寝子島生まれの寝子島育ち。僕はずうっと、ここで暮らしてきました。
この島がフツウでないことに、気づいている人もいることでしょう。
尋常ではない怪力。指先からほとばしる電撃。テレポーテーション。
超常の力……ろっこん。
一部の島民が備えるこの力は、僕らの常識を変え、僕らの世界の在り様を捻じ曲げています。
日常を少しばかり便利にしたり。ヒーローさながらに人々を救ったり。なかには悪辣な目的を遂行しようとする者も……なぜだかそうした試みは、大抵上手くいきませんでしたけれど。
そう。僕にも……僕にさえ、力は宿っているのです。
暗闇を見通す暗視能力。ひとたび眼鏡を拭えば、夜は昼のように明るく見えました。
なぜ僕にこんな能力が宿ったか。なぜこの島の住人にだけ、能力が開花するのか。理由は分かりません。
けれど僕には、そこに何か……どこか……。
そう。誰かの意思が介在しているように思えてなりません。
……ああ。いけない。そろそろ時間だ。
じき、目覚まし代わりのラジオが喚き始めるだろう。
さあ、今日もMTTBを飲んで、店を開けなければ。
『やあ、寝子島のみんな! ハッピーかい?
町長のリッカルドだよ、チャオ♪
素敵な朝がやってきた! さあ、人生を楽しもう!
仕事も勉強も、遊びも、青春も恋愛も、全てを満喫しよう!
おおっと、出かける前に、MTTBを飲むのを忘れずにね!
MTTBは君の健康を保つために必要な、大切なお薬なんだ。一日一錠、くれぐれも忘れずに服用するんだぜ。
ちゃーんと飲まないと、逮捕しちゃうぞ☆
それじゃ、今日もハッピーな一日を!』
……九夜山頂に横たわる管理施設には、いつものように陰鬱な空気がわだかまっている。それでも楽園をうたう地上のまやかしよりはずいぶんとマシだろうが。
施設の中枢には幾人もの
黒服たちが、明滅する無数のモニタを食い入るように見つめている。
新人が半ばぼやくように言った。
「幻覚剤MTTB……なぜ彼らは疑いもなく、こんなものを毎日服用するんです?」
「中毒性があるからな。最初の一度は強制的な措置が必要だが、一度摂取してしまえば自然と服用し続けるようになる」
「で、彼らはろっこんなんて超能力が身に着いたのだと思い込みながら、この島で一生を過ごすわけか……哀れなもんだ」
あるモニターの中では、
少女が軽々と軽自動車を持ち上げ、またあるモニターでは、
少年が指先から強烈な電光を放っている。
むろん少女の怪力は黒服の操るクレーンが自動車を持ち上げているのだし、少年の能力はアーク放電器の照射に過ぎないが、彼らはそれを自らの会得した超常能力であると認識している。
彼らは黒服の所作一切を認識しない。彼らの監視と管理、実験の全てを認識しない。
MTTBの作用の一つは、服用者に『見ようと意識したものしか見えない』狭窄した視点を与えることなのだ。
科学と物理が、超常を作り出す。
それが実験島NEK-0J1MAにおける、紛れもない日常なのだ。
しかしながら、この箱庭は歪に過ぎる。各所にはひずみも生じたことだろう。
いつしか住人の中には、MTTBの服用を拒む者も現れはじめたのだ。
真実を取り戻した彼らは、
ある少女を旗印に決起する。
「MTTBに侵された人々には、私たちの言葉は届かない……。
それなら、MTTBの供給を断てばいいのよ」
『野良猫解放戦線』の台頭が、実験島に激震を招こうとしていた。
作られた日常。隣り合わせの真実。
あなたは、気づくだろうか?
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
こちらは、こちらは浅葱 あやめさんの、イラストキャンペーンのプレゼントシナリオとなります。
浅葱さん、リクエストいただきましてありがとうございました!
ご参加の際は、ガイドのイメージに関わらず、自由にアクションをおかけくださいませ~。
このシナリオの概要
今回は、寝子島が舞台のフリーシナリオです。
島の中でなら、なんでも自由に行動することができます。
いつものように学校へ行ったり、お仕事に勤しんだり。休日に友だちと遊んだり、恋人と過ごしたり。
一日中ダラダラと過ごすこともできますし、もれいびならろっこんを使って、
ヒーローのように大活躍することもできます。
日常も、バトルも、オールジャンルOK! お好きなようにお過ごしください。
寝子島には、ハッピーが満ち溢れているのですから!
……というのは、あくまで表向きのこと。
実はこの島は、皆さんがいつも暮らしている『寝子島』とはすこ~し違う、IFの世界。
『実験島NEK-0J1MA』なのです!
