ビーチでピーチ狩り　ウィンター！｜リアクション

ビーチでピーチ狩り　ウィンター！

　ピーチ狩りの魔の手に絡めとられ、致し方なく冬の浜辺で艶っぽい水着姿を晒す羽目に陥って戸惑いを隠せずにいるのは何も女子ばかりではなかった。白磁のような滑らかな肌に長い黒髪。制服を着ているときならまだしも、薄水色のパレオを纏った哀坂極夜はおっとり系お姉さまにしか見えない。
「……この強制された水着、可笑しくありません？」
　それはもう、極夜が麗しい男子だからだろうと思う。
　桐島先生のようなブーメランパンツとどちらが似合うかと言えば一目瞭然だろう。
　そちらも見てみたい気はするけれど……。
「とにかく他の者に咲先輩が辱められる前に助けなくては……！」
　このカオスフィールドにあってまず頭を過ぎったのは、大切な年上の想い人、矢萩咲のこと。
　何しろあの先輩ときたら、不純異性交遊への耐性は極夜のパレオの薄布以上にぺらっぺら。学生時代は風紀委員を務め鬼矢萩と呼ばれるほど真面目で苛烈だった割に、こういうエッチな事態に巻き込まれるとなにかと難儀な人なのだから！
「被害に遭う前に何処かに隠して守らなくては……！」
　保護者心理に突き動かされた極夜のプレイスタイルは、自然と不要な戦闘は避けてひたすら逃げ、咲を探す事に専念するというものになる。
　そんな極夜に先ほどから目を付けていた者がいた。
「線の細げな綺麗そうな骨格のおにーさん発見！」
　蜂のように舞い、人のように揉むスタイルをすっかり確立した彦生名瑠である！
「やぁやぁおにーさん、なんて素敵な腰骨なんだろぅ」
「な！？」
　予期せぬ襲撃にびっくりした猫みたいに立ち止まる極夜。
　一方名瑠は、よい狩りが出来そうな予感に気分は最高潮でレッツゴー！
「楽しく乱れてるぅ？　触らせて！」
「な、なにを言っているんです？　私なんかに触れてどうすると？　見たところ君も男子、私も男子ですよ」
「僕、男とか女とか関係ないんだよねぇ。骨格さえ美人なら、さ！」
　名瑠は蜂に化けて後ろを取る。
　ピーチより先に、気になっていた腰骨に触れる。
　その瞬間、極夜は身を捩って名瑠の腕をつかみ、そのまま巴投げで砂浜に投げつけた。
「……！？」
　名瑠は目を白黒させる。
　名瑠には何が起こったか分からなかったが、こういうことである。名瑠のろっこんは場を乱すには有効だったが、ピーチを揉むには蜂のままではいられない。名瑠が人に戻ったその瞬間こそ極夜にとっての好機だった。つまり彼の器用さと格闘技経験からくる反射神経がいい仕事をしたということだ。
「こういう趣味は本当にないんですが、すみません」
　極夜は倒れた名瑠のピーチからＰＰをもぎ取った。
「やれやれ……でも腰骨は触ったし、ま、いいかぁ」
　そのとき砂浜に絹を裂くような悲鳴が響き渡った。聞き間違えようもない。咲の声だ。
「咲先輩！」
　極夜は悲鳴がした方へ駆け出した。