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<寝子島高校>
理不尽な校則や暴力に立ち向かおうと、レジスタンスが着々と組織されつつある寝子島高校。その首謀者は生徒会長、
屋敷野 梢
。梢は最後の仕上げとばかりにろっこん【胡蝶の詩】で放送室に舞い降りて留守番の放送委員を追い出すと、放送室を乗っ取った。
校舎、体育館、学校の全ての施設のスピーカーから梢の声が流れた。
「えー、皆さん聞こえますか? 生徒会長の屋敷野梢です。―――これよりレジスタンス運動を宣言します!」
突然の事に驚く生徒達。声は続く。
「我々は、独裁者に抵抗します。手始めに、講堂でゲリラライブを行います。歌で、音楽で、このふざけた現状を打破しようではありませんか!」
梢の顔には笑みが浮かんでいた。大丈夫、きっとうまくいく。だって、1人じゃない。もう仲間がいるのだから。
梢の声が、学校中に響き渡った。
「全責任は私にあります。皆さん、レジスタンス運動始動です!!」
学校中が色めき立った。放送に動揺しながらも校則を守ろうとする生徒もいれば、教室から飛び出し、講堂を目指す生徒もいる。それを制止する教師もいれば、傍観する教師もいる。講堂に、人が集まる。事態が動き始めた。
「よぉーし、始めようか!」
「はい!」
講堂のステージには2つの人影。
綴 柚枝
と
夢宮 瑠奈
だ。梢の声を合図に2人のステージが始まった。
打ち合わせはばっちりだった。共に音楽を志す者同士。瑠奈の柔らかい歌声が、柚枝の軽やかな伴奏に乗せ講堂を春風の如く包む。かと思えばロック調にアレンジしたクラシックが、柚枝のエレキヴァイオリンにより熱く演奏され、観客の心を掴む。講堂に流れ込む人数はどんどん増え、それに比例して生徒達のボルテージはうねりの如く高まっていった。
(よし、いいぞ。こっちに人が流れてる)
柚枝は演奏しながらも瑠奈に視線を送る。瑠奈も歌いながら分かってるというように、笑顔を返した。
(うん! これで他のレジスタンスの人達が動きやすくなるね)
ゲリラライブで注目を集め、他の同志達への注意を逸らす。それが柚枝達の考えた作戦だったのだ。しかし、この作戦には1つ留意点があった。
それは、間違いなく理事長勢力はこちらに来るという事。その考えは的中した。
「いてえっ!」
「はーい、理事長の許可無く生徒が集まる事は禁止です~。解散して下さい♪」
いつの間にいたのだろうか。観客の男子生徒の手を捻り上げているのは、セクシーなメイド服を着た
巫部 紫苑
だった。その横でぶんぶんと七三分けの
響 蒼留人
が竹刀を振り回す。
「そうだぞ! 男女が同じ場所にいるなんて、けしからん!」
講堂は静まりかえり、2人を中心にさあっと人が引く。その時、エレキヴァイオリンの美しい音色が講堂に響き渡った。
驚く生徒達がステージを見る。そこには柚枝と瑠奈がしっかりと前を見据えていた。
「俺は自由を愛するエンターテイナーだ! どんな暴力や理不尽なルールにだって、俺の音楽は縛られやしない!!」
キッと紫苑と蒼留人を睨み付けながら柚枝が言う。その横で瑠奈も強い微笑みを見せた。
「音楽は権力と戦います。今のこのフツウは、寝子島のフツウじゃない。だって、大好きな彼女が笑顔を忘れているもの」
(ののちゃん)
瑠奈は
野々 ののこ
のかつての笑顔を思い出す。瑠奈は観客に向かって大きく手を広げた。
「さあ、歌おう! このフツウをぶっ壊せ! あばれようぜ!」
「「「オーーーーッ!!!」」」
紫苑と蒼留人を呑み込むように、観客達が拳を突き上げる。瑠奈と柚枝の熱いステージが再び始まった。
「……仕方ありませんね。やはり元から絶たなくてはダメですか」
観客達の熱気に押し包まれていた紫苑と蒼留人。しかし紫苑は動揺せずに薄く笑みを浮かべると、群衆から抜け出したたたっとステージを一気に駆け上った。そして間髪入れずに瑠奈の背後を取る。
