FINYALFANTASY7 RE Ep.1「骨太の少女」｜リアクション

FINYALFANTASY7 RE Ep.1「骨太の少女」

　微かにお日様の光が差し込む廃教会は、いつにない緊張感に満ちていた。
「もう一度確認するよ、と。お嬢さんは素直に僕についてきてくれるつもりはないんだね？」
　神猫（しんにゃ）カンパニーの調査部（通称、ニャークス）の一人――シュンスケが軽い口調で問いかけたのは、筋骨隆々の花売りの少女（？）――フジコだった。
「ええ。微塵もないわ」
　キリッとした表情で、フジコは小指を立てながら答えた。
　そこで、フジコのボディーガードを引き受けた（引き受けされた？）「なんでも屋」のタケミチ（志波武道）は彼女をかばうように一歩前に出た。
「えーっと、そういうわけで、本人も嫌がってるみたいだし、大人しく帰ってくれないカナーなんて？」
　できる限りなごやかに語りかけるが、対する神猫の人間達の目は冷たい。
「なんでいなんでい、天下の神猫カンパニーの誘いを断るたぁいい度胸じゃねぇか！」
　と、そこで声を荒らげたのは、シュンスケと同じくニャークスの一員であるゲンゾウ（魚塚源三）だった。
　182cmの長身と100kg近い巨体から響かせた声は迫力がある。
（わー、この声で怒鳴られたら怖いですよねー）
　同じくニャークスのセイヤ（高瀬誠也）は、同僚の背中を恐ろしさ半分、頼もしさ半分という気持ちで見守りながら、自分も仕事をすることにした。
「フジコ・マッスルアームさん。我々はあなたを丁重に本社にお連れするように言われています。決して手荒な真似はいたしません。どうかご同行願えませんか？」
　ゲンゾウとは対照的に丁寧な口調でフジコに同行を求める。
「ふふ。今年の新入社員は仕事熱心で何よりだぞ、と」
　シュンスケはそんな二人の部下を少し誇らしげに眺めながら言った。
　事実、ゲンゾウとセイヤは、忠実に自分達の仕事をこなしていた。
　だが、
「ふふ。神猫がどれだけ偉いか知らないけれど、レディーに大声で怒鳴りつける社員のいる会社の言うことなんて信用できないわね」
　フジコもまた頑なだった。それにしてもゲンゾウの大声を前にまったく動じていないのは大した胆力の少女（？）である。
（これ、ボディガードの必要あるのかなー？）
　心の中で疑問符を浮かべつつ、タケミチは逃げるチャンスをうかがっていた。
　と、そのとき。
　ドシン！
　と、天井から何かが落ちてきた。
　一同の視線が音のした方に集まる。
「……痛ててて、ドジったな」
　そこにいたのは、「なんでもや」で生計を立てる少年――カタナ（御剣刀）だった。
　どうやら何らかの仕事をしている最中に、偶然ここに落ちてきたらしい。
「おやおや、と。きみもボディーガードを引き受けた命知らずの「なんでもや」の仲間かな？」
　シュンスケの問いに、「ん？」と尻を叩きながら立ち上がったカタナはふとそこに先輩のタケミチがいることに気づく。
「あれ、シバ先輩じゃないですか。ボディーガードって女の人ですか。先輩も隅に――」
　と、そこでカタナの言葉が止まった。
　タケミチの隣に立っていたのが、どう考えてもタケミチよりもゴツい少女（？）だったからだ。
「――相変わらず困っている人を放っておけないお人よしですね」
　苦笑しながら、一瞬でだいたい状況を察したカタナは、タケミチに目で合図を送った。
　タケミチはカタナの合図にうなずくと、フジコの腕を掴んで駆け出した。
「フジコさん、今のうちに！」
「あら、強引ね」
　うふ、と笑うフジコはちょっと怖かったが、そんなことは言っていられない。
「あ、こら！　待ちやがれ……！」
　足音に気づいたゲンゾウが二人を追おうと走りだす。
「おっと、お前らの相手はこっちだ」
　カタナはアビリティの「かそく」を発動し、目にも止まらぬ速さでゲンゾウの前に立ちはだかる。
　その動きに、ざわ……と神猫の兵士達がどよめく。
　そんななかで、
「へえ……」
　ただ一人、シュンスケだけが、何かを納得したような表情で現れたもう一人の「なんでも屋」の姿を見つめていた。

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