携帯戦記カプセルギア　第五話「対決！シルエット・オブ・ギア」｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　第五話「対決！シルエット・オブ・ギア」

【敵を知り己を知れば】

　猫屋敷姫さんはシルエットの存在にさほど驚いてはいませんでした。
（まあ、カプギアて一品モノてゆ訳でもないから驚きはないです。そもナデシコの影はいないようですが）
　というわけで、姫さんは本物とシルエットとの戦いを邪魔するチェスの駒を排除する役割を買って出ることにしました。
　チェスの駒は数が少なく、姫さんが暗殺してまわることで、多くのギアマスターはチェスの駒による妨害を気にせずに戦うことができていました。
　そうして、ある程度駒の数を減らした姫さんは、次に小学生の二宮風太くんの援護に入ることにしました。
「に、にせものなんかに負けるもんかっ！　いけ、わんこくん1号！」
　背負ったロケットで突撃し、シルエットに果敢に剣で切り込むわんこくん1号。
　そんなわんこくん1号を、シルエットは正面からロケット突撃で迎え撃ちます。
　最小限の動きで風太くんのわんこくん1号の剣をかわし、すれ違いざまに自身の剣で反撃。
　かと思えば、すぐさま向きを変えて背後を取り、連続攻撃でみるみるうちに本物のHPを減らしていきます。
「わーん！　このわんこくん、ぼくのと動きが違うー！！」
　ほとんどオトナと子供の勝負に、ギャン泣きする風太くん。
（……いや、あのわんこくん1号、ちょっと強すぎないですか？）
　こっそりと邪魔なチェスの駒を排除しつつ、様子を窺っていた姫さんは心の中で呟きます。
（あれを小学生に倒せというのも酷だと思うのですが如何に？）
　そう思いつつ、姫さんは風太くんに駆け寄って、年長者としてアドバイスをしてみます。
「落ち着くのです。あれは風太くんと同じギアです。つまり、風太くんも同じようにやれば、同じように戦えるはずですよ。あと数的不利をなくすために、ザコから蹴散らすのも効果的です」
「……え？　そ、そうか！　よーし、ぼく頑張る！」
　やる気を取り戻し、相手の動きをよく見てトレースしようとする風太くん。
　その素直さと元気さは、年上の目から見ても、大変に素晴らしいものでした。
　というわけで、姫さんはしばらく余分なチェスの駒を排除しつつ、成り行きを見守ることにします。

　同じ頃、仙藤蒼さんは、他の人とは違った驚きを感じていました。

（へえ。Diablo Azulって、こんなふうに戦うんだ）

　一対のキャノンを両肩に背負ったギア――Diablo Azul。
　そのシルエットの動きを見ていると、自分の戦いを第三者の視点から眺めているような感覚になり、それはとても新鮮なものに感じました。
（自分が動かしながら見るのと、自分以外の誰かが動かしているのを見るのとで、随分と違うものね）
　そんなことを考えつつ、迫りくるシルエットを両肩の「240mm中距離用無反動キャノン砲」で狙い撃つ蒼さん。
　シルエットは、蒼さんの砲撃を回避しつつ、同じ「240mm中距離用無反動キャノン砲」で反撃してきます。
　どうやら、徐々に間合いを詰めながら、レーザーブレードによる一撃必殺を狙っているようです。
（……ちょっと性能上がってるわね。まあ、これもゲームとかだとお約束よね）
　仲間が敵になったら、能力が底上げされているというのはよくある話。
　ただ、目の前に影との戦いには、それとは別の問題がありました。
（こっちも相手の性能がわかってるってことは、相手もこっちの性能や然るべき戦い方をわかってるってことよね）
　こういうときは、知略を絞って攻略すべきですが、今日に限って蒼さんは上手く考えがまとまりませんでした。
　なまじ自分自身が強いだけに、蒼さんは思わぬ苦戦を強いられることになります。