「こんにちは、アイドルさん♪」
紫苑は突然マイクを持つ瑠奈を抱きしめた。
「きゃっ!」
「女の子に手荒なマネするな!」
突然の乱入者に緊迫するステージ。しかし紫苑はマイペースにゆったりと笑う。
「ライブを中止するだけですよ」
そう言うと、紫苑は瑠奈のマイクを持ち、静かに両手を合わせる。するとマイクが機能しなくなってしまったではないか。紫苑は自身のろっこん【死音】を発動させたのだ。
驚く瑠奈と柚枝。そこに、新たな声がした。
「ライブをやめさせるには音を消せばいいからな!」
柚枝が振り向くと、アンプの傍に蒼留人が意気揚々と立っていた。
「お前の方は、これ抜けば音出ないんだろう?」
ピン! と蒼留人はエレキヴァイオリンに繋がっているケーブルをアンプから抜いてしまった。
「くそっ!」
柚枝は蒼留人に詰め寄ろうとしたが、反対に喉元に竹刀を突きつけられてしまった。にやりと笑う蒼留人。その時だった。
「竹刀は素人に振り回してはいけませーん。確保しまーす」
ひらりと現れた蝶。それは蒼留人の背後に舞うと、突然梢が姿を現す。彼女は躊躇なくどん、と蒼留人を押し倒し、後ろ手に手錠をかけた。
「あら、生徒会長」
紫苑が両手を離し、びっくりしたようにパチリと瞬きする。梢はじたじた暴れている蒼留人を押さえながら、にっこり笑った。
「どうもですー、書記の巫部さん。このままいけば私とタイマンになりますが……どうします?」
梢の言葉に紫苑はんーと唇に指を当て考える。そして可愛らしく両手を上げた。
「やめておきます。わたしのろっこんはタイマン向きではありませんし、会長の方が戦い慣れているようですから♪」
こうして紫苑と蒼留人は別室に確保された。
その後も風紀委員や教師やらが集まって来たが、元々観客は反抗心が強い生徒達。梢の指示の元一丸となって抵抗し、逆に彼らを別室に確保する事ができた。
「お二人とも、お疲れ様でしたー。もう当初の目的は達したと思うのですが……この後はどうします?」
ステージを中断し、観客達と一緒に抵抗していた瑠奈と柚枝。梢に問われて2人は顔を見合わせたが、すぐに大きくうんと頷いた。
「ステージ続けるね。この寝子島を楽しいことでいっぱいにしたいから」
「おう! 音楽で皆を楽しく幸せにする。それが俺の欲望だ!」
そう言うと2人はステージに駆け上がり、高く拳を突き上げる。わあっと大歓声が講堂を包んだ。
―――時を少し戻そう。
梢のレジスタンス宣言で、各有志が同時に動き始めた。
「開始だよ、庚くん!」
凶暴なヒグマと化した
吉田 熊吉
を見失わないように追っていた
志波 武道
と
如月 庚
。校舎に響いた梢の声に、武道は隣の庚を見る。庚はしっかりと頷いた。
「了解です、志波先輩。荒事には荒事を。俺が先に出ます」
「熊センセ、尋常じゃなくなってるけど、大丈夫?」
「あのHP削らないとどうしようもないでしょう。先輩もほぼ同時に出るんだから、気を付けて下さい」
「ん、お互いにね!」
2人は拳を突き合わせる。そして庚が廊下を走り出した。
「くまきちぃぃー!」
叫びながら飛び上がり拳を熊吉の後頭部に叩き込んだ。
(とった!)
しかし熊吉は倒れるどころか振り返りぎろりと庚を睨んだ。
(ヤバい)
庚が思った瞬間には、その腕を掴まれぶんと体ごと振り回される。そして壁に叩き付けられた。
「ぐはっ!」
「庚くん!」
駆け寄ろうとする武道。それを手で制しながら庚は何とか起き上がった。
(志波先輩が倒れちゃ困る。切り札なんだから)
庚は向かってくる熊吉に動揺することなく、集中しながら額の傷痕を指でなぞった。ろっこん【青にして蒼穹】だ。
(絶神でおかしくなってる奴にはこれくらいしないとどうしようもねぇ)
「ガーーーーーッ!!!!」
熊吉が叫びながら突っ込んでくる。その振り回す腕を避けもせず、庚は神魂の宿った右腕を熊吉の腹に叩き込んだ!
