【球技大会】クラス対抗、冬の陣！｜リアクション

【球技大会】クラス対抗、冬の陣！

◆女子バレーボール～２年生体育科の戦い・２

「制服と一緒に置いてきた清楚、平素の印象ごとぶち破る我ら一強─ってね」
「はは。出たね、しおぱんのヤカラ気質バリバリの特攻（ぶっこみ）根性」
「秘ぃもブッかまして頂戴、よッ！」

　志桜里と秘月の二枚壁は堅かった。片やバスケ、片や武術で鍛えた脚力でせり上がってゆく二人に、９組チームは苦戦を強いられた。だがバレーボールの面白いところはローテーションがあることだ。碧南が前衛に回ってくると俄然勢いを盛り返し、反撃する。
　一方、志桜里と秘月も後衛だからと言って手を抜くことはせず、脚力命でとにかく拾ってセッターに繋ぐ事だけに全力を尽くす。

「地へ跳び下りて身を摺り這ってる様は映えずとも、栄えある勝利の為ならノーカンよ！」

　こうして９組と１０組は、取っては取られ、取られては取り返すという一進一退の攻防を繰り広げていた。

「フレーフレー９組！　頑張れ頑張れ１０組！」

　白猫の着ぐるみはチアのすみっこに乱入し、もごもごした着ぐるみに出来る範囲の動きでゆるくチアのまねっこをしている。

　やがて、コート越しに碧南と志桜里・秘月が向かい合う場面が来た。

「卵城さんもう諦めたら？　１０センチの差は大きいでしょ？」
「羽生君こそ息が上がってきている。二枚相手にキツイんじゃないか？」

　相手のスパイクをブロックしたり掬い上げたりと機動力を活かしたプレイで敵を翻弄して来た秘月は、部活のチームメイトである碧南の僅かな変化を冷静に察知していた。

「さて私のスパイク受け止められるかな？」

　秘月は不敵に笑う。
　トスが上がった。
　秘月と碧南が同時に跳ぶ。秘月はスパイクの、碧南はブロックの体勢で。
　跳んだ高さは碧南のほうが高い。

（確実に止められる！）

　そう思った刹那、秘月の影からタイミングをずらして、ぐんと志桜里が伸びあがって来た。

（しまった！　卵城さんはフェイント！？）

　めいっぱい高い打点から志桜里の腕が怒号と共に振るわれる。

「ッしゃオラァ！」

　風圧が碧南の頬を打つ。次の刹那、ボールはコートの隅に叩き付けられていた。

「おおおーーーー！！！」

　応援席からも大きな歓声が上がる。そのすみっこで、白猫が連射でデジカメのシャッターを切っていた。

◇

「ゲームセット！　勝者は――１０組！」

　際どいゲームの末、勝利したのは志桜里と秘月を擁する１０組となった。

「秘ぃ！」
「志桜里君！」

　嬉しさのあまり秘月は志桜里に抱きつく。汗っぽい志桜里の身体を撫でまわすと、疲れが吹っ飛ぶほど気持ちよくて……。

「何をしているんです？」
「嬉しさの表現。決して個人的な欲求ではないんだよ？　うん」

　そんな二人をまたパシャリとした白猫は、最後にチアを称え拍手してどこぞへと退場していった。

◇

「あーあ、勝ちたかったな」

　負けた９組の碧南は汗を拭きながらとぼとぼと廊下を歩いていた。

「惜しかったね」
　
　声を掛けてきたのは鷹取洋二。片想いの相手だ。
　ドキドキする。汗臭くないだろうか？
　碧南はユニフォームの胸元をきゅっと抑えた。

「み、見てたんですか？」
「ああ。大活躍だったね。じゃあまた」
「は、はい……」

　切ない。
　交わした言葉は僅かだったが、碧南は長いこと洋二の背を見送っていた。