寝子ヶ浜海岸の脇を通りがかった
矢萩 咲は、浜辺で乾布摩擦を行う一団を目にして顔をほころばせた。
「ほう。健康的だな」
12月であり寒さも厳しくなってくる時節だが、彼らは勇ましく掛け声を揃えながらに身体を擦りあげている。
そうしたある種の荒行は、剣術を嗜む咲にも通ずるところはあったかもしれない。咲は感心して、しばらくその光景を眺めた。
やがて彼らがひと通りゴシゴシとし終えると、音頭を取っていた男が前に進み出て、叫んだ。
「それでは、準備運動も済んだところで……
『ビーチでピーチ狩り大会・ウィンター』!! 始めてまいりましょ~~~!!」
うおーーーっ!!と歓声が上がった。
「…………は?」
男が発した聞き慣れない単語に、咲は思わず眉をひそめる。
そして気づいた。
なんか身体がスースーすることに。
「…………寒っ!?」
咲はいつの間にやら水着姿となり、浜辺に佇んでいた。
「な、なんで咲が水着に……!?」
咲の戸惑いと羞恥をよそに、男は司会者よろしく勝手に話を進め始めた。
「片尻にタッチしたら、1PP(ピーチポイント)! 両尻をぐわしっとつかんだら3PP! 制限時間内に最もPPを稼いだ方の優勝ですよ!」
いわく、「ピーチ」とは「お尻」である。
他者のピーチに触れればポイントを得られるが、逆に触れられればポイントを奪われてしまう。
ピーチポイントを奪い合い、最高得点を稼いだ者が優勝となり、豪華賞品をゲットすることができる。とのことだ。
咲の背中を、ぞわりと悪寒が駆け巡る。
咲はこの感覚を知っていた。長い寝子島生活で、何度も経験したことのある感覚だ。
そう、本日もまた、神魂の働きは絶好調であった。
見れば周囲には同様に巻き込まれたらしい、哀れな寝子島住人たちが寒さと恥ずかしさに苛まれ、顔を真っ赤にしながら身を縮み込ませている。
彼らも一様に水着姿となっていた。それも概して、エグい食い込みのキワっキワなやつだ。
「またこんな現象に巻き込まれて……さ、咲はやらないぞ! やるものか!」
と言ってはみたものの、司会者はお構いなしである。
「制限時間は1時間! その間、皆さんはこの浜辺から出ることはできませんよ。なお最下位の方には、お尻にとんでもないことをされてしまうという、世にも恐ろしいバツゲームが待っていますのでお気を付けて!」
「とんでもないことって何!?」
どうやら、やるしかないようだ。
「さあ、寒さに負けず、レッツ・ピーチ狩り♪ スタートです!」
こんにちは。網です。どうぞよろしくお願いします。
以前行われた『ビーチでピーチ狩り大会』が、冬バージョンとなって帰ってきました。
ピーチはお尻です。お尻を揉み合う競技です。
皆さんは神魂の影響でいつの間にかこの場に呼び寄せられたり、
何事かと興味を持ってやってきた、大会の参加者です。
神魂のせいで、大会が終わるまで海岸を出ることはできません。棄権もできません。
なお皆さんの格好は、いつの間にか水着に変わっています。デザインは自由です。
お尻の片方に触れたら1PP(ピーチポイント)。
同時に両方触れたら3PPゲットできます。
ただし、一度触れた相手には、5分程度間を置かないと、再びポイントを得ることはできません。
自分が触れられると、その分のポイントを相手に奪われてしまいます。(マイナスにはなりません)
制限時間1時間の間に、最高PPを獲得した参加者が優勝です。
優勝者には賞金5万円と、あま~い桃の缶詰がたくさんもらえます。
なお最下位になった人は、『お尻に××××なことをされてしまう』という、
恐ろしいバツゲームが待っています。詳しくは教えてくれないところがさらに恐怖をあおります。
会場には、砂で作られたオブジェや壁などが多数あります。
遮蔽物や身を隠す場所として上手に利用してください。
この日のビーチには広く神魂が影響しているようで、
誰のお尻を触ろうが揉みしだこうが、痴漢扱いはされません。
それ以外の部分については分かりませんが。
今回は冬仕様ということで、
・12月。寒いです。雪が降っています
・PPを獲得すればするほど、温かくなります。
PPを失うと、寒くなります。
・動く「雪だるま」が会場内を徘徊しており、参加者を見つけると抱き着いてきます。
抱き着かれると、とっても寒いです。
といった要素が追加されています。お気を付けて。
参加者の中には、以下のNPCも混ざっているようです。
自由に絡んでください。
・富士山 権蔵:超・ヤル気。ギラつく目で獲物を見定めています。藤柄のワンピース。
・鷲尾 礼美:意外とやる気。ハニートラップには要注意。セクシーモノキニ。
・桐島 義弘:また巻き込まれました。目のやり場に困っています。イチゴ柄のブーメランパンツ。
それでは今回も、ビーチで思う存分ピーチを狩ってください。
ご参加お待ちしています。