【球技大会】クラス対抗、冬の陣！｜リアクション

【球技大会】クラス対抗、冬の陣！

◆女子ソフトボール～緊張したり、しなかったり

　男子と同じくイニング数を短縮したソフトボールもいくつかの試合が進み、次のカードは１-５対１-９。
　相手が体育科だと、普通科のテンションはちょっと下がる。
　１回表で体育科の９組に３点奪われ、自分たちはまだ０点。２回表のここは気張って抑えなければならない局面だが、明らかに日頃のトレーニングで締まった筋肉をもつ９組ナイン相手に気合が入りきらない５組女子たち。レフトの水上桜とセンターの楠瑠璃はゆるっとした小走りでポジションへ向かいながらお喋りする。

「球技、そんなに得意じゃないのよね……楠さんは？」
「私は体格的にバレーに不向きだから」

　たしかに瑠璃は小柄だ。そして巨乳だ。走るのに合わせて、たゆんたゆんと揺れる瑠璃の体操着に目を向けて、桜は（負けた……）と凹む。

「桜さん？」
「あ、ううん、何でもない。今戦うべきは２－９だよね」

　最初の打者は出塁を許したものの、次の打者は三振で１アウト、その次の打者はレフトに打ち上げ桜がキャッチし２アウト。バッターボックスに立ったのは、剣道少女の伊藤美緒だ。
　美緒は力強く２回ほど素振りをする。

（こちとら動く相手に確実に有効打突を与える修行を何年もやってるんだから。ボールにバットを当てるくらいお茶の子さいさいよ！）

　気合全開、といえば聞こえはよいが、少々度を超して肩に力が入ってしまっている。
　そのとき応援席の方から伊藤佳奈の声が聞こえた。

「美緒ちゃん頑張れ～。力抜いてね～」

　ひとつ前の試合が佳奈のクラスで、たまたま次が１-５だったのでそのまま美緒の応援に残っていたのだが、それが美緒にとっては誤算だった。

（嘘！　お姉ちゃんが見てる！）

　勝負を挑んだ手前、佳奈の前で絶対にヘマは出来ない。
　無意識に頬が熱くなり、バットを握る手が強張ってしまう。
　理由はわからないものの、佳奈にも美緒の緊張が増したのは伝わってきた。

「美緒ちゃん、どうしたんだろう？　余計にガチガチになったような……あ、打った！」
　
　それはなんとか当てた、といういわゆるポテンヒット。
　佳奈は嬉しそうに拍手しているが、美緒としては不本意も不本意だ！

（う～、お姉ちゃんの声で緊張しちゃった。ホームランにできる自信あったのに！）

　悔しい。最高に恰好いいところを見せるはずだったのに。
　１塁に留まってジト目で佳奈の方を見ると、次の試合の準備があるのかクラスメイトが佳奈のことを呼びに来た。佳奈はこちらに手を振って、皆といっしょに離れてゆく。

（少しほっとするわ。これで緊張せずに暴れられるわね！）

　そこからは美緒もリラックスしてランナーに専念。
　次のヒットで塁を進め、クラスの勝利に貢献できた。