この島に暮らす住人たちは全て、謎の『黒服』たちが管理する実験体です。
黒服たちは、島の住人たちに、幻覚剤『MTTB』を毎日一錠服用させることで、
偽りの真実を覆い隠し、島全体を自分たちに都合の良い実験区画として利用しているのです。
『MTTB』は鮮やかな青の錠剤で、服用すると以下のような作用があります。
・脳の認識機能を低下させ、黒服の行動や、関連する全ての情報を認識できなくなる。
・中毒性があり、一度摂取すると服用を断つことが困難。
何らかの理由でMTTBの服用を止めた者は、見つかり次第捕縛され、厳しく処罰されます。
どんな罰が下るかは定かではありませんが、少なくとも捕まって戻ってきた者はひとりもいません。
黒服たちはこの錠剤の作用を利用し、住人たちに『ろっこん』という超能力を得たと錯覚させ、
その行動の一部始終を観察しています。
彼らの目的は不明ですが、おそらくは何らかの社会実験を行っていると考えられます。
ろっこんは、まやかしです。
怪力のろっこんなら、黒服が動かすクレーンが巨大な物体を持ち上げていますが、
黒服もクレーンも、住人たちは認識することができません。
電撃を放つろっこんなら、黒服が放電装置で電流を発生させますが、
黒服も彼らが扱う機械の類も、住人たちはその一切を認識することができません。
島は閉鎖された実験区画であり、住人たちの本土との行き来は禁じられていますが、
彼らがそれに違和感を抱くことはありません。
彼らの生活は全てが黒服たちによって管理・監視されており、
MTTBの作用によって、あらゆる不自由を感じることはありません。
実験島NEK-0J1MA。あなたもまた、その住人でしょうか?
あるいは、黒服の中のひとりかもしれません。
またあるいは、MTTBの服用を断ち、黒服の支配へ抗う抵抗勢力の一員かもしれません。
お好きな立場で、ディストピアな世界をお楽しみください。
アクションでできること
ご参加の際は、以下の【1】~【4】からお好きなものを選択し、アクションにお書きください。
GAを組めば、住人Aさんとそれを監視するBさん、などご一緒に描写することも可能です。
今回はIFシナリオです。
そのため、いつもの皆さんとは違った設定や、別人としてご参加いただくのもOKです。
【1】実験島の住人(実験体)として生活する
『寝子島』で生活するあなたの暮らしぶりを描写します。
日常のシーンや、神魂の影響にろっこんで対処する非日常なシーンなど、
自由にアクションをお書きください。
ただしリアクションは、黒服が実験体であるあなたの生活をリポートする、
という形で描写されます。
あなたは、寝子島の真実に薄々気づいているかもしれませんし、
まったく気づいていないかもしれません。
また、最後の最後に気づくのかもしれません。
【2】黒服として住人たちを監視、ろっこん演出する
あなたは実験島NEK-0J1MAを運営する、通称『黒服』のひとりです。
常に黒のスーツを着こみ、黒のサングラスをかけ、住人たちの生活を演出します。
MTTBを服用している住人たちは、あなたの存在や行動を認識することができません。
あなたの仕事は、この性質を利用し、住人たちを間近で観察したり、様々な道具や機械、時に重機なども使用して、
ろっこんの効果を現実のものとして演出することです。
ただ黒服の中には、見えないのをいいことに、住人たちにイタズラをしかけたり、
良からぬことを企む者もいるようです。
もちろんほかの黒服に見つかれば、重い制裁が待っています。
【3】『野良猫解放戦線』の革命家として、黒服に抵抗する
何らかの理由で、MTTBの服用を断った住人たちもいます。
彼らは地下へと潜り、『野良猫解放戦線』を名乗って、黒服打倒を目指しています。
リーダーは、剣崎 エレナ。
現在は、MTTB精製施設への襲撃計画を立案中。
しかしろっこんはまやかしであり、あなたも彼らも、ただの『ひと』に過ぎません。
果たして策はあるのでしょうか……?
【4】その他
上記の行動以外で、なにかやりたいことやアイディアがある方は、
自由にアクションをかけていただいてOKです。
NPCについて
NPCは、登録済みのキャラクターでしたら、違和感のないシチュエーションに限り、誰でも登場可能です。
墨谷のシナリオに登場したキャラクターや場所については、未登録でも登場可能です。
また、Xイラストのキャラクターも登場可能です。
口調など必要なキャラクター設定は、アクションに記載をお願いします。
Xキャラ図鑑に掲載されている内容は、そのURLを書いていただければOKです。
以上になります。
それでは、ご参加をお待ちしております~!