【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！｜リアクション

【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！

●かっとばせスタジアム

＼かっとばせー！　キ・リ・コ！　キセキを起こせーよ！！／

　声援を受け、古尾桐子がバッターボックスに入る。

　ここは五男「ソ」の精・グレアムが潜んでいるという寝子電スタジアム。
　マイクパフォーマンスで声援を送っているのは志波武道だ。
　グレアムはスポーツに興味があるということで、天の岩戸ではないが賑やかに野球をしたら出て来てくれるのではないかと回りにいる人を巻き込みまくって人数を揃えた武道。名前もあまり確認していないけれどノリノリなチームメイトたちと即席野球チームの結成だ。
　その中には、多忙な主任プログラマーの高瀬誠也の姿もあった。
「妙にアッかるい高校生に掴まってしまいましたね……」
　仕事での戦闘服であるＹシャツの上からユニフォームを被り、グローブも借り物で自信などまったくないのだが、ピッチャーに抜擢されてしまった。

「ま、こうなったら本気を出させてもらいましょうか」

　幼いころからの日課は筋トレとジョギング。ＩＴ系だからってモヤシなわけじゃない。
　桐子はくいくい、と人差し指を折ってそんな誠也を挑発する。

「こう見えてもウチはちびっこ草野球のチームで応援を頑張った事があるッス！」

「なるほど……ほとんどベンチですか……」
「ベンチっていったらダメッス！　秘密へーキッス！　ってわけでいっぱつホームランかっとばしてみせるッス！　へいへい！　ピッチャーびびって……」

　誠也は最後まで挑発を聞かずに投げた。
　――ひゅっ！！
　ちびっこ草野球チームの球とはけた違いの急速に、桐子は身動き一つできない。

＼ストラーイク！！／

「……うひゃー！　はえーッス！　子供相手に大人げねーッス！」
「子どもだからと手加減する方が失礼でしょう。敬意を表しているのです……よ、と！」

＼ストラーイク、ツー！！／

「ハァハァ……大声出したら喉渇いたんでタイムッス！　こういう時はコーヒー牛乳を飲んで仕切り直しッス！」

　ごきゅっごきゅっ！

「よーし！　補給完了！　コーヒー牛乳パワーで球がよく見えるハズ……ッッッ！！」

＼ストラーイク、スリー！！　バッターアウト！！／

「くッ……コーヒー牛乳一本じゃ足りなかったッスか……」
「残念だけど足りなかったのは実力のほうじゃないかと……」
　やれやれ、とキャップを被りなおし、誠也は次なるバッターを迎える。
　軽快な登板ＢＧＭとともにバッターボックスに立ったのは、武道だ。

＼バッター、俺！　背番号、48！／

　びしりとバットの先をピッチャーへ向け、不敵なホームラン予告ポーズ。
「さぁかもーん！　俺の運動神経は水フィールド限定じゃない所を見せちゃうぞ！」
「こちらも全力で行きますよ。グレアムには出て来てほしいですがわざと負けるのも癪ですし……ね！」
　小学生女子には通用したが、現役運動部な高校生に通用するか。
　予告通り手加減なしで投げた誠也の初球。
　武道のバットが芯を捉えた！

＼おおお！！　大きい、大きい！！　ホーーーーームランン！！！／

　チームメイトの歓声が上がる中、手を振りながら武道はゆっくりとダイヤモンドを一周する。
　その武道に並ぶように、ソの精グレアムがふわふわと姿を現した。
「やるなあんた！　久々に昂ったぜ！」
「グーレアームさーん！　スポーツが好きで、スポーツマンシップを備えているなら得意種目違えど仲間だぜぃ！　野球やろうZE☆」
「おう！！」

　よしきた、とホームベースに戻った武道は全力アナウンス！

＼バッターの交代をお知らせします／
＼代打、グレアム、背番号、５番／

　グレアムは人サイズに変身し、ユニフォームを着てバッターボックスに立った。
「カットバセーうぇーい！」
「パフパフパフ～♪　ホームラン狙うッス！」
「ええと……グレアムが出てきたのですから、ここで試合終了にして寝子島神社に向かう方がいいように思うのですが……？」
「ままま！　せっかくグレアムもやる気だし最後まで試合しよーＺＥ☆　連絡はしとくからさ」

　こうして楽しい試合はまだまだ続いた！
　余談であるが試合は９回裏、グレアムが逆転ホームランをかっ飛ばし、盛況のうちに幕を閉じたという。