- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略
９
（今年もあと数時間ね）
星ヶ丘の街を歩きながら、仙藤 紫は腕時計を確認した。彼女は妹の仙藤 蒼と一緒にレストランのイソラ・ガレッジャンテに向かっていた。
（いつもなら自宅でのんびりと過ごすところだけど……）
今日は旧市街からここまで夜空の下を散歩してきた。『キャンドルナイト』に興味があり、蒼も行きたいと言っていたのでちょっとだけ気が向いたのだ。
「さすが、寝子島で一番のセレブの住む町だね」
一方、蒼は住宅街の建物を見て物珍しさと驚きで弾んだ声を上げた。
「私たちが住んでるのも趣のある所だけど、ここは旧市街とは違った世界のように思えるね」
「……そうね」
例えるなら、旧市街は私服で星ヶ丘はスーツみたいなものだろうか。
実際、種類が違うのだろう、と紫は思った。
――イソラ・ガレッジャンテの周辺は、幻想的な雰囲気に包まれていた。
夜は煌びやかにライトアップされている場所なのに、今はほぼ真逆な印象を紫に与えた。森の中のような暗闇に、ぽつんぽつんとキャンドルの火が灯っている。ライトとは違い、広範囲を照らさない小さな炎が素朴な気持ちにさせてくれる。
（とても綺麗ね……）
周囲では何人かがスマートフォンで撮影をしていたが、紫は心の内に残すのみにしておいた。（幻想というものは、決して写真などでは形を留めることはできないと思うから……）
隣に立つ蒼も、普段は騒がしいのに「綺麗……」とため息交じりに呟いている。写真を撮る気配はない。
（綺麗だな、本当に……）
蒼は、心の底から感動していた。仄明るく灯る無数のキャンドルに目を奪われ、綺麗以外の言葉が出てこない。
「来て良かったね。お姉ちゃん」
「そうね……」
二人は微笑み合い、イソラ・ガレッジャンテの中に入り、飲み物を楽しんだ。レストランの中も今日は真っ暗で、照明はろうそくの灯だけだった。氷の入ったドリンクはきらきらと光り、それがまた美しかった。
次に、星呼祭を観る為に星ヶ丘マリーナに向かう。その途中の道すがら、ハイテンションな女性に勢い良く話しかけられた。
「こんばんは！ ちょっといいですか？」
「…………」
紫は無言で立ち止まり、蒼は「？」という顔で女性を見つめる。
「テレビねここの『笑っちゃダメダメ、寝子島の大晦日』なんですが、今、大丈夫ですかー？」
「笑っちゃダメダメって……えっ、生放送！？ 今も！？」
現在進行形でテレビに映っていると知って、蒼は驚く。だが、すぐに現状を受け入れた。
「はい！ 何ですか？ というか、私たちは笑ってもいいんですか？」
「大丈夫です！ 今日は大晦日ですけど、これからどこへ行かれるんですか？」
「星呼祭に。スカイランタンを観に行こうかと」
紫が冷静に答えると、女性は「ああ！」と合点がいった顔をした。
「毎年綺麗ですよね！ ところで、お２人はご友人ですか？」
「いえ、姉妹です」
「そうなんですね！ この辺りに住んでるんですよね！」
女性は二人に観察するような視線を向けていた。紫は上品でシックな印象の服を、妹はカジュアル寄りのファッションで決めていて、庶民的ではないと思われたようだった。
「違いますよー。ロマンチックなデートがしたくて旧市街まで来たんです！」
そして、マイクを向けられた蒼がとんでもないことを言い出した。
「えっ！？ どういうことですか！？」
本気で驚いたらしい女性に、蒼は顔を近づけて意味ありげに続ける。
「ここだけの秘密なんだけど……私とお姉ちゃんは愛し合う仲なんです！」
「え、ええっ！？」
女性とカメラマンが、驚きを超えておろおろとし始めた。生放送でこの話題はまずいだろうと慌てたらしい。
「ち、違います。妹の冗談ですから」
紫が赤面しながら訂正すると、女性達はほっとした表情で離れていった。ぎりぎり放送事故にならずに済んだようだ。
「蒼ったら……」
紫が蒼にまだ熱い顔を向けると、妹は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「愛し合うってのは冗談だけど、お姉ちゃんのことが大好きなのは本当だよ」
「もう、仕方ないわね……」
そう言われたら叱ることもできず、二人は歩みを再開した。
星呼祭とは直径３０センチ、縦４０センチ程のスカイランタンを飛ばして新年を迎え、祝おうというイベントだ。それぞれランタンを受け取ると、紫は適当に絵を描き、蒼は「寝子高に受かりますように」と書いてカウントダウンと共に飛ばした。
「明けましておめでとう」
「おめでとう！ お姉ちゃん」
飛んでいくランタンを見上げながら、二人は新年の挨拶を交わした。
（今年もあと数時間ね）
星ヶ丘の街を歩きながら、仙藤 紫は腕時計を確認した。彼女は妹の仙藤 蒼と一緒にレストランのイソラ・ガレッジャンテに向かっていた。
