this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
フシギな力の使い途
<< もどる
1
…
2
3
4
5
6
…
8
つぎへ >>
【野望と虚無の狭間にて】
週が切り替わろうとしている、既に深く沈んだ土曜日の夜。
カーテンの隙間から、月の光だけが語り掛けてくるように差し込んでくる。
月明かりが照らす部屋は、広くなく、そして飾り気もないワンルームマンション。だが、過去に比べればそこにはまだ人の存在する気配がした。
――以前は一人きりだった部屋に、今は二人の気配がする――
床の上には、上着から下着まで乱雑に脱ぎ落ちた女性の衣類が散らばっている。
対比的にそれらがない白い祭壇を思わせるベッドの上には、二人の女性がその身を横たえていた。
一人は、
朝鳥 さゆる
。もう一人は、
葉利沢 倫理子
。
さゆるは仰向けに天井だけを見つめ、倫理子はそのさゆるの惜しげもない裸体に寄り添うように身を触れ合わせている。
その場には、濃厚な情事の後を思わせる、女性同士特有の重く、そして手足に絡みつくような甘い匂いがあった。だが、それでも今の二人を見ると、そこに距離を感じずにはいられない。
漂う空気とは相容れない、とても静かな心の距離。それは、本当に同じ場にいるのかを思わせる程に離れたものだった。
「――ふふ……。本当に、良かった」
倫理子が――否、自分のろっこんに既に意識と身体を奪われて久しい、倫理子の第二人格『Malice』がさゆるに身を寄せ、口を開く。
『マリーって呼んで』――そう名乗ったMaliceは、まるで喪に服すように一人過ごしていたさゆるの居場所、今のこのワンルームマンションに押し掛け、学校が休みとなる日には必ず姿を見せてその場に居座った。週末や夏休みには情事に溺れない時などはなく、それを心から堪能した。
だが、それでもさゆるから『マリー』と愛着を込めて呼ばれた事はなく、そもそも名前自体を呼ばれる事もない。
――そのような、関係だった。
「こんな寒い日……私が生まれたのは。
実体もなく揺蕩っていた、雲のような存在だったけれども」
Maliceが、何とはなしに話を始めた。
さゆるは天井に目を向けたまま。しかし、それを特に気にする様子も無くMaliceは語り始める。
「倫理子の誕生日から、数日。穢されたと絶望した心から私が生まれた」
誕生日が倫理子の最後の幸せな思い出となった。
その数日後の夜だった。倫理子は心ない男達によって心も体もありとあらゆる尊厳を壊されたのだ。
Maliceの誕生は、その時の防衛本能が作ったものなのか、それとも内面に押し隠された復讐という欲望から生まれたものなのかも、今となっては分からない。
だが、Maliceの存在は倫理子が逃げ出すように寝子島に来て、二年目の冬にその意図は、明確な形となった。
倫理子にとって既視感ではない、それは現実に起きた悪夢の再来だった。
ワンボックスカーの中に連れ込まれた、服を破かれ、同じ惨劇がくり返されようとした時、
『……私を殺して』
消えた倫理子の意識の代わりに、Maliceはろっこんの力【Malice in the real】として確かな具現を果たした。
自我を得た、身体を得た、自由を得た。
男達はMaliceという存在の生誕を祝う為に、彼女の手にしたライターで自身も荷物もその火に炙られた。逃げ惑っては車から飛び出しその場の地面を転がり回った。
『Malice』という名の生誕祭はとても華やかに執り行われた。
生贄になった男達はいなくなり……ただ、そこには純然たる悪意だけが残った。
Maliceには身体がなかった。穢されたと倫理子が嘆いた身体すら持ち合わせてはいなかった。
具現化した悪意は、容易く倫理子の身体を奪い取った。寝子電の電車の中で、その鮮烈な夕焼けに涙した倫理子は、既に完全にMaliceに身体を乗っ取られ、その意識も殆どが霞と成り果てた。
Maliceにとって、後は消えるのを待つだけだ。具体的にくびり殺せる方法は分からないけれども、自分がここまで支配権を握ればあとは消え果てるだけだろう。それをゆっくり待てばいい。
かくして、Maliceは世界という自由を手に入れた。
「――」
そうして、Maliceは語り続けた己の記憶に区切りをつけた。
だが――さゆるは最初から最後まで、ずっと月明かりが沿う天井を見つめていた。Maliceの話はろくに耳にも入らなかった。……耳に入れる気もありはしなかった。
それはMaliceにも分かっていたことだ。
――知っていた。出会った時から知っていた事だ。
彼女には、さゆるには、もう他人が聞けば生死すら定められてしまいそうな、行方不明な過去の存在――片篠藍人しか目に映ってはいないのだ。
(ろっこん……)
しかし、耳に届いた話題の中から、さゆるは一つの単語をその意識に拾い上げた。
Maliceはまだ何か話をしているが、気にせずその言葉を抱えてさゆるは思考の海に落ちる。
Maliceは言う。想い人はもう生きてはいないだろう。
さゆるも心の中で殆ど諦めている。それでも、自分が生きている内は諦められない。諦めきれないのだ。
諦めることは赦されないような気すらした――故に、さゆるは自分を死へと誘ってくれる『死神』へと恋をした。ある時には熱烈に、愛と言っても差し支えのないアピールをした。
だというのに。
この寝子島の不思議現象は、いつの間にやら諸手を振ってさゆるの事を歓迎していた。
