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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
シネマカフェ『クランク・イン』 第四幕
【森の妖精がやってきた！】
いささかけだるげな休日のこと。
三宅 葉月が目覚めたのは１１時過ぎ、とうにお日さまは登り切ろうとしている頃合いです。ゆっくりと朝風呂に入り、ようやく服を着替えたと思った時には、時計は午後１時を差しておりました。
まるで葉月の周りだけ、時がゆっくりと流れているかのよう。
かばんにいつも持ち歩いているスケッチブックや七十二色入りの色鉛筆を詰め込み、星ヶ丘寮を出ると、少し思案した後にシーサイドタウンへ。良いモチーフを見つけてはスケッチをする気ままな散歩は、半ば葉月のライフワークとも言えました。
そうしてそぞろ歩きながらに何枚かのスケッチを完成させ、夕暮れ時に差し掛かった頃に。
「ほわーーー……！！」
自分を見るなり、ぽかーんと口を開けた嬉野 エマのおまぬけ顔に、葉月はきょとんと首を傾げます。
「私の顔に、なにかついてる？」
「い、いいえー！ メッソーもない！ うっかり、エルフの人が現れたかと思ってしまったのです。ほらほら、『首輪物語』みたいな！」
確かに、物腰穏やかな葉月の佇まいときたら動き出した精巧なアンティークドール、あるいは森を統べる妖精の貴婦人といった趣ではありました。
そんな葉月が訪れたのがここ、シーサイドタウンはシネマカフェ『クランク・イン』でありましたもので、映画好きほど名キャラクターあれこれを連想してしまうのは無理も無かったことでしょう。
「映画喫茶？ へえ……素敵ね」
「わー、ありがとうございますー！ 私も素敵なお客さまにいらしていただいて嬉しいのです♪ ささ、お席へご案内いたしますね！」
「え？ ああ……そうね」
予定にはなかったものの、せっかくのお誘いです。一日の終わりに、ゆったり映画鑑賞も良いかもしれません。
カウンター脇の、スクリーンにも近いベストな席へ案内されるとふわりと腰かけ、ポップコーンとサイダーを注文。映画といったら、これでしょう！
ややあって品物を持ってきたエマが、ちょっぴり控え目に言いました。
「あのー。ところで……これから上映するの、『七匹の侍』なのですけれど。よろしかったです？」
「？ ええ。今日はなんとなく、時代劇が見たい気分だったの」
エマはなんだか、ほっとした表情を浮かべました。まあ、葉月を一見したならシャレオツ～な恋愛映画やら、あるいはハイファンタジーな冒険ものなんてお好みそうですものね。
しかし実のところ、彼女は時代劇やアクション映画だって案外お好みだったりするのです。
「それでは、ごゆっくりお楽しみくださいませー！」
彼女が言うなりブザーが鳴り響き、徐々に絞られていく照明が、葉月の胸をことりと弾ませました。
葉月が映画を見るとき、どうしても気にしてしまうことがあります。
（このシーン。いい構図ね）
絵描きの卵である彼女は、印象的な場面が登場するたび、画角やらパースやらを確かめずにはいられません。どうすればこのアクションを絵画として落とし込むか？ 限られたスペースで動きの流れをどう表現するか？ 絵として効果的に表す手法や技巧を逐一模索してしまうのでした。
（……っと。いつもの癖ね）
とはいえもちろん、純粋に映画を楽しみたいという気持ちだってありました。
それに名作と名高い作品だけあり、『七匹の侍』が画面からかもしだす恐ろしいほどの熱量を、葉月とて感じ取らずにはいられません。
（今日は技法的なこと云々は忘れて、純粋に楽しむべきね）
ポップコーンをぱくりと頬張り、スクリーンへ集中することにします。
撮影当時としては考えられないほどの巨額の製作費が注ぎ込まれ、とてつもない人数のスタッフやキャストで撮られたという映画は確かに、葉月の視覚を通してその気迫が胸へと飛び込んでくるかのようです。
手練れの浪人、狼の侍が農民たちの必死の訴えを受け入れ、彼らの願いを聞き入れるシーン。集っていく仲間たち。ひっ迫し追い詰められた農民たちの事情と、侍たちの思い。
そしていよいよ訪れる、大合戦。壮絶な殺陣！ 倒れていく仲間たち……。
（…………すごい）
思わず拳を握り込んでいることにも気づかず、葉月は白黒の世界へと没入し続けました。
映画も終わり、帰り際に。
「お客さま！ 映画、いかがでしたかー？」
「そうね……とても有意義な時間だったわ」
「わー、良かったのです！ ぜひまたお越しくださいませー♪」
手渡されたチラシによれば、『クランク・イン』ではこれからも気になる映画が続々と上映される予定です。スケッチとお散歩の終わりに、また訪れてみるのも良いでしょう。
すっかり日も落ちて濃紺のカーテンを下ろした街並みへ、葉月は溶け込むように歩いてゆきました。
いささかけだるげな休日のこと。