「グワァーーッ!」
「がはっ!」
庚の一撃は見事にヒットし、熊吉は片膝をつく。しかし庚も熊吉の鋼鉄の腕を脇腹に喰らい、ごろごろと地面に転がり落ちて動かなくなった。
「庚くん!」
武道は一瞬体を浮かしかけたが、ぐっと歯を食いしばった。
(今は、熊センセを止めないと)
ルールに縛られたいという欲は未だ俺の中にある。けれど、それ以上に。俺は仲間や寝子島が大事なんだ。
「うおおおぉぉ!」
武道はろっこん【スイ・マー】をその手に乗せ、走り出した。熊吉も最後の力を振り絞り、武道に掴みかかる。
「―――っ!」
腕を掴まれた瞬間、武道の体に激痛が走った。骨が折れたかもしれない。けれど、懐には入れた。これも、庚が熊吉を弱らせたからだろう。
(ありがとう。俺もやれることをやるよ)
武道は冷静に、でも全力で熊吉の下肢をろっこんを乗せた手刀で突く。途端に熊吉が地面に崩れ落ちた。それでももがく熊吉の両腕に武道は思い切り手刀を突き、ようやく熊吉は動かなくなった。
(まだ、終わりじゃない)
武道は自身の痛みに耐えながらもポケットから天界の鏡を取り出し、転がったまま唸っている熊吉を映す。そこには―――尻尾は映っていなかった。
「ふぅ~」
緊張の糸が切れ、武道はずるずると床に座り込む。しかしすぐに思い出した。
「庚くん!」
(怪我してるだろうから、ろっこんで麻酔してやらないと!)
自分の痛みは後回しに、イテテと武道は立ち上がった。
理事長室前。ここも梢の放送を合図に突入作戦を開始した。
「よしよし、周りも手薄になったし、思いっきりやっちゃうよー!」
雨寺 凛
が自身の右耳に触れ、ろっこん【加虐的虚偽声楽】を発動した。爆音が凛から発し、それが衝撃波となって理事長室のドアを吹っ飛ばした。
「きゃあっ!」
突然の事に
桜栄 あずさ
は思わず叫ぶ。そこに
佐藤 英二
が仁王立ちになった。
「こんなブラックな校則を量産するなんて、自由主義の桜栄理事長らしくないです! あなたは誰ですか? もしかすると偽物……巷で噂の絶神では?」
ピシャリと英二があずさに物申す。しかし内心ではバクバクだった。
(ビンゴで尻尾が出てきたら……どうしよう?)
それでも何とかなる、と英二は思っていた。仲間と一緒にいるから。そして、出なくてもいいのだ。自分の役割はそもそも、理事長の注意を引きつけるためなのだから。
「はっ?! 何なのあんた達は! 全員お仕置きするわよ!」
あずさは取り巻きの紫苑や蒼留人達を探すが、出てこない。彼らや主立った風紀委員は皆講堂に行ってしまったのだ。
「さ、今デース! 雀さん、理事長印はどこデースカ?」
英二が理事長と対峙している隙に、
深縹 露草
と、ろっこん【鳥の囀り】で雀になっている
御巫 時子
が理事長室に入り込んだ。時子は執務室の引き出しをコンコン、と嘴でつつく。彼女はあずさが執務している様子も窓からずっと観察していたのだ。
「なるほど、ここなのデースネ?」
「ちょっと、何するの!」
露草の不穏な行動に気付いたあずさが止めにかかる。しかし露草は彼女の行動も織り込み済みだった。
露草はパッと懐からメモ帳とペンを取り出し、さらさらと即興の紋章を書くと、高らかに唱え、同時に念じた。
「理事長の瞼よ……光れ!」
ろっこん【我が紋章は、光り輝く道標】が発動し、あずさがきゃあと目を押さえた。その押さえた指の間から光が漏れる。あずさの目から光が発しているのだ。
「何これ眩しい……っ」
視界を奪われよろけるあずさ。そこに凛の声が鋭く飛んだ。
「仕上げいくよー! みんな気を付けて!」
その合図にパッと英二と露草は耳を押さえて床に伏せ、雀の時子は慌てて窓の外に避難する。同時に凛のろっこんが再び発動した。
