【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略｜リアクション

【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略

　２９

　忙しい一日だった。森篠琳子は慌ただしく家の大掃除を終えた。普段から掃除には気を遣っているが、細かいところまで綺麗にしていたら夕方になっていた。
「ふぅ……」
　休憩していると、風呂に入っていた妹がぱたぱたと居間にやってきた。
「お風呂出たよー！」
「うん、じゃあ私も入るわ」
　時刻は１６時を回った頃で、それでも空が夜の気配を見せているのは今が冬真っただ中だからだ。
（こんな時間にお風呂に入るのは、大晦日くらいね）
　琳子の家は母と娘二人という三人暮らしだが、大晦日は大掃除をして昼のうちに入浴をし、年越しそばを食べながら紅白を見るというのが習わしとなっている。こうしよう、と決めている訳ではないが、妹がまだ小さいこともあり、外に初詣やイベントに行くという選択肢はあまりない。
（本が無いと少し退屈だけど……）
　湯舟に入っている時は、何もやることがなくて若干退屈だ。だが、今日初めて訪れたゆっくりとした時間は、悪いものではなかった。
　入浴を終えて長い髪を乾かし終えた頃には、太陽はすっかり今年の役目を終えていた。
「お腹空いたな……」
　仕事に行っている母の代わりに年越しそばを――というより、お腹が空いたから年越しそばを作り始める。妹も手伝おうとしたが、まだ早いからとそれを阻止し、手早く熱々のそばを完成させた。
「美味しい……」
　しみじみとそばの味を噛みしめる。何の変哲もない素朴なそばだったが、寒い冬には暖かいそばが特別美味しく感じる。妹は、月見を崩して楽しそうに箸を動かしていた。
　時刻は夕方で、テレビではニュースが流れている。大晦日に起きた出来事だけではなく、紅白出場者の特集なんかもやっていた。見るともなしにそれを見ながら、丼を空にして洗い物をする。一方、妹はお重の中に入ったおせち料理をつまもうとしていた。
「奏子、食べたらダメよ。明日食べるんだからね」
「はぁーい」
　妹は名残惜しそうにしながらお重の蓋を閉じる。やれやれと思っていると、玄関の戸が開いて母が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」

（明日は、バイトか……）
　母と妹と三人で紅白歌合戦を鑑賞しながらも、琳子は番組の内容に集中できなかった。
　出ているアーティストのことをよく知らないせいもあるが、彼女は最近、憂鬱だった。
（来年からは、社会人か……）
　春には寝子島高校を卒業し、寝子島信用金庫へ就職する。自分が子供ではなくなることに、喜びが持てない。
（母子家庭の長女だから、否応なく同年齢の子たちに比べたら精神的に大人にならざるを得ないところもあったわ。でも、そういうのじゃくて……）
　本当に社会人として生きていかなければならなくなることに不安がある。
（大人っぽいと言われていても……学生の身分だからどこかに甘えのようなものがあったかもしれない）
　でも、来年の春からはそうはいかなくなる。
（色々と心配性……いいえ、神経質すぎるかも）
　そんなことを考えていたら、紅白歌合戦は終わっていた。
（４時間近く、考え続けていたのね……）
　紅白に続けて流れていた番組の中で年を越し、家族と新年の挨拶をする。
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます」
「おめでとー！」
　それぞれに自室に入って、布団に潜る。
　明日も、朝は早い。

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あとがき

担当マスター：沢樹一海
ファンレターはマスターページから！

皆様、この度は大変大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
リアクションをお届けさせていただきます。
らっかみタイムは現在２月ということで、人間関係等の進展に関してアクションを掛けていただいた皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
もちろん、長くお待ちいただいた全てのプレイヤー様にも大変ご迷惑をおかけいたしました。
亀よりも遅いくらいの歩みでしたが、できるだけ楽しんでいただけますよう執筆いたしました。
ご一読いただけますと幸いです。
それでは、ご参加いただきありがとうございました。

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