（いつもなら自宅でのんびりと過ごすところだけど……）
今日は旧市街からここまで夜空の下を散歩してきた。『キャンドルナイト』に興味があり、蒼も行きたいと言っていたのでちょっとだけ気が向いたのだ。
「さすが、寝子島で一番のセレブの住む町だね」
一方、蒼は住宅街の建物を見て物珍しさと驚きで弾んだ声を上げた。
「私たちが住んでるのも趣のある所だけど、ここは旧市街とは違った世界のように思えるね」
「……そうね」
例えるなら、旧市街は私服で星ヶ丘はスーツみたいなものだろうか。
実際、種類が違うのだろう、と紫は思った。
――イソラ・ガレッジャンテの周辺は、幻想的な雰囲気に包まれていた。
夜は煌びやかにライトアップされている場所なのに、今はほぼ真逆な印象を紫に与えた。森の中のような暗闇に、ぽつんぽつんとキャンドルの火が灯っている。ライトとは違い、広範囲を照らさない小さな炎が素朴な気持ちにさせてくれる。
（とても綺麗ね……）
周囲では何人かがスマートフォンで撮影をしていたが、紫は心の内に残すのみにしておいた。（幻想というものは、決して写真などでは形を留めることはできないと思うから……）
隣に立つ蒼も、普段は騒がしいのに「綺麗……」とため息交じりに呟いている。写真を撮る気配はない。
（綺麗だな、本当に……）
蒼は、心の底から感動していた。仄明るく灯る無数のキャンドルに目を奪われ、綺麗以外の言葉が出てこない。
「来て良かったね。お姉ちゃん」
「そうね……」
二人は微笑み合い、イソラ・ガレッジャンテの中に入り、飲み物を楽しんだ。レストランの中も今日は真っ暗で、照明はろうそくの灯だけだった。氷の入ったドリンクはきらきらと光り、それがまた美しかった。
次に、星呼祭を観る為に星ヶ丘マリーナに向かう。その途中の道すがら、ハイテンションな女性に勢い良く話しかけられた。
「こんばんは！ ちょっといいですか？」
「…………」
紫は無言で立ち止まり、蒼は「？」という顔で女性を見つめる。
「テレビねここの『笑っちゃダメダメ、寝子島の大晦日』なんですが、今、大丈夫ですかー？」
「笑っちゃダメダメって……えっ、生放送！？ 今も！？」
現在進行形でテレビに映っていると知って、蒼は驚く。だが、すぐに現状を受け入れた。
「はい！ 何ですか？ というか、私たちは笑ってもいいんですか？」
「大丈夫です！ 今日は大晦日ですけど、これからどこへ行かれるんですか？」
「星呼祭に。スカイランタンを観に行こうかと」
紫が冷静に答えると、女性は「ああ！」と合点がいった顔をした。
「毎年綺麗ですよね！ ところで、お２人はご友人ですか？」
「いえ、姉妹です」
「そうなんですね！ この辺りに住んでるんですよね！」
女性は二人に観察するような視線を向けていた。紫は上品でシックな印象の服を、妹はカジュアル寄りのファッションで決めていて、庶民的ではないと思われたようだった。
「違いますよー。ロマンチックなデートがしたくて旧市街まで来たんです！」
そして、マイクを向けられた蒼がとんでもないことを言い出した。
「えっ！？ どういうことですか！？」
本気で驚いたらしい女性に、蒼は顔を近づけて意味ありげに続ける。
「ここだけの秘密なんだけど……私とお姉ちゃんは愛し合う仲なんです！」
「え、ええっ！？」
女性とカメラマンが、驚きを超えておろおろとし始めた。生放送でこの話題はまずいだろうと慌てたらしい。
「ち、違います。妹の冗談ですから」
紫が赤面しながら訂正すると、女性達はほっとした表情で離れていった。ぎりぎり放送事故にならずに済んだようだ。
「蒼ったら……」
紫が蒼にまだ熱い顔を向けると、妹は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「愛し合うってのは冗談だけど、お姉ちゃんのことが大好きなのは本当だよ」
「もう、仕方ないわね……」
そう言われたら叱ることもできず、二人は歩みを再開した。
星呼祭とは直径３０センチ、縦４０センチ程のスカイランタンを飛ばして新年を迎え、祝おうというイベントだ。それぞれランタンを受け取ると、紫は適当に絵を描き、蒼は「寝子高に受かりますように」と書いてカウントダウンと共に飛ばした。
「明けましておめでとう」
「おめでとう！ お姉ちゃん」
飛んでいくランタンを見上げながら、二人は新年の挨拶を交わした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2020年05月10日
- 参加申し込みの期限
-
- 2020年05月17日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2020年05月17日 11時00分
