに少し時間がかかった。
身体中にはしる疼痛と、鋭い冷たさで目が覚めた。
仰向けで雪の上に倒れている。
着衣は乱れていた。ひどいものだ。前をかき合わせてわずかでも冷気を防ごうとする。
傷ついた白鳥のように、朝鳥 さゆるはゆっくりと身を起こした。
何があったのか。
記憶を探る。ばらばらになったパッチワークを縫い直すようにして。
昨夜遅く、さゆるは寝子ヶ浜海岸近くを歩いていた。
背中越し、最初に伝わってきたのはひやりとした触感だった。背後からナイフを突きつけられたのだ。なにか短いやりとりがあったが、意味をなさないものであることはすでにわかっていた。そのまま、ワンボックスカーに連れ込まれた。
あとは記憶が、赤と青と緑の混じった斑（まだら）に塗り潰され断片しか見えない。
身体に残る痛みや傷跡から、自分の身に起きたことは理解できた。最後は雪上に転がされ放置されたのだ。命があっただけでも奇跡というべきかもしれない。それを幸運だったと思うかどうかは別にして。
……忌々しいが、似たような目には何度か遭った。
傷つくことにはもう慣れ切っていた。
今日が何曜日かもわからない。ただ、いつの間にかカレンダーが取り替えられたことだけは知っている。
いい年末年始ではなかった。執拗に付きまとう『あの女』に殺意と恐怖を感じて、ステッラ・デッラ・コリーナへ逃げこんだだけの日々だったから。
されどそこも安全ではなかった。コンクリート壁のひび割れから汚水が浸食してくるように、『あの女』が追ってきたのだ。
『諦めなさい。あなたを手に入れるのは私よ、愛しい子』
彼女が取ったスイートルームは、甘い監獄となり果てた。
それでもさゆるは昨夜、なんとか逃げ出すことができた。コートだけはつかんできたが他は何も持たなかった。惑いながら海岸までたどり着いたところで、待っていたのはまた別の災難だったのだが。
コートのボタンを留めて、ボタンが取れている場所はつかむようにして押さえる。
寒い。
靴は両方とも近くに転がっていた。立ち上がって髪を整えた。
水の流れる音。雪に埋め尽くされ変わり果ててはいるが、ここは河川敷らしい。せめて雪がおさまるまでしのごうと、高架橋に向かってよろめき歩いた。
誰かいる。高架橋の支柱あたりだ。
コート姿の小柄な背中、しゃがみこんでいる。
雪踏む音を聞いたのだろう。怯えた猫のようにふりかえった。
少女だ。コートの合わせ目から中学の制服がのぞいている。少女は青ざめていた。無理もないとさゆるは思う。今の自分はきっと、幽鬼のような顔色をしているだろうから。
少女は両腕を合わせて伸ばし、さゆるに向けた。
何か握っている。
「私に近づくなッ！！」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年07月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年07月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年07月29日 11時00分
