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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
実験島NEK-0J1MA
【ろっこん狂乱】
「お前はただの人間だ！ お前はただの人間だ！ お前はただの人間だ！」
なんて爽快だろう。力なき者を靴底の下に敷くのは、途方もない愉悦だ。
私はただ、口にするだけでいい。
「お前はただの人間だ！ お前はただの人間だ！ あはは、お前はただの人間だ、あはははは！」
たったのこれだけで、私は誰よりも強くなれる。
『ろっこん』。『もれいび』。ああ、なんて素晴らしい。
私は最強。私は自由。私はもれいび。
さあ、『ひと』はひれ伏せ。私はもれいびなのよ！
レポートNo.398。被験者は虚栄 心。
正直に言って、最初は心躍りました。
新人の私は、もれいびとは弱きを助け強きをくじく、正義のヒーローだと思い込んでいましたから。そんな設定であるのだと……なんて甘い幻想だったことでしょう。
いいえ、だって、最初はこの子もそうだったんです。
標的はあくまで、弱者をいたぶる不良や悪漢でした。彼女は紛れも無く正義の味方だったんです、かつては。
けれど今やその矛先が向けられるのは、悪人に限りません。どうやら『ひと』であるなら誰でもいいようです。
今もまた、彼女に容易く組み敷かれた男はなんら罪のないただのサラリーマンで、暴行に及びながら高笑いをする彼女のほうにこそよほど、邪悪を感じずにいられません。
けれど、あるいは……彼女が叫ぶたび男へ筋弛緩剤を打つこの私とて、とうに邪悪へ堕ちているのかも。
黒服としての仕事は立派な社会貢献だと教えられてきたけれど、私は……。
「お前はただの人間だ！ お前はただの人間……あれっ」
「な、なんだよ……？ あんたももれいびか？」
失敗した。失敗した、失敗した！
「あんた、今なにしようとした？ 俺にろっこん使おうとしたのか？ なんでそんなことを？ 俺たちは味方……」
「ひっ、ひい……！」
私は逃げる。敵うはずもない、相手はもれいびだ。なんて無様。なんて劣等感。
もれいびには、私のろっこんは通用しない。どういう理由か、そう決まっている。
なぜ？ 私にはこれしかないのに。
私のただひとつのものが通じないのなら、私は……。
彼女が選ぶのは、ひとだけ。能力が正しく効力を発揮するのはひとが相手の時だけ、そういう設定だから。
ＭＴＴＢは、こんな荒唐無稽な話さえも信じ込ませてしまう。
彼女は私を見ない。世界の真実を見ない。見ようとしないのではなく、見ることができない。
この島が歪み切っていることに、彼女も、住人たちも、気づくことができない。
本当に歪んでいるのは、どちらなのかしら？
時折、思う。
おかしいのはこの世界？ それとも、私？
相手がひとでさえあれば、私は無敵だ。けれどそれさえも、単なる夢に過ぎないのだとしたら？
私は長い夢を見ているのかもしれない。あるいは、狂っているのかも。本当は病院のベッドに寝かされて、鎖で手足をくくりつけられたまま、イカれた頭が作り出している誇大妄想なのかも。
あるいは……島全体を使った、壮大なドッキリなのかもしれない。
そんな考えが時折、頭をよぎる。
もし、神秘に満ちたこの世界の全ては妄想で、私は特別な能力なんてなにもない、単なる無力な『ひと』に過ぎないのだとしたら？
時折、思います。
この子はもしかして、全て気づいているのでは？ って。
私たちの掌の上で、彼女はあえて自ら転がっているのでは？
そうじゃなければ、なぜ……この子はこんなにも、他人へ残酷になれるというの？
現実だとか、妄想だとか。そんなことはどうでもいい。
まやかしだろうが、壮大な騙しだろうが、関係ない。
私は『もれいび』。私は無敵。それだけでじゅうぶんだわ。
夢の中だろうとなんだろうと、今が最高なのよ。楽して気持ち良く刺激が得られれば、それでいい。
ああ、寝子島ってば、なんて素敵なところなのかしら！
押し当てた針先が震える。失敗するわけにはいかない。
私がしくじった瞬間、この子の拠り所は失われてしまうから。この子の世界は音を立て崩壊してしまうから。
歪んでいてもいい。残忍な鬼子でもいい。
守っていかなければ。この子の世界を、私が、この手で……。
