携帯戦記カプセルギア　第五話「対決！シルエット・オブ・ギア」｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　第五話「対決！シルエット・オブ・ギア」

【影ヲ見テ我ヲ思フ】

「洋子。帽子は預けておく。早く安全な場所へ」
　鳳城翔くんは、ギアを持たない海堂洋子ちゃんに帽子を預けつつ、後方へ避難を促します。
「……ああ。キミも気をつけたまえ。おそらく、あれはただ姿形をそのまま模倣しただけではないはずだ」
　後退する洋子ちゃんの背中を見送り、それから視線を正面の黒いギアに戻します。
「あの時と姿は似ているのに今は敵として、か。分かってるが……嫌な気持ちだ」
　ハロウィンの出来事を思い出し、少し苦い表情をしながら翔くんは目を閉じてリット――セイクビリットの声に耳を傾けます。
『SHO、影のボナパルト２は射程距離が長い故に機動性に優れている。本物以上となると……どう仕掛けるかが鍵となるだろう』
　心の中で聞こえた相棒の声に、小さく頷くと翔くんはすぐ近くですでにバトルを開始している牧雪人くんに声をかけます。
「MAKIYUKI、連携を頼めるか？」
　雪人くんとは、これまでに何度も共に戦ってきた間柄。
　ともに掴んだ勝利もあれば、敗北の苦渋を舐めた経験もありました。
　そうして共有した時間こそがシルエットを破る最大の武器だと、翔くんは考えたのです。
　そして、それは数少ない言葉からも充分に伝わったようでした。
「望むところ。で、僕は何をすればいいわけ？」
　視線は正面から逸らさず横顔で問い返す雪人くんに、翔くんは自身の考えを伝えます。

　柚瀬玲音さんはその少し離れたところで、相棒のサニィのシルエットと相対していました。
（いつかボクはボク自身の影と戦った記憶があるんだよ）
　今、玲音さんの影は彼女の影の中にいます。
　自身の影と思いっきりぶつかりあい、そして理解し合った経験を持つ玲音さん。
　そんな玲音さんとって、サニィの影の出現はそれほど驚くべきことではありませんでした。
　玲音さんは、静かにA.I.C.O.を立ち上げて、サニィをもう一人のサニィと向き合わせます。
　サニィは言葉こそ発しませんが、すでに目の前の影に対して、やるべきことを理解しているように玲音さんは感じました。
（そうだよね、サニィ。きっと思いっきり戦えば、ボクとあの子のように分かり合えるはずなんだよ！）
　今にも駆け出したくなる気持ちをグッと押さえて、玲音さんとサニィはもう一人のサニィの動きをじっと窺います。

（この戦い、きっと先に動いた方が負けなんだよ）
　だから、玲音さんは周囲に流されず、それこそ原作の連載が追いついていないTVアニメのように睨み合いの時間を延々と続けていきます。

　一方、翔くんと雪人くんは、すでに作戦を確認し合い、影との交戦に突入していました。
「行くぞ、リット」
『ああ。果て無き空まで羽ばたいてみせよう』
　翔くんの指示に従い、セイクビリットは鳳凰の翼をはためかせ、自身の影へ左腕の鍵爪を閃かせます。
　影のセイクビリットは大きく飛翔してそれを回避。
　右腕でステルスを発動して身を隠そうとします。
　が、そこまでは読めていました。

「今だ、尻尾で薙ぎ払え！」

　鋭い指示に従って、セイクビリットの絢爛な尻尾が影の右腕を捉えます。
　結果、ダメージこそ大きくありませんが、上手くステルスの発動を阻止することに成功しました。

「やるジャン、SHO。僕も負けてはいられないね」

　そう言つつ、雪人くんもボナパルト2の狙いを影の足元に集中。
　その場に釘づけにすることで、翔くんのセイクビリットとその影の戦いを邪魔させません。
　ちなみに、玲音さんとサニィはまだ睨み合っています。
　玲音さんとサリィの影との我慢比べはまだ始まったばかりのようでした。