爆音と共に衝撃波がもろにあずさにぶちあたる。あずさはきゅうと床に伸びてしまった。
「尻尾出た?!」
「……ううん、ないね」
「理事長は絶神ではなかったのでしょうか……」
伸びたあずさを囲む凛と英二と時子。その中、露草は嬉々として意識のないあずさにペンを握らせ、何かを書いていた。
「何をしてるんですか?」
不思議に思った時子が覗き込む。露草がにやりと笑った。
「ブラック校則を全部破棄する旨の文章デース。これに理事長印を押せば完成デース!」
「え、でも理事長意識ないから、それねつ造では?」
英二が心配そうに言う。横でカラカラと凛が笑った。
「こんだけ勝手に校則を生み出されたんだから、1個くらいこっちが勝手に作ったって構わないよ。そもそも、もうブラック校則に従う気はないしね!」
「そうデース。はい、これで完成……デース!」
『寝子高の校則は全部破棄! 今後一切追加なし!』という文章の後に、ポンと理事長印が押される。4人が顔を見合わせると、あははと笑った。
ウォルター・B
が授業をしている教室は、
丹羽 紅葉
と
倉前 七瀬
が反旗を翻し、一触即発の様相を呈していた。そこに、梢の放送が響き渡った。
「……ふ~ん」
ざわざわと騒がしくなる教室。ウォルターは青い瞳を冷たく輝かせながらチョークを弄んでいた。
「で、君達はどうするの?」
「……いつもの先生に戻って欲しいです」
七瀬がウォルターを真剣な瞳で見つめながら言う。紅葉の静かな声がそれに続いた。
「あなたは誰です? ……あなたは私の敬愛するウォルター先生ではないわ」
紅葉は1歩前に進み、コスメポーチからコンパクトを取り出し、ウォルターに向けた。
「鏡は妖魔の正体を映すもの。あなたの姿はどう映るかしら」
その瞬間、パンッとコンパクトが吹っ飛びながら粉々に砕けた。
「きゃっ」
「そんな物で僕が映る訳ないだろう。もういいよ。授業受けない奴はみんな寝てればぁ?」
ばっとウォルターは両手の全部の指にチョークを挟む。それを躊躇なく七瀬と紅葉に向かって投げつけた。
「先輩危ない!」
島崎 嘉織
が思わず叫ぶ。そこに1人の少女が教室に乱入した。
「ここはあたしにまかせなさーい!」
雨崎 楓香
はすかさずろっこん【falling slowly】を発動する。ふわっとチョークが止まり、ぱらぱらと床に落ちた。
「レジスタンスの有志、生徒会副会長の雨崎楓香です! どうしてウォルター先生こんなこと……きゃあ!」
再びウォルターの魔弾が楓香を襲う。楓香は寸前で何とか止めたが、思わずしゃがみ込んでしまった。
「どうしてって君達がいうこときかないからでしょぉ?」
美しい顔に笑みを浮かべるウォルター。そこに凜とした声が響いた。
「いいや違う……キミはウォルター先生じゃない」
皆が声の方を見る。嘉織が、天界の鏡をウォルターに向け立っていた。
「この鏡でないとダメだったんだ……でも、先輩や皆さんのおかげでキミの正体を暴くことができた」
「ウォルター先生に尻尾が生えた!」
パトリシア・プロウライト
が叫ぶ。そう、天界の鏡に映った姿そのままに、ウォルターにふさふさの尻尾が出現したのだ。
「クソッ」
ウォルターはあとずさりしながらすかさず嘉織に魔弾を飛ばす。しかしパトリシアがペペン! とハリセンではたき落とした。
「本来はこの目的で持って来たんですー! このハリセンがダメになるのが先か、先生を捕まえるのが先か、勝負です!」
ビシリ、とパトリシアがハリセンをウォルターに向ける。そこに鋭い声が飛んだ。
「ウォルター先生じゃなきゃもう手加減なんて必要ないですね!」
七瀬がウォルターに向かい走り出した。すぐに雨あられのように魔弾が七瀬に浴びせられる。分厚い本で何とかガードする七瀬。しかしふっと魔弾が弱まった。
「先輩、あたしがガードします!」
