【ネコミケ冬】ファビュラス！　あつまれネコミケ☆｜リアクション

【ネコミケ冬】ファビュラス！　あつまれネコミケ☆

☆企業ブースよりサークル参加

　工藤来夢は、週刊少年ニャンプで連載中の漫画家です。
「ネコミケ……それは漫画を描くものにとっては避けて通れない合戦の場！　この場所ではプロもアマもある意味等しく扱われる……ふっふっふ、あたしの作品がどこまで評価されるか楽しみね！」
「いたいた、工藤先生！」
　ニャンプの編集者が声をかけてきました。
「ん？　編集さん何か用？」
「先生、お願いしますよ……ファンが待ってます」
「企業ブースのサイン会に参加してくれ？　だが断るわ！」
「そんなあ」
「ファンサービスも大事なのはわかるけど、あたしはネームバリューにとらわれない作品の評価が聞きたいのよ！　そのためにいつもと違うペンネームで漫画をかきあげてきたんだからね！」
　来夢は決してファンサービスをなおざりにしているわけではありません。
　むしろ頼まれなくてもサインにイラストをつけたりしますが、たまにイラストに凝りすぎてなかなかサインを渡さない事もあります。
　つまり自分の作品に対して妥協したくないタイプなのです。
「そうですか……」
　来夢の作品に対してのプライドの高さを知っている編集者は、説得を諦めてすごすごと立ち去りました。

　身体を壊さずランキング落ちの恐怖にも負けず、週刊連載を続けることがどれだけ大変なことか、多くの人には想像もつかないでしょう。
　その忙しい合間を縫って、それでも来夢は描きたかったのです。
　当然アシスタントとともトラブりましたが、それは今に始まったことではありません。
　アシに限らず人との意思疎通が苦手な来夢は、なかなか優秀なアシスタントがいつかないのが悩みの種でしたが、本人は何が悪いのか自覚していないのです。
　それでも今回はアシスタントが折れて、ネコミケ用の原稿も手伝ってくれました。

「さあ！　今回のテーマファビュラスに合わせて書き上げた新作同人が読者にどこまで評価されるか、勝負よ！」
　栄養ドリンクを飲みながら、来夢は気勢を上げました。
　お客が入場してくると、すぐに来夢の本を手に取りました。
「うまいなあ、ニャンプの漫画の絵にそっくりだ」
（そりゃあ本人ですからね！）
　との思いは声に出さず、来夢はドヤ顔で言います。
「ありがとう、よかったら買っていって」　
「どうしようかな……それじゃ、１冊ください」
　お金を受け取ると、次の客に顔をまじまじと見られました。
「もしかしてニャンプの工藤先生じゃないですか？」
「……名前はここに書いてあるわよ」
　いつもと違うペンネームが書かれた同人誌を見せますが。
「え、だって絵そっくりじゃないですか？　ほんとに本人じゃないの？」
「違うってば。それより読んで感想を聞かせてよ」
　そのやりとりで、たちまち人が集まってきました。
（変装もしてくるべきだったわね）
　ネームバリューにとらわれない評価、というのはなかなか難しいということがわかりましたが。
「今までと違った感じで、こういうのもいいですね！　サインもらえませんか？」
　結果として本はたくさん売れ、連載作品も含めて好意的な感想を生で聞くことができたのでした。