【星幽塔】第一階層　星の明かりの仮面舞踏会｜リアクション

【星幽塔】第一階層　星の明かりの仮面舞踏会

【それから、これから】

　さて、舞踏会の夜は明けて、後日のこと。
「今日はあたしのおごりだよ。パーッとやってよ！」
　Barアストラルにはフォルカ・ヴィクスンと、その友人たちが顔を揃えておりました。
「この前はありがとね。いろいろと世話かけちゃってさ……けど、これでスッキリしたからさ！」
「よろしかったんですか？　あんなお別れで」
　あたたかいワインの満たされたグラスを手に、ユリーカ・ナントカは眉根を寄せましたけれど。
　フォルカはあっけらかんとして、
「いいんだよ、あたし盗賊辞めるつもりないし。夢は捨てられないもんね！」
「でも、未練とかないの？　最初はまんざらでも無さそうだったじゃない」
　初恋の元カレとの苦い思い出を引きずっているらしい水上桜。どこか心配そうに言うと、フォルカは狐顔の頬を所在なくかいて、照れくさそうに言いました。
「ま、ちょっともったいなかった……かな？」
「そーだよ！」
　香ばしく焼けたお肉をかぷりと頬張りつつ、メリィ・ランページはちょっぴり不満そう。
「せっかくソコーチョーサしたのにさー。いいヒトそーだったし」
「まあまあ、メリィちゃん。フォルカさんにはフォルカさんのお考えがありますから」
「ぶーぶー」
　料理を自ら運んできたリリエル・エーテライト。ことりと卓へ皿を置き、メリィへ苦笑いしました。
　トラブルもあった素行調査ですけれど、一応の決着は着きました。フォルカもいささか未練たらしくは見えつつ、自分の決断に後悔はなさそうです。
　彼らもそれでいい、と考えることにしました。なんだかんだで、友人たる彼女の気持ちが一番です。
「やあ、フォルカ。君にお客さんだよ」
　かたんと扉を開きやってきたのは、旅鴉月詠。男性化の効果も解けて、いつものクールかつちょいダルな面持ちを浮かべております。
　そして……月詠の背後に立っている人物を見て、フォルカや、それに冒険者たちもまた、目を丸くしました。
「あっ……！？」
「こんにちは、フォルカさん」
　それは先日きっちりとフッたはずの、アイン・マクブライドでありました。
　慇懃に頭を下げたアインへ、フォルカはぷるぷると震える指を差し、
「なっ……なんでぇ！？」
「彼は自力で、君の居場所を探し当てたそうだ。なかなかやるじゃないか」
「恐れ入ります、魔女殿」
　お金持ちのボンボン、などと軟弱なイメージもどこへやら。彼は自らの足と家業に伴う乗客のネットワークも駆使し、この広い第一階層の中から、フォルカを探し出したのだというのです。
　にっ、と口元を上げて、彼は不敵かつ快活に笑み、
「我々は別の世界に生きているとあなたは言った。けれど僕や父のビジネスにも、重なる部分はあるかもしれませんよ？　例えば、私財を溜めこんでいる悪徳商人の屋敷リスト……なんて、興味があるのでは？」
「あ、あんた……意外と黒いんだね」
「商売人はしたたかでなければね。それに父がどうしてもあなたを探すようにと、背を押してくれました。ずいぶんと気に入ってくれたようでね。僕らは共に生きることもできる、そうではありませんか？」
　今日はご挨拶までに、と芝居がかった一礼を残し、彼は堂々たる足取りで去っていきました。
　あっけにとられるフォルカの肩を、月詠はぽむっと叩きます。
「なかなか骨のある若者じゃないか？　君の稼業にも案外、お役立ちかもしれないね」
　フォルカは大口を開けたまま、ぽかーん。
　そんなやりとりを眺めていたアリス・ミーティアとルーク・ポーラスターは、がしょん！　と生中のジョッキを合わせます。
「結婚式には呼んでよね、フォルカ！　たぶん泣いちゃうけど」
「あいつまだ放心してるぞ。大丈夫か？」
　ふたりが今後どうなっていくのかは、分かりません。お付き合いが始まったりするのかもしれませんし、フォルカはやっぱり固辞するのかもしれません。案外あっさり、ころっと結婚してしまうのかもしれません……これからのなりゆき次第です。
　どちらにしても、友人としてはあたたかく見守っていこう、とアリスは思います。
「ふーん。結婚かぁ……」
「あ、ルークも結婚したくなった？」
「いやー。オレって剣ばっかり振り回してきたから、そういうのよく分かんないんだよな～」
「そうなの？　じゃ、まずは恋人探しからだね。ルークの好みのタイプって、どんな人？」
「そうだなぁ。俺は冒険者だし、一緒に冒険してくれる人ならいいよな！」

「いいね～♪」
　なんて、恋バナの花も咲きつつ。
　小さな始まりを肴に、彼らの祝杯は途切れることなく、今日も今日とてBarアストラルは大盛況！　でありました。

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あとがき

担当マスター：墨谷幽
ファンレターはマスターページから！

　墨谷幽です。『仮面舞踏会』のリアクションをお届けいたします。

　今回は、フォルカちゃんにも春が来た！　なお話でした。
　お相手のアインさんのキャラクターは皆さまに丸投げという形にさせていただきましたけれど、結果、『基本イイ人、ちょい悪でしたたかなところもある』とゆー感じになりました。
　なりゆきでちょっぴりバトルな展開もありましたけれど、居合わせたのが冒険者の皆さんということで事なきを得たようです。

　今後のことについては、分かりません。水面下でなんやかや話が進んでるのかもしれませんし、いつのまにか自然消滅して無かったことになっているのかも。
　ご要望が多ければ、その後の顛末についても執筆させていただくことになるかもしれませんね～。
　私も気になりますし、せっかく皆さんにも骨を折っていただきましたので、できれば幸せになっていただきたいものですね！

　それでは、今回もご参加いただきましてありがとうございました。
　またの機会にもお目にかかれますことを、心よりお待ちしております～。
　お疲れさまでした！

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