「パティも頑張っちゃいます! だいぶハリセン痛んできたけど!」
楓香とパトリシアが魔弾の動きを弱めてくれていたのだ。紅葉も嘉織と共にコスメポーチでガードしながら戦っている。
七瀬に力が湧き上がる。みんな、ウォルター先生が大好きなんです。だからこそ、これは絶対に許せないんですよ。
七瀬は自分に当たる魔弾に怯むことなく、ウォルターに突進する。そしてその襟を掴んで言った。
「いつもの先生じゃなきゃ、うちはイヤです……ウォルター先生を返せ!」
―――ゴン! 渾身の頭突きをウォルターに喰らわせた。
「うう、これ自分も痛かです……」
目から星を飛ばしふらつく七瀬。しかしウォルターも思わず額を押さえしゃがみ込んだ。
「今です!」
紅葉と嘉織が飛び出した。
「先輩!」
「ええ。敬愛するウォルター先生の姿でこんな酷いこと……絶対に許さないんだから!」
2人は一緒に尻尾を掴むと、思い切り引き抜く。スポン! と尻尾は抜け、すうっとウォルターの姿は消えてしまった。
「やったー!」
「イエーイ!」
「良かった……」
1年生’sがお互いの健闘を称える。七瀬はしゅんとした尻尾を持ち放心している紅葉に近付いた。
七瀬は紅葉の握っている尻尾に軽くパンチを喰らわすと、にこやかに紅葉に手を差し出した。
「お疲れ様でした」
「……お互いにね」
紅葉もふふと笑みを返す。2人はしっかりと握手を交わした。
屋上では
サキリ・デイジーカッター
がテオと対峙していた。じり……と後ろに
恵御納 夏朝
と
愛猫 萌々子
をかばいながら、2人に小さく言った。
「ちょっとここは荒れると思うから、校舎の中に避難してくれるかな?」
「……うん、分かった。気を付けてね、サキリ君」
夏朝はサキリの触れたら切れそうな雰囲気を感じ、すぐに承諾した。萌々子もこくりと声もなく頷く。
「ありがとう」
サキリは柔らかく微笑むと、すっとテオに向き合った。もうその瞳にはテオ以外映っていない。2人は静かに校舎に入った。
「さ、始めようかテオ。君が野々を裏切るなら、僕は君に『反抗』するよ」
そう言うとサキリは素早く走り出した。
フツウを守る使命を忘れている訳ではない。
でも、狂気なんて誰しも常に心の内にあるものだ。
普段の僕は優しいフリをしているだけ。
テオ。今まで君とは協力してきたけど。
正直、戦えることがちょっと嬉しいよ。
サキリは走りながら隠しナイフをテオに飛ばす。ひらりとそれを避けるテオ。しかしもうサキリは自分の間合いに入っていた。
水平にマチェットをテオに向かい切りつける。しかしこの無骨な刀は宙を切った。
『うるさい』
体を空中でしならせ、テオは落下しながらも鋭い牙と爪をサキリに向ける。
(まずい)
瞬間に神の殺気を感じたサキリはろっこん【斬空赤刃】を発動した。忽然とサキリの姿が消え、テオは攻撃を空振らせたまま着地した。
『ふん、それは神の力だぞ』
サキリの姿は数十メートル離れた所にあった。瞬間移動のろっこんなのだ。離れたサキリに冷ややかな視線を送るテオ。しかしサキリは動じない。
「ああ。だから寝子島のため、野々のために使ってる。それに、これを使いこなせるよう努力してるのは……僕だ」
そういうとサキリの姿がまた消え、すぐにテオの傍に現れる。それをテオはすかさず避けたが、サキリの姿がまた消え、今度はテオの正面に現れた。
(もらった!)
テオの足めがけてナイフをふるうサキリ。しかしテオの声が響いた。
『愚かな……神の力が使えるのが己だけだと思ったか』
瞬間。サキリの周囲の風景が変わった。
「ここはどこだ……校庭?!?」
ナイフを手に、サキリは校庭に立っていたのだ。僕のろっこんか? いや、発動した覚えはないし、そもそも僕のろっこんはこんな距離を移動できない!