不思議現象の一環として、異世界に落とされた時、敵意を交えた攻撃への受動型として発現したろっこん【Stella cadente】は、襲い来る硝子で出来た蝶の群れを、硬質の破片と共に一網打尽にするに到ったのだ。
戦闘に必要な反応速度が著しく強化されるろっこん――それに身体の自己防衛本能が、さゆるの偶発的な死を許さない。更には、身体が勝手に防御反応を取るだけで、身を守るには十分に間に合ってしまう。その事態は半意図的な自殺行為すらをも封殺する。
こうしてさゆるは、見事に愛を囁いた死神に袖を振られた。
むしろ、こうして継続される呪いにも似た能力は、完全に死神に疎まれたのであろうとすら思った。
死神という存在にすら、さゆるの紡いだ愛は少し荷が重たかったのかも知れない。
(……それとも……)
仄かに月明かりによって青く映る天井を見つめながら、さゆるは振り返る。
(もう終わっていたのかしら……? あの夜に……)
そのまま、記憶は数年の前に飛ぶ――その地下室には昼も夜もありはしなかった。自分以外の存在がいる時には気持ちの悪い灯りが付き、いなくなれば目が慣れるような僅かな光源さえ見受けられないほどに、そこは真っ暗闇になる。
しかし、さゆるにとって光源など、どのみち関係のない話であった。さゆるは、時間感覚が完全に狂う程の長い間、そこに幽閉されていたのだから。
両親との死別に乗じて叔父と名乗った男は、さゆるの親権を手に入れると、文字通りにさゆるの自由を奪い、蹂躙の限りを尽くした。
『どうして』も『何で』も、ありはしなかった。あるものを貪る事に理由など要らないように、男はさゆるの言葉に耳を貸すことはしなかったし、そもそも発言権などという存在すらもさゆるからは奪われた。
閉じ込められた部屋の時間が、どれほど長かったのかは未だに分からない。ただ『終わらない』という一点においては、確かにその瞬間、地下室は『永遠』の条件を満たしていた。
永遠に終わらない――全ての感覚が既にそう認識し始めた頃。
本当に、何を思ったのか。男はサバイバルナイフを持ってこの部屋を訪れた。煩わしくなったのか。それとも、法に触れる事があってさゆるの存在が邪魔になったのか。
油でも塗ってあるかのようにぎらついたナイフが、さゆるの頭上に掲げられた。
さゆるは騒ぐことも呼吸一つも乱すことなくそれを見た。理由などもはやどうでも良い事だったが『これ』で終わる事だけは理解した。それで、充分だった。
――だが、ナイフはさゆるに届くことなかった。
幸運にも……否、『不幸にも』助けてくれた存在がいたのだ。気が付けば、彼が――片篠藍人が、男を埋める穴を掘っていた。
あの時も、今ベッドの上でさゆるが見つめるような、青白い世界に月が出ていた。
救われた。さゆるはそれを真の苦しみだと称す。
心が認識による錯視を起こすのだ。あの時、実はあのサバイバルナイフは振り下ろされて、全てが終わっていたのではないかと。
思うのだ、もしそうならば――どれほど幸せな事であっただろうかと。
「ねぇ」
さゆるに身を寄せていたMaliceが話し掛けてくる。完全に心がここになかった事に気づかれたのかも知れない。
それでも、改めて反応する理由もなかった。そもそもこうして身体を合わせた理由とて、実際のメリットがまったくないわけではないが、基本的には気怠くて向こうが求めてきたものを拒絶するだけの気力が無いだけのことなのだから。
さゆるがこちらを見ようとしない。相槌なんて求めていないけれども、声を掛けても身じろぎ一つせずに、こちらではなく天井を見ているのは流石のMaliceもほんの僅かに気が立った。
――さゆるが、誰のことを考えているのか。それはあまりにも明らかだ。
片篠藍人、その名は彼女にとって苦しみ続ける地獄の居場所であって、同時に血に染まった天国の在処であることをMaliceはこの付き合いの中で思い知っていた。
そこに、Maliceの付け入る隙は無い。誰かが割り込む余地など有りはしない。
(……朝鳥さゆる)
だが、Maliceが諦める事は無い。全てを解し、それでも絶対に、
(さゆるは私のものだ。私だけのものだ)
「ねぇ」
Maliceが身を起こしてさゆるの顔を覗き込んだ。
黒の瞳は名前通りの悪意を結晶化したかのような光を纏ってさゆるを映した。
そして激しく、その唇を重ね合わせる。
その場に、先の情事の再開を思わせる、淫猥な水音が響いた。
(――手に入れる。必ず。絶対に)
絶望するほど届かない。
あまりにも有り様の違う心の狭間で、Maliceは再び、せめて実際に触れられるものに手を伸ばすように、さゆるの身体を貪った。
<< もどる
1
…
2
3
4
5
6
…
8
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
フシギな力の使い途
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
冬眠
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年01月29日
参加申し込みの期限
2020年02月05日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年02月05日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!