【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略｜リアクション

【大晦日】自由に過ごしたり猫になったり鳥になったり鼠退治（略

　２４

　碧南がステージの前を離れた後も、様々なアーティスト達がその上でライブを行っていた。年越し直前の今は、アイドルグループ『CitrusCat's』がきらびやかな衣装で思いっきりパフォーマンスを行っていた。
（シーサイドタウンのライブ会場は、やっぱり盛り上げたいよね！）
　メンバーの一人、末明せれねとして活動している夢宮瑠奈は、今年のヒットソングのカバー曲を歌っていた。
　――だってあたしは、アイドルだから。
「年末年始は、みんなと一緒に。ね？」
　歌の合間にそう言ってウインクすると、観客達が湧いた。瑠奈達が年越しイベントをやると知って来てくれたファン達はサイリウムを振ってくれたし、たまたま立ち寄ってくれた花火を見に来た人達も盛り上がってくれる。
「今日は、いっぱいいっぱい歌いたいなって思います！」
　そして、皆で歌い始めたのは男性ダンスグループがカバーしたことで人気になった外国の曲だ。サビとダンスがキャッチ―で、大ヒットした。
　ダンスと歌で、楽しく会場を盛り上げていく。
　――あたしはずっとここで歌ってきたから。
　――あたしはまだ、これからもここで歌っていきたいから。
　寝子島の外でも歌えるるように頑張っているけれど、『CitrusCat's』はまだ島経由からしか仕事が来ない。
（それでも、あたしはこの島の住人で、この島で高校生をやっていて）
　いつかはこの島から遠く離れた仕事をする予定だけれど。
（今はまだ、ここが世界のすべてだから）
　――だから、あたしはこの世界の大晦日と、新年を祝うように。
「ずっとずっと、歌い続けるよ！」
　観客達が、また盛り上がる。とはいえ、瑠奈はあおっているわけではない。彼等に伝えているのは、全て本音だ。
「だって今日は、特別な一日なんだから！」
　サイリウムが激しく揺れる。
　皆が楽しそうな声を上げる。
「舞台の上も下も、現実もバーチャルも関係ない！　みんな一緒に盛り上がろう！」
　次に歌い出したのは、有名な特撮映画の主題歌になったダンスミュージックだ。
　激しく踊り続けているから、極寒の中でも全く寒くない。むしろ、汗が滴ってくる。
　生きている、という感じがする。
　歌いながら、踊りながら、心で叫ぶ。
（……あたしは、私は）
　夢宮瑠奈は。末明せれねは。
　どこにいたって、何を名乗ったって、ここにいることは紛れもない真実なんだよ。
　だから、ここにいるこの人間を覚えていてほしいんだよ。
　ここにいるあなたを覚えていてほしいんだよ。
「だって、ここにいるんだから！」