【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！｜リアクション

【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！

●桜台墓地の決闘

　冬の墓地は静寂。
　寒風と枯木の景色の中に、二人の男が対峙している。
　相対しているのは御剣刀と、武士風の袴姿で髪を結い上げた「シ」の精ブラッド。
　ブラッドもほかの兄弟同様１０センチほどのサイズであったが、「普段から磨いている己の武芸をぶつけたい」と刀が彼と同じサイズになることを望んだ際に、人間を小さくするより妖精である自分が大きくなる方が早いと人と同じ大きさまで変化してくれたのだ。
「あんただって飾るために磨いているわけじゃないだろう？」
　彼も武士なら磨いた技を使う機会をいつだって待ち望んでいるはずだという刀の想像通りだった。
「無論」
　冬空の下、張り詰めた空気。
　呼吸、視線、じり、と間合いを図る肩やつま先の動きを互いに読み合う。
　空。
　互いの刃の交わる前に、その練度がわかる。

（武芸者はこういった立ち合いとその結果のために日々技を磨くんだ。そして立ち合いの結果己が終わっても後悔の無いよう日々風情を楽しむ。我が身一振りの刀なれば、それはただ斬るために。――願おうこの場はそれを十全に発揮するものだと）
　
　動。
　互いに鞘に納めた抜刀の構えから、一閃。
　刀は弓で矢を放つよう刃を放つ。
　ブラッドも速い。
　だが。

「――参り申した」

　先に届いた刃の切っ先は、ブラッドの眉間で寸止めされていた。

「いい立ち合いだった、また機会があれば頼む」
　刀が刃引き刀を鞘に納めると、ブラッドも一礼し、元のサイズへ戻った。
「こちらこそ礼を言う。よき武者と出逢えて心が震えた。……行こうか、兄の元へ」