その日、風の原公園では、老舗玩具メーカー「愛光堂」主催によるカプセルギアのイベントが行われていました。
「行くぞ、メイジンダー△X(トライエックス)! ダブル100倍ロケットナックルだ!」
公園に仮設されたステージでは、MEIJINの操るメイジンダー△Xが練習用のコンテナボックスに向けて両腕のロケットナックルを同時発射!
複数のコンテナを貫いて、ド派手な爆発エフェクトを巻き起こすデモンストレーションに子供達から「わぁっ!」と大きな歓声が上がります。
カプセルギアは、いまや多くの子供達の間で話題の超人気カプセルトイとなりました。
それもそのはず。
一体100円という安価なカプセルトイであるにもかかわらず、カプセルギアはスマホにインストールした「A.I.C.O.」ひとつでアニメさながら自由にコントロールすることできる超ハイテク玩具だったのです。
しかし、そのあまりのハイテクさゆえに、よからぬことを考えるオトナ達が現れました。
それが海外に本社を持つ超巨大企業
『ユグドラシル』。
ユグドラシルは、これまでにカプセルギアのワクチンプログラムを無効化するパッチを配布したり、プロのゲーマーを雇ってカプセルギアの評判を貶めようとしたり、幾度となく様々な事件を引き起こしてきました。
しかし、それらの悪しき陰謀は、毎回、カプセルギアをひいてはアソビを愛するコドモ達――ギアマスター達の手によって未然に食い止められてきたのです。
そうした子供達の人知れぬ努力もあって、今回のイベントはいつにない大盛況をもって迎えられたわけなのですが――。
「……僕には、まだ『あいつら』が諦めたとは思えないんだけどネ」
見物に訪れた子供達の隅っこにいた
牧 雪人くんは、いまも能面のような無表情にほんの少しだけ浮かない色を浮かべていました。
「ぼくもだ。というより、そんな能天気なことを考えているのは、コドモ達の現実が見えていないオトナ達だけだろう。それにユグドラシルだけじゃない。
『プロフェッサーK』の言動も気になる……」
雪人くんの隣に座っていた女の子――海堂 洋子ちゃんがぽつりと口にしたプロフェッサーKというのは、カプセルギアの開発者の一人と言われている謎の人物。
これまで謎のベールに包まれていたKでしたが、つい先日、子供達に「テスト」と称し大規模なギアバトルを仕掛けてきたことで、新たな事実も判明しました。
カプセルギアの開発者であったはずのKは、なぜか競合にあたるはずの「ユグドラシル」と一時期行動を共にしており、しかし現在はユグドラシルとは何の関係もないとも言うのです。
「……いったい何を企んでいるのか、次こそはぼく自身が本人から問いただしてやる」
洋子ちゃんも真剣な表情でそう呟きます。
「それで、無理をしてイベントにやってきたのか……。気持ちはわかるが、あまり無茶はするな」
洋子ちゃんのそのまた隣にいた
鳳城 翔くんが、いつかのときの同じようにひきこもりの少女の頭に軽く自分の帽子を被せてあげます。
「MAKIYUKI、そのプロフェッサーK――洋子の叔父さんはまた『テスト』をするようなことを言っていたんだな?」
それから、翔くんは雪人くんに真剣な表情で訊ねます。
「まあね。でも、何時とは言ってなかった。それは一ヶ月先かもしれないし、もしかしたら明日、あるいは……」
と、雪人くんがそこまで言ったときでした。
『――つまらない茶番だな』
公園のステージに設置されたスピーカーから、ボイスエフェクトのかけられた冷たい声が響きました。
「……っ」
雪人くんと洋子ちゃんは同時に息を詰まらせました。
その声は間違いなく、あのときの「K」の声そのものでした。
「むむ! 誰だ……!? ギアマスターなら、隠れてないで、姿を見せろ!」
ステージの上ではMEIJINが大仰な身振りと手振りで声の主を探してあたりを見まわします。
どうやらMEIJINはこれもサプライズの演出か何かだと思っているようで、それはステージを見ていた子供達も同じようでした。
そして、そんな公園の様子を知ってか知らずか――。
