古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

「われらは誇り高き寝子島水軍である！」
男性の海賊に扮した大橋尚先生が口上を述べる。両脇を固めるのは、森篠琳子と野々ののこ演じる女海賊だ。胸にさらしを巻き、動きやすい軽量の鎧をつけた凛々しいいでたちである。スタイルのいい琳子と小柄なののこは、似たような仮装でも与える印象は対照的だ。

「どういう作戦でいこうかしら。畳サイズの札は少し厄介ね」
　琳子は広大なグラウンドを見渡す。自分たちの近くにある札を覚え、堅実に回収しに行くのがよさそうだ。

　夕されば　門田のいなば　おとずれて
　葦のまろやに　秋風ぞ吹く

　見覚えのある歌が詠まれて、琳子は反応した。軽快に身を翻し、畳サイズの札に覆いかぶさるように確保する。ほかのチームに比べて動きやすい衣装なのが幸いした。大橋先生も知識を生かしていい動きをしている。
　次に読まれるのは――琳子たちが耳をそば立てて放送を待つ。

　わたの原　八十島かけて　漕ぎ出でぬと
　人には告げよ　あまの釣舟

「これだー！」
　ののこが札に駆け寄って一枚確保……のはずだったが。
「ののこさん、それは違うわ」
　琳子に指摘され、ののこは札をよく見る。

「うーむ、野々選手、痛恨のお手付きがでましたね～」
　エキシビションマッチのあと、試合の実況をしている大田原いいなは、解説役の八重崎五郎八に水を向けた。
「ののこさんが取ってしまったのは『わたの原　漕ぎ出でて見れば　久方の　雲居にまがふ　沖つ白波』という歌。間違いやすい札の一つですね……」
「チーム寝子島水軍、今まで取った札から一枚没収！」

「ごめん、二人とも……」
「いいのよ。次に挽回すればいいわ」
　琳子はののこに向かってほほ笑んだ。今は勝負というより、楽しむことを優先したい。それにののこには悪いが、彼女がドジを踏むのは予想できたことだし――