【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略｜リアクション

【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略

　２６

　真境名アリサは、獣のような男達の雄叫びの中でカクテルを作っていた。布面積が少ない緑色のビキニ姿で、カウンターが邪魔をして下は見えないが、こちらもかなり際どい。
「はい、マティーニよ」
「ありがとう」
　下心が全く隠せていない顔で客がカクテルを受け取る。次に他の客用のハイボールを手早く作り――という感じに、手を止めずに次々に注文を捌いていく。
　アリサが働いているのは、木天蓼市内にある水着ガールズバー『ジュエル』だ。彼女はここで副店長を務めている。年越しイベントということもあって、今夜は乱痴気騒ぎだ。煽情的な水着姿の女子達が身体を見せつけるようにステージでポールダンスをしている。
　自分が女として持っている全てで男性の欲望を満たしたい、と。
　そう思っているかのように、彼女達はこれでもかと自らを晒している。それを、男達が全力で享受する。
　ここは、そんな世界だ。
「くぅー、ポールダンスたまんねぇなあ！」
「でも、俺はもうちょっとキレがある方が好きだな。今のはねちっこすぎるっつーか」
　そんな客達の話を聞いて、アリサはふーん……と思った。あたしだったらきっと、この男の好みのダンスが踊れる。
「…………」
　ステージの方を見遣って考える。基本的に、ガールズバーはカウンターの中で仕事をする。その為、キャバクラとは違って席について接客することはできなかったりする。お触り禁止な分、キャストが守られている職場で、普段はここまでの熱はなくどちらかといえば上品だ。
　けれど、今日は特別だ。
　年末年始は超忙しくてフロアの空気は熱を帯びているが、年明けにはこの熱も収まっているだろう。
（今は、全力で突っ走らないとね！）
　カウンターから出ると、アリサの意図を察した客の男達から歓声が上がった。彼女はポールダンスが得意だった。リクエストされて披露することもあれば、気が向いた時に自分からステージに立つこともある。
　今夜は、そんな気の向いた夜だった。
　ステージで踊っているキャストの一人に視線を送ると、相手はニッと笑ってその場から離れた。
　アリサは早速、彼女の匂いが残っているポールを使って踊り始めた。
　激しいダンスビートに乗って身体を大胆に動かすと、男達の興奮する声が聞こえてくる。
「うおおおぉおおおぉぉ！」
「アリサちゃーん！！」
　彼等の声をエネルギーにし、踊りもヒートアップさせていく。その肢体を滲んできた汗でしっとり濡らし、アクロバティックで妖艶なダンスを披露する。
『さあ、新年までのカウントダウンよ！』
　マイクを通した声と共に、「５」からのカウントダウンが始まる。それに合わせ、アリサは身体の動きをますます煽情的にしていった。
『３……２……１！』
　フィニッシュで、事切れたように身体をのけ反らせる。
「I wish you a happy newyear!!!!」
　アリサの絶叫に合わせ、バーが揺れるような男達の喉からの叫びが響いた。