『――姿を見せろ、か。いいだろう。その目でよく見て、存分に驚くといい』
と、Kが応じた次の瞬間、
「「「MEIJIN、後ろー!!!」」」
子供達の大きな声援が公園に響きました。
それにハッと後ろを振り向いたMEIJINの目の前に現れたのは――
「……黒いメイジンダー!?」
MEIJINのメイジンダー△Xそっくりの、けれど、カラーリングが全身真っ黒のカプセルギアが冷たい目で本物のメイジンダー△Xを見つめていました。
『全ての物事には光と影の側面がある。ギアもまた然り』
滔々と語る「K」の言葉によれば、黒いメイジンダーの名称は
シルエット・オブ・メイジンダー。
本物のメイジンダーを光のメイジンダーとするなら、その影にあたるギア。
それが、黒いメイジンダーの正体なのだ、ということでした
「……まるで本当にただのヒーローショーの続きを見ているような気分だよ」
呆れたように呟く洋子ちゃん。
と、そこで、洋子ちゃんは隣にいる翔くんがステージの外のある場所をじっと見つめていることに気づきました。
「……MAKIYUKI、アンタ、最近ボナパルト2のカラーリングを変えたのか?」
静かな緊張を滲ませた声で、翔くんが視線はそのままに雪人くんに問いかけます。
「……? いや、変えてないケド――」
と、そこまで言ってから、雪人くんは翔くんの視線の先にいる「それ」に気づいて目を見開きました。
「あれは……」
そこにいたのは、ステージにいる黒いメイジンダーと同様、ボナパルト2とそっくりの姿形をした――それでいてどこか禍々しいオーラを放つ、黒い影のようなカプセルギアでした。
『君達は随分と自分の腕前に自信を持っているようだ。だが、それはギアが優れているだけであって、必ずしも君達自身が優れているわけではない。そうは思わないかね?』
次の瞬間、黒いメイジンダーとボナパルトは本物のメイジンダーとボナパルト2に向かって静かに武器を構えます。
「……MAKIYUKI、どうする?」
「……みんな、ショーの続きだと思ってるのが不幸中の幸いかもね。このまま観客参加型のイベントのテイであの黒いカプセルギアを倒すしかないんじゃない?」
他人事のように言いつつ、すでに雪人くんはボナパルト2をセットアップ。
どうやら同じように黒いギアを見つけたギアマスター達はそれぞれに臨戦態勢を取り始めたようです。
(……リットの偽物……「影」はいない、のか? それともまだ姿を見せてないだけ……?)
翔くんは、しばし考えを巡らせた後、小さく頭を振ってスマホを手に立ち上がります。
「相手が誰であろうと敵であれば倒すだけだ」
そう言って、翔くんもまた相棒のセイクビリットを起動し、戦いに参加する決意を固めます。
と、そんな会場の片隅に、どこかで見たような招き猫の覆面を被った少年が一人。
「……ほほう。我がロックバンド『招き猫屋敷』の影もいるでおじゃるか……。僥倖僥倖。己が分身との戦いのデータなどそうそう取れる機会もなかろう」
それは、かつてユグドラシルに雇われ、(自称)天才ハッカーである洋子ちゃんのワクチンプログラムを解析、改造したり、同時に3体のギアを操ってバトルを仕掛けてきたこともある謎の少年「猫明神」でした。
猫明神は表情の見えない覆面の下で何かを呟くと、3つの端末を同時に起動させ、自身のカプセルギア、ロックバンド『招き猫屋敷』に臨戦態勢を取らせます。
どうやら、彼にとっても、この事態は想定外のようですが……。
かくして、さながらひとつのイベントのように、ギアマスター達の新たなる戦いが静かに幕を開けたのでした。
というわけで、ごきげんよう。
MSの水月鏡花です。
そんなこんなで、お待たせしましたのカプギア第五話です。
なおこのシナリオは、小学生、中学生のPC限定シナリオとなります。
(※ほしびとは、【ひと時の外見年齢が小・中学生以下】のPCのみ参加可能)
申し訳ありませんが、該当しない方のご参加はできませんので、お気をつけください。
『カプセルギア』とは?
『携帯戦記カプセルギア』とは、頭や腕、足などを組み替えてカスタマイズできる、
全高10cm程度の小さなロボットのこと!
