【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！｜リアクション

【８周年記念】ドレミファソラシド、８つの音の精を探せ！

●星ヶ丘マリーナは花ざかり・２

　夢宮瑠奈は海岸線がきれいに見える海辺に座り、海の方から来る潮風を浴びていた。
「どうかしたのかい、お嬢さん？」
　背後から囁くような声がして振り返る。
「小さなうたをうたおうと思ったの。でも、うたっていうものがこの世界からなくなっちゃったみたいでうたえなくて……ええと、あなた、エリック？」
　声を掛けてきたのが探していた「ミ」の精だと気づいて瑠奈は尋ねる。
「そうだよ。オレも結構知られてるな。君の横顔があんまり素敵で飛んできたんだ」
「そうなんだね」
　瑠奈はエリックを捕まえたりはしなかった。
　一緒に来てくれるまで、そばにいる。
　そんな気持ちだった。

「うたいたいな。私はまだ羽ばたいていけるはず。いつかきっと、この空の向こうまで」

　エリックは少し考えこんだ様子だった。
「うたいたいのか……」
「うたいたい。エリックさんとも一緒に」
　瑠奈はそっとエリックに向かって手を伸ばす。
「どっちでもいいよ。あたしは手を伸ばすけれど、手を取ってくれるかはあなた次第」
　エリックはレディの誘いに弱かった。瑠奈のような純粋で媚びない女の子の手をはねのけるなど、エリックに出来ようはずもなかった。
「君はオレの心を掴んでしまったようだ。それに……彼女たちとももう少し一緒にいたいしね」

　おーい、とカフェ組の四人がやってくる。
　先頭の月が、日傘をくるりと回して言った。
「よかった。ここにいたのか。戻ってこないから会計を済ませて出て来てしまったよ」
『エリックさん。ばらばらになった音の精の兄弟さんたち、寝子島神社にあつまるんだって。フレディさんはもうむかってるみたい。行こう？』
　知り合いから連絡が回ってきた海が伝えると、エリックはわかったと承諾した。
「では私の肩に乗っていくといい。お陰でよいアイデアも浮かんだしね」
　月の申し出をエリックはありがたく受けた。
「ありがとう、君の好意に甘えて肩に失礼させてもらうよ。行こうか、お嬢さんたち」

　どうやらこの場は一件落着。真瞭と理紗子は互いに顔を見合わせる。
「はぁ、これで肩の荷が下りたわ。りさちんがいなかったら叩きつぶしてたかも……」
「おつかれさま、まーちゃん。これで音楽が戻るといいね」