【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜｜リアクション

【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜

　シオ・レイゼルオークと響タルトが罠の種類を提案した。ハルキ・イエハナは適した材料を選び出し、工具で加工を試みる。
　試作品で失敗はあったものの、敵の行動を阻害する罠は構造が単純でいながら絶大な効果を望めるものだった。
　まずは切り出した二つの板を縦に合わせて上に粘着性の強いガムテープを仕込む。少し盛り上がった形で地面に設置。どちらか一方の板を上から強く押す。反動で他方が跳ね上がって対象を挟み込む仕掛けであった。
「僕が試してみるね」
　タルトは指で一方を押した。滑らかな動作に支障はなく、効果は実証された。
　シオは心からの笑顔を見せる。
「これで悪魔を捕まえることができます。身動きが取れないところを上から踏んで、力いっぱい何度も踏ん付けて、必要なら捻りも入れて殲滅です」
「シオさん、笑顔が怖いよ～」
　タルトはおどけるように言った。
　二人の会話を黙って聞いていたハルキが口を開く。
「敵の行動ルートがわかっていません。どこに罠を仕掛ければベストなのでしょうか」
「決まっています。全部です」
　シオは手を動かした。目を細めて罠を作り続ける。
「全部ですか」
「そうです、ハルキさん。考えられる全てのところに罠を設置すればいいのです」
「僕も手伝うね♪」
　シオの隣でタルトもせっせと手を動かす。
「それしかないですね」
　ハルキは苦笑いで作業に加わった。
　材料が底を突いた。三人は大量の罠を前にして感動に近い息を吐いた。
「三人で小分けして罠を設置しましょう」
「その前にハルキさん。これを被ってください」
　シオはハルキにフードを手渡した。
「これは敵から身を守る為のものですね」
「そうです。私達はブーツを履いているので足元は万全です。厚手の長袖のおかげ肌の露出はありません。あとは無防備な顔を守れば完璧です」
「その理屈はわかるのですが、フードに猫の耳のようなものが付いているのは？」
「お三夜さまのファンなら当たり前のことです」
　言い切るシオにハルキは口籠りながらも頭に被った。
　その後、三人は完成した罠を至る所に置いて回った。鼠が通りそうな隙間は当然として、広い場所にも進んで設置した。
　耳福池の周辺は薄暗く、身を隠せる茂みも多くあった。
「ここを当面の拠点にしましょう」
　シオの提案に他の二人は納得の表情を浮かべた。