サキリは呆然とつい先程までテオと戦っていた屋上を見上げる。テオが屋上のへりからこちらを見ている姿が小さく見えた。
『くそ……世界を切り分けたと思ったのに……うまく力が制御できん』
いまいましそうに呟く声がサキリに流れ込む。
『まあいい。早くあいつを始末しよう』
「待て、テオ!」
地上から叫ぶサキリ。屋上からテオの姿が消えた。
「はい、ののこちゃんに謝って下さい」
「……ごめんなさい……」
「痛いです~」
「可哀想……ののこ先輩、こぶになってます」
中庭では、
桜庭 円
が仁王立ちになって正座をする
御剣 刀
を叱り、ぴえーんと泣く
野々 ののこ
を
嘉渡洲 稀跡
がよしよししていた。
「ののこちゃんが絶神とはまあ考えたねぇ」
「だって! 1番怪しくない奴が怪しいってじっちゃんが言ってた!」
「じっちゃん巻き込まない」
ピシャリと円に言われ、刀はしゅんと頭を垂れた。
ろっこん【加速】で一気にののこを襲った刀。しかし振り下ろす直前までやっぱりののこはののこで。―――そして実は刀の持っていた日本刀は『刃引き刀』だったのだ。
ののこに変化が出ず寸前で力を弱めた刀だったが、ののこには見事なこぶができてしまったのだ。勿論その後円がミラから借りた天界の鏡でののこを映したが、そこに尻尾は映っていなかった。
「本当にもう……ののこちゃんも災難だねぇ」
円もののこを慰めようと彼女に近付く。その時だった。
『―――見つけたぞ』
3人の頭の中にテオの声が響いた。咄嗟に円はののこと稀跡を抱きしめる。
(ボクが盾にならなきゃ!)
しかし勢いつきすぎ、3人はそのまま地面にどさりと倒れてしまった。そのすぐ上の空間をテオの鋭い爪が切り裂いた。
「抜刀!」
刀が1歩踏みだし片膝をついたまま下から上へ鋭い一撃をテオに浴びせる。しかしテオはくるんと身を返すと、無傷で地面に着地した。
「みんな、怪我はない?!」
円は地面に倒れたままののこと稀跡に問いかける。2人はこくこくと頷いた。
(良かった……)
心臓をばくばくさせながらもほおっと円は息をついた。倒れ込んでなければ誰かがやられていた。円のろっこん【ブレイブハート】が発動し、円達は運良く倒れたのだ。
「こんのクソネコ! やっぱ乱心してんな!!」
刀は素早く立ち上がり、ののこ達とテオの間に割って入り、刀を構えた。
『乱心……? 終わらせるだけだ。零神がいなくなれば、全て終わる』
今まで1度も聞いた事の無い、テオのすうっと冷えた声。それは神の冷酷な一面の様で、円と稀跡はののこを守るようにしっかりと抱きしめた。
刀はテオに臆することなく彼を睨み付けた。
「ののこを護るという点ではすげーと思ってたけど、アッサリと絶神の影響受けまくりやがって……気合い入れ直してやる!」
刀が走り込み一気に間合いを詰め、斬りかかる。そこに声が飛んだ。
「御剣無理だ! 一旦離れろ!」
「?!」
目を見開く刀。その瞬間には、彼の周囲の風景が変わっていた。
「な……ここは……食堂か?!?」
刀は刃引きの日本刀を手に、ガランとした食堂に立ち尽くしていた。
(何だ、あのクソネコなんなんだ!)
