古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

まだお正月気分が抜けない、一月のある日。
寝子島高校は、恒例のかるた大会の準備で朝から大忙しだ。

「大丈夫かなぁ…？」
　童話の白雪姫のドレスを身にまとい、開会を待っているのは佐和崎紗月だ。高3の受験が間近なのに、知らないうちにエントリーされていたのだ。
　彼女が心配しているのは、自分のことではない。
「理緒ちゃん、受験間際でピリピリしてるのに。どうしよう」
　恋人の初瀬川理緒のことだ。去年のクリスマス、二人でまたたび動物園を訪れたときも、受験のプレッシャーで潰されそうになっていた。心優しい紗月は、相手の内面を強く思いやりすぎてしまう。それも大切な人のことなので、どうしても落ち着かなくなる。
「お待たせー！」
　そこに、着替えを済ませた理緒がやってきた。チームメイトの串田美弥子も一緒だ。理緒は人魚姫、美弥子は眠り姫の衣装を着ている。理緒と顔見知りの、寝子島映画村のスタッフが選んでくれたコスチュームだ。チーム名は「姫君の茶話会」、三人とも童話のお姫様になりきっている。
「いやー、この時期にバンドゥビキニですよ？　上半身だけとはいえ……。寒いったらありゃしない」
　大胆な衣装にも物怖じしないのは、さすが現役のグラビアアイドルだ。
「理緒ちゃん、意外と平気みたいね」
「うん。だって、ここまで来たら一日くらい休んでも、どうってことないでしょ？」
　理緒は開き直っているのか、逆に堂々としている。その自信は別にやけくそではなく、ちゃんと根拠もあるようだ。
「なんたって、あたしは偏差値30から60に爆上げさせたんだから。やればできる子なのよ！」
　少し前までは大の勉強嫌いで、成績も壊滅的だったのに……。紗月は、理緒の様子を見て安心したようだった。
「私も、受験のプレッシャーが少し軽くなった気がするわ」

　少し時間をさかのぼって、大会前日の映画村――
「スタッフさーん！　これぞ『レキシの騎士！』ってチョイスお願いします！」
　志波武道は、衣装探しに張り切っている。桐野正也、高梨煉といういつもの仲良しメンバーを誘って、かるた大会に出場することにしたのだ。歴史関係の衣装が必要とのことで、「騎士にしよーぜ！」とだけ決めて映画村に衣装を借りに来た。
「実在の人になりきっても面白いよなー」
　と、武道は歴史コスプレを楽しみにしている。
「こちらはいかがですか？　時代考証済みの本格仕様ですよ」
　スタッフが指さした衣装は――
「武道……それちゃんと動けるか？」
「だ、だいじょーぶ……おそらく」
　心配する正也に、武道はちょっとひきつりながら答える。
「なりきりする余裕はないかも……」
　その横で、煉は別のスタッフと一緒に自分の気に入る衣装を探している。
「これなら軽くていいかも。でも寒いかな」
「防寒対策はできますよー」
「そうなの？　これにしようかな」
　正也も、よさそうな恰好を考える。
「ブドーと煉が決めたのか。俺はどうしよう……。武士は他の人とかぶっちゃうよな。それなら……！」
　果たして、三人はどんな衣装を選ぶのか――

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