なんて爽快だろう。力なき者を靴底の下に敷くのは、途方もない愉悦だ。
私はただ、口にするだけでいい。
「お前はただの人間だ！ お前はただの人間だ！ あはは、お前はただの人間だ、あはははは！」
たったのこれだけで、私は誰よりも強くなれる。
『ろっこん』。『もれいび』。ああ、なんて素晴らしい。
私は最強。私は自由。私はもれいび。
さあ、『ひと』はひれ伏せ。私はもれいびなのよ！
レポートNo.398。被験者は虚栄 心。
正直に言って、最初は心躍りました。
新人の私は、もれいびとは弱きを助け強きをくじく、正義のヒーローだと思い込んでいましたから。そんな設定であるのだと……なんて甘い幻想だったことでしょう。
いいえ、だって、最初はこの子もそうだったんです。
標的はあくまで、弱者をいたぶる不良や悪漢でした。彼女は紛れも無く正義の味方だったんです、かつては。
けれど今やその矛先が向けられるのは、悪人に限りません。どうやら『ひと』であるなら誰でもいいようです。
今もまた、彼女に容易く組み敷かれた男はなんら罪のないただのサラリーマンで、暴行に及びながら高笑いをする彼女のほうにこそよほど、邪悪を感じずにいられません。
けれど、あるいは……彼女が叫ぶたび男へ筋弛緩剤を打つこの私とて、とうに邪悪へ堕ちているのかも。
黒服としての仕事は立派な社会貢献だと教えられてきたけれど、私は……。
「お前はただの人間だ！ お前はただの人間……あれっ」
「な、なんだよ……？ あんたももれいびか？」
失敗した。失敗した、失敗した！
「あんた、今なにしようとした？ 俺にろっこん使おうとしたのか？ なんでそんなことを？ 俺たちは味方……」
「ひっ、ひい……！」
私は逃げる。敵うはずもない、相手はもれいびだ。なんて無様。なんて劣等感。
もれいびには、私のろっこんは通用しない。どういう理由か、そう決まっている。
なぜ？ 私にはこれしかないのに。
私のただひとつのものが通じないのなら、私は……。
彼女が選ぶのは、ひとだけ。能力が正しく効力を発揮するのはひとが相手の時だけ、そういう設定だから。
ＭＴＴＢは、こんな荒唐無稽な話さえも信じ込ませてしまう。
彼女は私を見ない。世界の真実を見ない。見ようとしないのではなく、見ることができない。
この島が歪み切っていることに、彼女も、住人たちも、気づくことができない。
本当に歪んでいるのは、どちらなのかしら？
時折、思う。
おかしいのはこの世界？ それとも、私？
相手がひとでさえあれば、私は無敵だ。けれどそれさえも、単なる夢に過ぎないのだとしたら？
私は長い夢を見ているのかもしれない。あるいは、狂っているのかも。本当は病院のベッドに寝かされて、鎖で手足をくくりつけられたまま、イカれた頭が作り出している誇大妄想なのかも。
あるいは……島全体を使った、壮大なドッキリなのかもしれない。
そんな考えが時折、頭をよぎる。
もし、神秘に満ちたこの世界の全ては妄想で、私は特別な能力なんてなにもない、単なる無力な『ひと』に過ぎないのだとしたら？
時折、思います。
この子はもしかして、全て気づいているのでは？ って。
私たちの掌の上で、彼女はあえて自ら転がっているのでは？
そうじゃなければ、なぜ……この子はこんなにも、他人へ残酷になれるというの？
現実だとか、妄想だとか。そんなことはどうでもいい。
まやかしだろうが、壮大な騙しだろうが、関係ない。
私は『もれいび』。私は無敵。それだけでじゅうぶんだわ。
夢の中だろうとなんだろうと、今が最高なのよ。楽して気持ち良く刺激が得られれば、それでいい。
ああ、寝子島ってば、なんて素敵なところなのかしら！
押し当てた針先が震える。失敗するわけにはいかない。
私がしくじった瞬間、この子の拠り所は失われてしまうから。この子の世界は音を立て崩壊してしまうから。
歪んでいてもいい。残忍な鬼子でもいい。
守っていかなければ。この子の世界を、私が、この手で……。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年04月17日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年04月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年04月24日 11時00分