ろっこんを使い、すぐに中庭に戻った刀。そこではサキリがテオと対峙していた。
「さすが早いな」
「デイジーカッターか! さっきのは一体なんなんだ!」
「分からないが、テオの力のようだ。そこまで遠くはないが、別の空間に飛ばされる。多分世界の切り分けがうまくいってないみたいだ」
「うまくいってないって……」
別空間に飛ばされるだけでも十分すぎる程やっかいだろう。そんな刀の気持ちを汲んだのか、サキリが苦笑した。
「何とかするよ。御剣は野々を頼む」
「お、おい!」
刀の声を背に、サキリはもう跳んでいた。ナイフを投げると同時にテオの背後に瞬間移動。そこを避けるテオにマチェットを誘い込むように振るう。
まるで舞踊をみているようだ。しかし、刀はサキリ達に向かって駆け出していた。
「ののこを護るって事は……俺も戦うしかないだろう?! だって」
ろっこんで加速する。もう、テオの前にサキリの姿はなかったからだ。
(あいつが戻ってくるまでは結局俺がテオを食い止めるしかないだろうが! ……けど)
俺のろっこんはスピードはピカ1だが、持続性と距離はそこまでではない。そう何度もろっこんを使えば自ずと。
移動しながら刀はテオに斬りかかる。最中、テオと目が合った。
(やばい……早く戻れよ、デイジーカッター!)
―――刀は、一人昇降口で刀を振り下ろしていた。
円は、じっとテオ達の戦闘を見ていた。
まるで手品を見ているようだった。サキリと刀が入れ替わり立ち替わりテオと戦っているのだ。
恐らく寸前でその場から飛ばされているのだろう。ろっこんで戦っているから互角には見えるが。
(このまま続けば明らかにテオの方が有利だよね)
円は眉を顰めた。要は神の力で戦っているのだ。もれいびと神そのものが戦えば、力に対するエネルギー量は。
(刀くん達はいつか枯渇する)
きっかけが欲しい。円は決断した。
円は思っていたのだ。自分のろっこん【ブレイブハート】は、もっと前から発動していたのではないかと。―――恐らく、ののこと一緒にこの欲望の島に切り離された時から。
ののこの傍に刀がいた。もうこの事自体が既にラッキーな事だったのだ。
(それなら、ボクも自分と仲間と力を信じて行動するっきゃないよね、もれいびとして)
円はキッと顔を上げると、戦闘中のテオ達に向かって走り出した。
「テオーーーーー!!!」
円はサキリとテオの間に勢いよく飛び込んだ。
「桜庭?!」
サキリの手が一瞬止まる。そこに刀が戻ってきた。
「桜庭なら多分大丈夫だ! それより、この後だデイジーカッター!」
その後の事は一瞬だった。しかし円の思考はゆっくりと駆け巡っていた。
テオと目が合った。牙が見える。あれに首を噛まれたら痛いだろうな。先に爪で目を潰されるかもしれない。十分考えられる事だ。テオが攻撃してくる事は。でも。
―――きっと大丈夫。ボクのろっこんは絶好調なはずだ。
円は叫びながら本気でテオに殴りかかった。
「後は頼むよ、2人共!」
瞬間、円の姿が消えた。
「俺が出る!」
間髪入れずに刀が刃引き刀を横になぎ払う。テオの後ろ足に当たりテオのバランスが崩れる。と、刀の姿が消えた。しかしその時には既に。
「遅い!」
サキリが瞬間移動でテオのすぐ上に出ていた。そのままマチェットの束を思い切りテオの頭に振り下ろす。
「ニ゛ャッ?!」
潰れた叫びと共にテオは四肢を一瞬ピンと伸ばすと、すぐに力を失い地面に叩き付けられ伸びてしまった。
「は……終わった……」
テオの横にペタンと座るサキリ。そこにすぐに飛ばされた刀が戻ってきた。
「大丈夫か?!」
「ああ。一瞬タガが外れて斬りそうになったけどね」
「桜庭には感謝だな」
刀の言葉にサキリも頷いた。円は戦闘を見ていて気が付いたのだ。テオが1人ずつしか空間移動をさせられない事を。しかし2人が畳みかけるように攻撃するには、もう1人いる。その役を円は買って出たのだった。自分のろっこんを信じて。
「で、桜庭は?」
サキリの問いかけに刀はふるふると首を振る。そこに稀跡が駆けてきた。
「あそこです……木の上! 怪我はないようです」
稀跡が指さす。そこには高い木があり、その枝に座りおーいと円が両手を振っていた。
「みんな、お疲れ様ー!」
笑顔で親指を立てる円。サキリ、刀、稀跡も笑顔で親指を立てる。ののこは不思議そうな顔でそんな4人を見ていた。
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1000人
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シナリオガイド公開日
2020年04月11日
参加申し込みの期限
2020年04月18日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年04月18日 11時00分
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