古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

　そうこうしているうちに、最初の歌が読み上げられる。

　風そよぐ　奈良の小川の　夕暮れは
　みそぎぞ夏の　しるしなりける

　放送を聞き、選手たちが一斉にグラウンドに駆け込んでいく――
「うおおお――重いっ……！」

　中世ヨーロッパ風のプレートアーマーは、否応なく注目を集める。中に入っているのは志波武道である。本格仕様のため、とにかく重い。誰か実在する中世の騎士になりきろう……と思っていたが、もはやそんな余裕はない。
「俺は動きやすい恰好でよかったよ」
　ローマ帝国の兵士になりきっている高梨煉は、さっそうとマントを翻した。胴体は鎧で守られているが、腕や足はむき出しだ。
「煉は逆に寒くないのか？」
　桐野正也が聞くと、煉は笑って答える。
「この時期だし心配だったけどな。映画村のスタッフさんが寒さ対策してくれたおかげで、何とかなってるよ。正也の騎士姿もなかなか様になってるな」
「ありがとよ」
　正也の服装は、頭にターバンを巻いたトルコ式の軍装だ。袖も裾も長くゆったりしているが、金属が少ない分ほかの二人より動きやすい。
「武道がヨーロッパ、煉がローマと来たから、やっぱりオスマン帝国だろって思ってな。アラジンみたいで意外と恰好いいだろ。しかし……」
　二人は、他の選手たちから明らかに出遅れている武道の方を振り返る。
「武道……動ける以前に、ちゃんと前は見えてるか？」
「お前はなぜ全力を出したんだ、武道」
「お、おう……」
　大きなハンデを背負った武道は、作戦を考える。
「この鎧だと動き回るのは厳しいな。さっきの札も取られちゃったし。動くのは二人に任せる！」
　武道は煉と正也を呼び、ひそひそと打ち合わせを始めた。そして、顔を覆っているバイザーを開く。動きづらい分、札をしっかり目で確認してカバーするのだ。

　誰をかも　知る人にせむ　高砂の
　まつも昔の　友ならなくに

（さっきあったぞ……！）
　自分のいる場所からはちょっと遠い。煉か正也に知らせないと。でも。声を出すと敵にばれるから――
　武道は大きな盾を使い、他の選手に見えないように札のあった方向を指さした。
「OK！　あっちだな」
　機動力にまさる煉と正也が目的の札に向かう。煉の鎧が派手な金属音を立てた。
「俺のはいいが、煉や武道のはカチャカチャうるさいなぁ」
　正也は走りながら苦笑した。
　
　読まれた札はグラウンドの端のほうにあり、他の選手たちもすでに駆け出している。
「頼んだ！」
「おう！」
　足に自信のある正也は、他の選手の進路をさりげなくふさぎ、時間を稼ぐ。そして一か八か、札めがけてスライディングする煉。
……目を開けて上体を起こすと、その両手はしっかりと巨大な特製札を確保していた。
「やったぞ！」
チーム「万国騎士」は見事な連携で一枚をもぎ取った。三人はハイタッチを交わす。