スマートフォンにインストールした専用アプリで、ラジコンのように自由に動かすことができます。
詳しくは、以下の『カプセルギアとは』をご覧ください。
概要
今度のバトルの相手は本物そっくりの影のカプセルギア――シルエット・オブ・ギア(以下、シルエット)。
シルエットは本物のギアと同じパーツ構成・同じ武装を持っていますが、攻撃力や防御力といった基礎性能がかなり底上げされています。
単純な性能の上では本物に勝るシルエットに対してどう立ち向かうのか。
皆さんの熱い想いをアクションに込めてください。
アクションで書いて欲しいこと
このシナリオのリアクションは【A】~【C】の3つのパートにわかれます。
以下のそれぞれの項目の説明をお読み頂き、冒頭に参加したいパートを明記して頂いたうえで、アクションをお書き頂くようにお願いします。
【A】MEIJINのギアのシルエットと戦う
MEIJINに協力して、ステージを見ている子供達に演出ではないと気づかれないように、見ていて盛り上がるような戦い方でメイジンダーのシルエットを倒してください。
上手く盛り上げれば愛光堂やカプセルギアの評判は高まり、ユグドラシルが付け入る隙を少なくできます。
反対に、MEIJINや子供達が謎の敵に負けてしまうことがあれば、子供達は盛り下がりますし、「悪役が勝つ子供向けの玩具はいかがなものか?」と子供から話を聞いた親から苦情が来るかもしれません。
子供達のアソビを守るために戦いたい人、演技力に自信のある人におすすめです。
【B】自分自身のギアのシルエットと戦う
PCさん自身のギアのシルエットと戦います。
単純な性能はシルエットの方が上なので、普通に戦うと負けてしまう可能性が高いです。
勝利するためには、客観的に自分のギアの長所や短所を分析し、弱点を的確に突いた戦い方ができるかどうかにかかっています。
カプギアの設定や、カプギアとのドラマを掘り下げたい人におすすめです。
【C】NPCのギアのシルエットと戦う
MEIJIN以外のNPCのギアのシルエットと戦います。
単純に性能の面では本物を上まわるシルエットに対し、苦戦を強いられているので、上手く援護してあげないと負けてしまいます。
NPCとの関係をより深めたい人におすすめです。
【D】その他の行動
【A】~【C】に該当しない独自行動を取りたい方はこちらを選択してください。
(例:洋子ちゃんと一緒に、公園の周辺で不審者を捜索する)
注:下記の敵一覧に書かれていないNPCのギアをお書き頂いても採用できない場合があります。
BOSS
●シルエット・オブ・○○【出現数:参加PC数】
あなたのカプセルギアそっくりのギアです。
パーツの性能もそのままですが、配下の黒いチェスの駒をコントロールするほか、攻撃力や防御力、速度といったステータスが本物よりやや高めに設定されています。
シルエットギアとあなたのギアの最大の違いはパートナーである「あなた」がいないことです。
●シルエット・オブ・ボナパルト2【出現数:1】
雪人くんのボナパルト2そっくりのギアです。
他のシルエット・オブ・ギアと同じくパーツ構成は同じですが、ステータスは向上しています。
しかし、雪人くんが操作していないせいか、射撃の精度は本物よりも低くなっています。
●シルエット・オブ・メイジンダー【出現数:1】
CAPGEAR MEIJINのメイジンダー△Xにそっくりのギアです。
100倍ロケットパンチやメイジンダーファイヤといった強力な武器を使ってきます。
MEIJINが操作していないので、ヒーローっぽくない挙動をします。
これに勝つことで、MEIJINはさらなる進化を遂げる――かもしれません。
●シルエット・オブ・わんこくん1号【出現数:1】
二宮風太くんのわんこくん1号にそっくりのギアです。
構成パーツはわんこくん1号と同じはずですが……なぜかめちゃくちゃ強くなってます。
風太くんは果敢に戦いを挑みますが、おそらく瞬殺でしょう。
もしかすると、風太くんもわんこくん1号も使いこなせればめちゃくちゃ強いギアマスターになれるかもしれません。
●シルエット・オブ・ロックバンド『招き猫屋敷』【出現数:ドラム×1、ギター×1、キーボード×1】
かつてギアマスター達と戦った猫明神の3体のギアそっくりのギアです。
どうやらこっそりイベントを見に来ていたらしい猫明神ですが、ユグドラシルの仕事で来たのか、はたまたプライベートで来たのか、詳細は定かではありません。
構成パーツはかつて戦ったときと同じですが、やはり能力は向上しています。