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ねこ温泉郷の大冒険
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ふわり、頬を温かな湯気が撫でた。
涼やかな花の香さえ含む湯煙を上げているのは、洞窟の奥に存在する源泉。ゆらりゆらりと立ち昇る湯気を虹色に輝かせているのは、崩落した天井からの陽光。
よく似た場所を、遊琳は知っていた。
「セノーテ?」
石灰岩地帯の陥没穴に地下水等がつくる、蒼く美しい泉の名称を小さく口にする。そうしながら思い出すのは自らの心象風景。瞼を閉じて内側に吸い込まれた先の景色──
青く蒼い、世界の底。
けれど胸の内にあるあの場所に降る光は手の届くことのない月の光で、こちらに降り注ぐ光は温かなおひさまの光。
誘われるように泉のふちに膝をつく。気遣うように傍らから見上げてくる夜色の子猫の頬を優しく撫でて、指先を泉に触れさせた、その瞬間。
金色の光がふわり、舞い散った。
「光が、……」
そうして遊琳は束の間の幻を見る。叶えてはならないと信じた願いの果ての幻を。取ってはならないと己を律した『ナニカ』を己のものとする、蜜の如き毒の如き幻を。
唇を固く閉ざす遊琳の隣では、ゼロと子猫たちが揃いに揃って小さな両手を泉に浸して、みんなの夢である『みんなで温泉王になる』幻を見る。
お揃いの王さまのマントに王錫を掲げ、ゼロと子猫たちは『猫又さんの寝床』たる泉の上でくるくる踊る。
「ここは温泉王の力を発揮する時なのですー」
温泉王なみんなで願えば、猫じゃらしの草原にも雪の竹林にも新たな温泉がぶくぶくと湧き出す。しかもそれは、一度入ればにゃんこになったり人間になったりできる不思議の温泉。
「ねこ温泉郷の新しい名物なのですー」
大はしゃぎなゼロのそのまた隣では、たくさんの猫たちと猫じゃらしで遊んだり肉球に触らせてもらったり、草原で駆け回って転がり回ったり、心行くまでめいっぱい猫たちと遊ぶ幻をクレオが見ていたり、桜が現実世界でも温泉に入って『フツウ』に疲れた心を癒す自分の姿を見ていたり。
智瑜が見るのは、泉からぽこぽこと現れる美味しそうな温泉まんじゅう。温泉水を利用して炊き上げた優しい甘さの餡子をしっとりとした生地で包んで蒸しあげた、世にも美味しそうなお饅頭。
(あっ!)
幻だと気づいて、智瑜はぱちりと瞬いた。指先に温泉のぬくもりと金色の光を宿らせて、くすくすと笑う。温泉まんじゅうがあったらお土産に買って帰りたいと思っていたから、こんな幻を見たのだ。
(忘れないうちに買っておかなくちゃ)
幻の最中にあったり、幻から覚めて楽しそうに笑ったりする『旅の仲間』をひと眺めして後、高久は膝をついた足元に持ってきた風呂敷包みを置く。手を伸ばし、温かな泉の水面に触れて、
「お久しぶりです、先生」
ひとときの幻と知っていて、水面に現れた初老の男に笑いかける。風呂敷包みから取り出した酒とつまみを掲げてみせる。
「一杯どうだろろうか?」
欲しいものは、今の自分に対する彼からの──高校時代の恩師からの、褒め言葉。
縁なし眼鏡の奥の目の端に生きていた頃と同じように笑い皺を刻む先生を仰ぎ、高久はほんの一瞬、泣き笑いの表情を見せる。
「俺もまだまだかな、先生」
隣に先生が並んで座る。背中に大きな掌が触れた気がした。
──よくやっているよ、志波
そう言って笑う声を、聞いた気がした。
「……夏夜、ちゃん」
夏朝が見たのは、傍らに立って微笑む夏夜。
自分の身体の内にあって自分とは別の人格を持つ彼女が、いつか自分の身体から分離することを、そうして一緒に生きて行くことを、夏朝はずっと願っていた。その願いが『猫又さんの寝床』に触れることで叶ったのかと思いかけて、
(……違う)
どこか悲しそうに笑う夏夜の姿に、これがひとときの幻であると悟る。
(でも)
幻でも、──否、幻であるのなら、少しの間だけでも、ふたり一緒に遊びたかった。できれば、一緒に来た子猫たちも一緒に。
「夏夜ちゃん」
傍らの夏夜に笑いかければ、夏夜は心得た笑みを返してくれる。
湯気と一緒にゆらゆらと立ち昇る金色の光の粒子が不思議で、つと手を伸ばす。
伸ばした手が猫の前脚のかたちをしていて、彰尋は小さく声をあげた。上げた声さえ、にゃあ、と猫の声。
(欲しいナニカ、じゃないのか……?)
ぱちぱちと瞬き、透明な泉の水面を覗き込む。そうして見たのは、猫の姿した自分を後ろから抱きかかえるようにして、同じように水面を覗き込む女性の姿。
自分を育ててくれている、しばらく前までは実の母だと信じていた女性とよく似たひと。育ての母が可憐な撫子であるとすれば、こちらは華麗な芍薬や牡丹。
(……鴻上、千陽)
海外に住み、舞台女優として生きているそのひとの名を胸に呟く。
育ての母の姉であり己の生みの親であるそのひとを、おかあさん、とは呼べなかった。
誕生日に夜空の絵葉書を一枚送って来たひと。
言葉を尽くした返信に、迷いに迷った末に会いたいと綴った手紙に、英語で近況のみを書いて寄越したひと。
会いたいと願っても会ってくれない、ひと。
(あんた、は)
俺のことを嫌っているのではないのか。
俺のことなど必要としていないのではないのか。
心のどこかで思っていた言葉が自分自身を突き刺す棘になって、彰尋は呻いた。その声さえ猫の声をしていて、水面に映る実の母から目を逸らすことが出来なくて、せめてその腕の間から逃れようと身をよじる。
「……抱かせてはくれないのかしら」
猫の頭に降ってきた母の声はひどく寂し気だった。思わず動きが止まる。
「いい子ね」
細い指先が頭を撫でる。優しい腕が猫となった身体を抱き上げ膝に乗せる。
何もかもを慰めて溶かすように穏やかに撫でてくる母の手に、彰尋は今己が猫であることにひどく安堵した。この姿であれば、母のぬくもりに甘えることが出来る。膝の上で幼子の如く素直に眠ることが出来る──
「……今更、」
閉ざした瞼の裏に、母の声が聞こえた。
「母親面なんて、……」
ふわりゆらり、頬を温かな湯気が撫でて過ぎる。
ひとも猫もみんな、夢から覚めるように瞬き、見たものがやはりひとときの幻であったのだと悟る。
安堵したり、くすくすと笑ったり、小さく肩を落としたり、幻の去った遠くを見つめたり、それぞれにそれぞれの思いを抱きながら、幻を見せた『猫又さんの寝床』を離れる。
みんなで、ねこ温泉郷への帰路を辿る。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
動物・自然
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年06月03日
参加申し込みの期限
2020年06月10日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年06月10日 11時00分
参加キャラクター一覧
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