三宅 葉月が目覚めたのは１１時過ぎ、とうにお日さまは登り切ろうとしている頃合いです。ゆっくりと朝風呂に入り、ようやく服を着替えたと思った時には、時計は午後１時を差しておりました。
まるで葉月の周りだけ、時がゆっくりと流れているかのよう。
かばんにいつも持ち歩いているスケッチブックや七十二色入りの色鉛筆を詰め込み、星ヶ丘寮を出ると、少し思案した後にシーサイドタウンへ。良いモチーフを見つけてはスケッチをする気ままな散歩は、半ば葉月のライフワークとも言えました。
そうしてそぞろ歩きながらに何枚かのスケッチを完成させ、夕暮れ時に差し掛かった頃に。
「ほわーーー……！！」
自分を見るなり、ぽかーんと口を開けた嬉野 エマのおまぬけ顔に、葉月はきょとんと首を傾げます。
「私の顔に、なにかついてる？」
「い、いいえー！ メッソーもない！ うっかり、エルフの人が現れたかと思ってしまったのです。ほらほら、『首輪物語』みたいな！」
確かに、物腰穏やかな葉月の佇まいときたら動き出した精巧なアンティークドール、あるいは森を統べる妖精の貴婦人といった趣ではありました。
そんな葉月が訪れたのがここ、シーサイドタウンはシネマカフェ『クランク・イン』でありましたもので、映画好きほど名キャラクターあれこれを連想してしまうのは無理も無かったことでしょう。
「映画喫茶？ へえ……素敵ね」
「わー、ありがとうございますー！ 私も素敵なお客さまにいらしていただいて嬉しいのです♪ ささ、お席へご案内いたしますね！」
「え？ ああ……そうね」
予定にはなかったものの、せっかくのお誘いです。一日の終わりに、ゆったり映画鑑賞も良いかもしれません。
カウンター脇の、スクリーンにも近いベストな席へ案内されるとふわりと腰かけ、ポップコーンとサイダーを注文。映画といったら、これでしょう！
ややあって品物を持ってきたエマが、ちょっぴり控え目に言いました。
「あのー。ところで……これから上映するの、『七匹の侍』なのですけれど。よろしかったです？」
「？ ええ。今日はなんとなく、時代劇が見たい気分だったの」
エマはなんだか、ほっとした表情を浮かべました。まあ、葉月を一見したならシャレオツ～な恋愛映画やら、あるいはハイファンタジーな冒険ものなんてお好みそうですものね。
しかし実のところ、彼女は時代劇やアクション映画だって案外お好みだったりするのです。
「それでは、ごゆっくりお楽しみくださいませー！」
彼女が言うなりブザーが鳴り響き、徐々に絞られていく照明が、葉月の胸をことりと弾ませました。
葉月が映画を見るとき、どうしても気にしてしまうことがあります。
（このシーン。いい構図ね）
絵描きの卵である彼女は、印象的な場面が登場するたび、画角やらパースやらを確かめずにはいられません。どうすればこのアクションを絵画として落とし込むか？ 限られたスペースで動きの流れをどう表現するか？ 絵として効果的に表す手法や技巧を逐一模索してしまうのでした。
（……っと。いつもの癖ね）
とはいえもちろん、純粋に映画を楽しみたいという気持ちだってありました。
それに名作と名高い作品だけあり、『七匹の侍』が画面からかもしだす恐ろしいほどの熱量を、葉月とて感じ取らずにはいられません。
（今日は技法的なこと云々は忘れて、純粋に楽しむべきね）
ポップコーンをぱくりと頬張り、スクリーンへ集中することにします。
撮影当時としては考えられないほどの巨額の製作費が注ぎ込まれ、とてつもない人数のスタッフやキャストで撮られたという映画は確かに、葉月の視覚を通してその気迫が胸へと飛び込んでくるかのようです。
手練れの浪人、狼の侍が農民たちの必死の訴えを受け入れ、彼らの願いを聞き入れるシーン。集っていく仲間たち。ひっ迫し追い詰められた農民たちの事情と、侍たちの思い。
そしていよいよ訪れる、大合戦。壮絶な殺陣！ 倒れていく仲間たち……。
（…………すごい）
思わず拳を握り込んでいることにも気づかず、葉月は白黒の世界へと没入し続けました。
映画も終わり、帰り際に。
「お客さま！ 映画、いかがでしたかー？」
「そうね……とても有意義な時間だったわ」
「わー、良かったのです！ ぜひまたお越しくださいませー♪」
手渡されたチラシによれば、『クランク・イン』ではこれからも気になる映画が続々と上映される予定です。スケッチとお散歩の終わりに、また訪れてみるのも良いでしょう。
すっかり日も落ちて濃紺のカーテンを下ろした街並みへ、葉月は溶け込むように歩いてゆきました。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年03月11日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年03月18日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年03月18日 11時00分
