【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！｜リアクション

【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！

●エピローグ

　音の精たちと捜索に当たった者たちは、改めて寝子島神社の境内に集まっていた。
　八人揃った音の精たちを見回して、恵御納夏朝は胸を撫でおろす。

「皆無事だし、どうにも出ない音はもうない……本当に、良かった」

「助かったぜお前たち。ののこもまた鼻歌を歌えてご機嫌なようだぜ」

「天界のうっかり天使さんのことはきちっと叱っておいてもらいますから」

「もうこんなことがないように頼みてぇものだぜ。さて……」
　征一郎は一曲奏でようとヴァイオリンを構える。
「征一郎のヴァイオリンはな、本当に凄いんだ」
　六花がコンラッドにまた耳打ちする。
「技術だけの話じゃなくて……いや、技術も凄いんだが……突然氷に触れた時、何故か咄嗟に熱いと感じることはないか？　触れるのは怖いけど、冷たいのか熱いのかを確かめたくなる……そんな感じ」
「それはまた、魅惑的ですね」
「そ。狂想的な演奏に一度惹かれて触れたら、もう離れることなんて出来ない。……でも、最近は、その音色が変わってきたんだ。こう……」
　六花は目を閉じ胸元で祈るように手を組んで言葉を探る。
「心の中にあたたかいものが積もっていくような仄かな灯火があるんだ。そんな所も、お前さんの光の軌跡に似ているかもしれない」
（また聞こえてるんだがな）
　征一郎は、ふ、と小さく笑う。
（六花、お前のピアノの調べに籠る感情は上品で優しいお前だから出せる音だと思うぜ）
　呼吸を整え、ドレミファソラシドと弾き試す。
　すべての音階が出た、その当たり前のことに、音の精探しに尽力した皆から自然と拍手が起こる。
　征一郎はヴァイオリンを奏でる。曲はクライスラーの「愛の喜び」だ。
　音楽が戻った喜びを征一郎は静かに噛みしめる。
　寝子島に来てから、本当に様々な経験をした。
　完璧を目指して研鑽しその高みの先の先に広がる景色を見たいと思った。

（やはり自分と音楽は切り離せねぇ）

　変わった、といえばそうなのだろう。
　演奏しながら六花を見る。彼だけでなく、友たちの顔が次々に浮かんでくる。
　こんなふうに憎めない面々を思い出すことは、前はなかったのだから――。

「解決して何よりだね」
　寝子島神社の屋根の上。
　ヴァイオリンの調べを聞きながらサキリ・デイジーカッターはそっと紅茶を傾ける。
　やはり、音楽はいいものだ。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきました笈地です。

祝！８周年記念ということで！！
イエローだけどイラスト入りな記念シナリオをお送りいたしました。
音の八兄弟も、きっと寝子島が大好きになって帰って行ったと思います。

これからもどうぞどうぞ、らっかみ！をよしなに……。

ではまた別のシナリオでお会いしましょう。笈地でした！

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