【終業式】サンタは通知表泥棒？｜リアクション

【終業式】サンタは通知表泥棒？

☆放課後

　ホームルームが無難に終わり、雅樹は通知表を鞄にしまって教室を出ました。
（今日は……元カノの姿を見なかった）
　ホッとするような、胸がいたくなるような。
　無意識のうちに、廊下でも昇降口でも、莉鳥の姿を探していたのでした。
　雅樹は頭を振って、心の中でつぶやきました。
（何考えてるんだかな……椎井のことはもう終わったんだよ）

　教室を出た時子は理科室へ向かいました。
（冬休み中はなかなか尚輝先生にお会いできないので、今日の放課後はお話しながら過ごしたいです）
「こんにちは、尚輝先生」
「……こんにちは」
　五十嵐尚輝先生はいつも通りの様子でした。
　時子は手作りのお弁当を渡し、コーヒーを淹れます。
「尚輝先生は年末年始は実家に帰省されるんでしょうか？」
　気になっていたことを尋ねてみました。
「さあ……決めていません」
　できることなら一緒に過ごしたいけれど、時子は尚輝先生に伝えます。
「去年は年末年始は一緒に過ごせて私は嬉しかったですが、実家のご両親は尚輝先生に会いたいと思うんです。電話でも嬉しいとは思いますけど」
「……そうですね。御巫さんは帰省するんですか？」
「私は……」
　答えながら時子は思います。
（先生に予定を聞かれたのは、初めてかもしれません）
　尚輝先生のことだから、他意はないのかもしれませんが。
「帰省するとしてもそう長い期間ではないので、冬休みの宿題で分からないところがあれば訊きに来ると思います。先生に会いたいですし」
「夜遅くでなければいつでも聞きに来てください。いれば答えますよ」
　ほっとしながら、ふと時子は気づきました。
「来年は受験生なので放課後お話しに来ることも少なくなってしまいそうですね。ちょっと寂しくなりそう……」
「……そうですか。勉強頑張ってください」

　寂しくなるという自分の言葉に、なんだか時子は動揺していることに気づきました。
「お弁当を持って来るのも今年最後ですね」
　空のお弁当箱を受け取った時子は、平静を装います。
「冬休み中も忘れずに食事をとって下さいね。実験もほどほどに」
「はい。御巫さんも風邪をひかないように」

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