【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略｜リアクション

【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略

　２７

　公務員である三折部朝衣の仕事納めは、２９日だった。出勤は年明けの５日からだ。１週間の休みになるが、学生時代は冬休みが２週間近くあったから、やっぱり少し短いと感じる。
（夏休みや冬休みなんて、もう過去のものね）
　高校を出て町役場に勤めてから２年目だ。休めなくなったのが嫌かと言えば、まあ物足りない気がするのも事実だが、それが大人になった証なのだと受け入れている部分もある。
（皆、もう来てるかな？）
　今日は、高校の時の友人達との初詣だ。彼女達と会うのは夏の花火大会ぶりで、会ってからのことを考えるとわくわくする。
（数か月会ってなかっただけなのに、随分久しぶりな気がするわね）
　冬休みということもあって、寝子島にいる友人だけではなく、本土へ進学したり就職した友人達とも再会できる。
　寝子島神社の近くにある待ち合わせ場所に行くと、友人達は勢揃いしていた。皆、華やかな振袖姿だ。
「みおりん！」
　黄色の振袖を着た友人の一人が手を上げ、朝衣も軽く手を上げる。
「久しぶり！」
「えーと、みおりん、だよね？」
　また別の、桃色の振袖姿の友人が覗き込むような姿勢で首を傾げてくる。ちょっとにやついた笑みを浮かべていた。
（こいつ……）
　サーフィンが趣味の朝衣は、夏の花火大会で浴衣を着た時は日焼けをしていた。それが、肌が真っ白になっているからそこをからかってきているのだろう。
「こらー！」
　突っ込み返していると、パシャっという音がして一瞬眩しい光に襲われた。横を見ると、スマートフォンを構えた友人が小さく舌を出した。
「一生に一度見れるかどうかわからないから永久保存」
「夏に浴衣着たよっ」
　わーわーと騒いでいると、また他の友人が声を掛けてくる。
「でも、みおりん、今日の着物似合ってるね」
「でしょ！？　ありがとう！」
　やっと茶化していない感想に出会えて、朝衣は涙を流さんばかりに喜んだ。レンタルしたものだが、今日は手毬に花をあしらった振袖を着ている。
「うん、日焼けしてた時もそれはそれで似合ってたけど、冬の今はその肌色がよく似合ってるよ」
「うんうん、似合ってるよ！」
「ちょっとびっくりしたけどね」
「じゃあ、そろそろ行こっか」
　皆でわちゃわちゃとお参りに向かう。気分はすっかり同窓会だ。
（夏の花火大会の時も、こんな風だったな……）
　参拝客で込み合う参道を、周囲の喧騒にも負けない勢いであれこれ話しまくっているうちに、いつの間にか拝殿に着いていた。そこでお賽銭を入れて手を合わせる。恋人と幸せに過ごせますように、とお祈りした。
「……よし、じゃあ次はおみくじ引こっか」
「引こ、引こ！」
「ねえ、何をお願いした？」
　十代の少女に戻ったかのように騒ぎながら、おみくじを引きに行く。
「うわっ、凶だ」
「小吉……」
「大吉だ！　やったー！」
　先に引いた友人達が一喜一憂している中で、次におみくじを引こうとしたらスマートフォンから通知音がした。チェックしてみると、恋人からメッセージが届いていた。
『明けましておめでとう。今年もよろしく』
　朝衣は嬉しさに包まれる。なんとなく、これから引くおみくじには良いことが書かれている気がした。

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