古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

　吹くからに　秋の草木の　しをるれば
　むべ山風を　あらしと言ふらむ

　続いて読まれたのは、素早い反応が命の「一字決まり」の歌。
「俺に任せろ！」
　桐野正也が、陸上部の足を生かして走り出す。高梨煉は、今度はサポートに回り、ライバルたちの前に立ちふさがって正也の進路を確保する。
「行かせねぇぜ！」
　そして、志波武道も盾を構えて立ちはだかる。
「ここから先は行かせないぞ！」
　重たい鉄の鎧がまとう迫力に、周りも思わずたじろぐ。冷静に考えれば、迂回していけばいいのだが。その隙に、正也が目標の札を駆け抜ける。とっさの数秒の間に巧みなチームワークを見せる「万国騎士」たちに、会場がどよめいた。

「読み手は、大役……。冬樹闇……頑張る……」
　マイクの前に座って歌を読み上げる冬樹闇。普段通りのポーカーフェイスだが、心なしか大イベントに高揚しているように見える。
　
　秋の田の　かりほの庵の　苫をあらみ
　わが衣手は　つゆにぬれつつ

　優しくやんわりした、独特の調子の声。お昼の放送で、全校生徒が聞きなれている声がスピーカーから響く。中性的でスローテンポな口調は、百人一首かるたの読み上げには合っている。ただし、スローで安心感を与えるあまり、ちょっと眠気を誘うこともあったり、なかったり――
（みんなが聞き入ってくれる……とても、楽しい……）

　かくとだに　えやは伊吹の　さしも草
　さしも知らじな　もゆる思ひを

「ほっほっほ。助さん格さん、やっておしまいなさい」
　雨宮草太郎校長の水戸黄門が命じると、佐藤英二の格さんと野々ののこの助さんはすかさず駆け出す。
「えーと、あれは真ん中らへんにあったはず」
　英二は、試合前に札の中身と配置をできるだけ記憶しておいた。
「野々さん、こっちだよ！」
　英二が案内し、それにののこがついていく。なんだか今日は、いつもより記憶力がさえているような気もする。
「これだ！」
　いち早く動いたおかげで、札を確保できた。助さんになりきっているののこも、子供のように喜んだ。
「やりましたね、格さん！」
　意識している相手に褒められ、英二は少し頬を赤らめた。
「あれ……」
「どうかしましたか？」
　さっき野々さんが横を通りすぎたような気がする。でも、彼女は目の前にいるぞ……？
「いや、気のせいか。何でもないよ」
　英二は笑ってごまかすと、気分を次に切り替えた。実際は、神魂の気まぐれで分身した人がいるようだ。幸いみんな仮装しているので、だれも気付いていない――