【球技大会】クラス対抗、冬の陣！｜リアクション

【球技大会】クラス対抗、冬の陣！

◆女子ソフトボール～試合観戦、上の空

「ああ、もう！　完敗だったなあ」
　水上桜は先の試合結果に悔しがる。最後の方はヒットも打てて、もしかしたら１点くらい意趣返しできるかと期待を持った瞬間もあったが、終わってみれば１０対０。まあ、球技が苦手なりに頑張ったと思う。

「やっぱ強かったよー。気持ち切り替えてこー！」
「そうだね」

　友だちとドンマイ、と声を掛け合い、次の出番までいっしょに試合観戦をして過ごす。
　いまは２年生が試合をしている。
　これといって思い入れのある試合ではなく、桜はいつしか物思いに耽っていた。

（高校受験でピリピリ神経をとがらせてたのも、１５の春に桜を咲かせたのも、この前のことみたいなのに）

　あれから１年近く経っていて、１月の終わりには１６歳の誕生日を迎えるなんて信じられない。
　桜の家族は、桜が高校入学直前になって父親の仕事の関係で母と弟と一緒にニューヨークへ渡ってしまったおかげで桜花寮に入って初めての一人暮らしをすることになり、身の回りのことや家事をする大変さを知った。

（もう、本当にあっという間だったな。いろんなことがあったし、今じゃ生徒会の会計だし）

　カキーン！　と快音が響いた。
　ホームランだ。
　足の速いショートカットの女子が、黙々とダイヤモンドを回ってゆく。

「２組の椎井莉鳥さんだ。ダブってるらしいけど、かっこいいね」
「え？　誰って？」
「もー、桜ったら全然話聞いてないんだから」

　友達に突つかれて赤面する。
　観戦していた２年生の試合は、莉鳥のホームランが決勝打となって２－２が勝った。

「ほら、ぼーっとしてないで行くよ！」
「あ、うん」

　桜はチームメイトを追って駆け出す。次はまた、桜たちのクラスの試合だ。