【こども部屋（２）】

「こんにちはぁ、初めましてぇ！　クーちゃんっていうんだぁ？　よろしくねぇ」
　と、ラズちゃんは無表情な女の子へあくまで友好的に、ぴ、と手を上げてご挨拶。
　けれど、
「わわわ！　ダメかねぇー！？」
　飛行型カプギア、朱雀が鋭い動きでラズちゃんへ突撃。鉤爪がふわもこなラズちゃんのボディをかすめて傷つけます。
「瑠樹くん、あちらは聞く耳持たないようだ。残念だが、やるしかなさそうだね」
「わ、分かったよぉ！」
　朱雀と対峙するのはラズちゃんに、ベレロフォン。そしてエクリプスβです。
「数の暴力と堅い装甲……どうするの？」
　どどどどどっと群れを成して突っ込むのは、複製されたエクリプスβたち。洋子の即席ＡＩで制御されたコピーたちは、本体を隠すように展開しながら前進します。
　朱雀が羽ばたき、宙から炎の雨を降らせます……けれど展開する強固な盾がそれを弾き、ダメージを無効化しました。
　圧倒的有利、と思いきや。
「……！」
　クーは表情を変えず、朱雀は反転。群れの背後へと回り、守りの薄い背中側から炎を浴びせます。
　コピーたちを動かすのは結局のところ単純なＡＩであり、不測の事態には対応できません。スピード重視で複製した機体も品質はオリジナルに遠く及ばず、コピーたちはあっという間に撃破されていきます。
「やる……けど、これも計算のうち」
「ああ、そうだとも！」
　コピーはあくまで目くらまし。エクリプスβはコピーを盾に立体機動で宙を舞い、ベレロフォンは漆黒の翼で飛翔し、牽制射撃を繰り返しながら隙を伺います。
「ほらほら、こっちだよぉー！」
　と。ぴょいんぴょいん、とクーの目線のあたりを飛び跳ねるラズちゃん。
　優しいりゅーきはあくまで、攻撃より女の子の目を惹きつけることにしたようです。朱雀も思わずつられてラズちゃんのほうを向いてしまったのは、りゅーきのろっこんが遠い海の向こうにまで届いた……わけではなさそうですけれど、ともかくクーは目を点にして、
「……カワイイ」
　思わずぽつり。
「今だ、スピカくん！」
「うんっ……リンタロウ！」
　瞬間、ベレロフォンの無駄無弓とトライアルβの大鋏が閃きます。



　重量級カプギア・玄武とのバトルは、真正面からぶつかり合うガチンコ勝負となりました。
「行くッスよー！！」
「ぶっ飛びやがれです！！」
　トルーパーのヘヴィマシンガン、すたんぴーど☆まんもすの短機関銃が吐き出す弾丸が玄武へ集中します。
　がががが、がきん！
「げっ、硬いッス！」
「カメの甲羅は伊達じゃないようですね！」
　確かに玄武の見た目は、四つ足の亀。堅牢な甲羅の中に手足を隠し、防御モードへ変形することもできるようです。
　玄武はそのまま高速回転！　銃弾を弾きながらの突撃は攻防一体、うかつに手が出せません。
「リット。MAKIYUKIはどうだ？」
『既に狙撃ポイントに着いている』
　SHOは後方で膝を突きＢスナイパーガンを構えるボナパルト２を確認すると、セイクビリットを前方へ。
「俺が隙を作る！」
「頼んだッス！」
　強烈なアフターバーナーであっという間に肉薄すると、クローハンドを一撃。電流が玄武の機能を一時的に麻痺させたところへ蹴りを食らわせ、反動で距離を離しながらに散弾を連射！
　たまらず玄武は防御を解き、水の砲弾を放って反撃するも、隙アリ！　トルーパーの弾丸がすかさず叩き込まれ、すたんぴーど☆まんもすは奥の手のトリモチ弾を射出！
　ぎぎぎ、と動きを鈍らせた玄武の反撃、水弾の直撃を受けたすたんぴーど☆まんもすがのけぞるも、
「ぐっ……耐えやがれです、すたんぴーど☆まんもす！」
　構わず前へ。前へ！
　猛攻に耐えかねて、再び防御モードへ移行しようとする玄武ですけれど、それもまた突くべき隙。
　見逃さなかったのは、セイクビリットです。背に負う絢爛な翼をはためかせ、
「吹き飛べッ……ラ・スパイラル！！」
　出現した竜巻がもたらす巨大な衝撃は、玄武を打ち据えながらに容易く巻き上げ……ぎらと輝くのはすたんぴーど☆まんもすの双眸に、トルーパーのターレット。
「渾身の一撃！　食らいやがれーーーっです！！」
「パイルっバンカァァァアアア！！」



　MADOKAは思わず、感心してしまいました。
「いやー、すっごいねえ。カプギアを複数扱えるなんてさ」
「しかも、この人数を同時に相手しちゃうんだもんねえ」
　MASHIROもうんうん、と同意。
　なんだかこう、姪っ子の成長っぷりを喜ぶ親戚のお姉さんみたいな心境でしょうか。
「ま、私たちはいつもの手でいこっか。真白ちゃん」
「おっけー、円ちゃん！」
　ベリアルはビットを展開し、狙うはスピード型カプギアの白虎。ネージュリェーツはベリアルと白虎の動きに注視しつつ、トラップゾーンの構築を行います。
　MADOKA＆MASHIRO組と挟み撃ちのように攻めるのは、AOIとくろナオちゃんです。
「攪乱してくれる？」
「りょーかいしたわ！」
　スカルブーティちゃんがしなやかな動きで跳ね回り、Diablo Azulは得意の偏差射撃を撃ち込むチャンスを狙います。
　白虎は地上を縦横に疾走することで敵を翻弄するタイプで、スカルブーティちゃんとは追いつ追われつ、互いに近接攻撃を叩き込む機を伺い合い、そこへベリアルの操るビットが四方から炎のレーザーを浴びせて白虎の逃げ道を塞ぎます。
　さすがの四対一とあって、白虎は自慢の爪を浴びせることができません。けれどそのスピードは四対一をして決定打を決められないほどです。
「ええい、ちょこまかと！」
「あっ円ちゃん、そのセリフちょっと悪役っぽい」
「えっほんと？　魔王っぽい？」
「ぽいぽい」
　炎の魔王？　ベリアルは、美しくもトゲのある茨の森の主、ネージュリェーツが待つトラップゾーンへ。
「あら、チャンスだわ。それっ！」
　白虎が急カーブ、ききききっと滑った一瞬に、スカルブーティちゃんは爪をざくり！
　斬撃のインパクトに一瞬動きを止めたその刹那に、ずどどどどんっ！
「百発百中！　私ってば天才ね！」
　Diablo Azulのビームライフルが頭部に炸裂！
　方向感覚を失った白虎の隙を逃さず、ベリアルは大型剣を振りかぶり、スカルブーティちゃんは毒尻尾をぐぐぐと構えて、ずばずばん！
「おーらい、おーらい」
　吹き飛んだ先には、茨生い茂る森……ではなく、ネージュリェーツの領域。
「ナイスキャッチ♪」