play a game～phantom thief～｜リアクション

play a game～phantom thief～

pinkでpunkなbank破り

【警報発生】
日向透ニヨルCat Water盗難ノアナウンス開始

Round5【AM1:40】

【Ｂ１：休憩室・トイレ前】

　誰よりも先に、逃走先となるこの場所に由貴奈は到着していた。
「ふふん、予定通りだよぉ。ああしとけば、こっちに逃げるしかないからねぇ」
　瓢による偽情報で、こちらからも一部の切り崩しが行われるが、それらの補填として休憩室側からも応援は既に呼んでいる。
　元より他人の宝石を奪う事を重視していた事も含め、梢と由貴奈は初めから二つの宝石を奪う事を目的としていたのだ。
「――来たねぇ。全員、一番先を走ってるのがCat Tearを持っている怪盗だよぉ！」
　由貴奈としては珍しく、大きく声を出し警備員にそれを伝えていく。
　――一番先を走る義一とるるかを標的とする為に。

　由貴奈の声は、当然義一とるるかにも伝わる。
「後ろも前も駄目っぽいじゃない！義一、なんとかして！」
「なんとかってお前……えぇい、やりゃいいんだろ！」
　手に持っていた宝石をるるかに渡し、義一はそのまままっすぐに警備員へと向かう。
　――るるかさえ無事に逃がせば目標は達成する。
　だからこそ、義一は捕まってもいいといった覚悟を持って、残った石を両手で抱えるようにしながらわざとその姿を晒していた。
「こっちだ！来い！」
　但し、義一はまっすぐに窓へは向かわず、走る方向を入口側へと向ける。
　窓を目指するるかと入口側を目指す義一。
　二手に別れたことにより、警備員はどちらを目指すべきか、それを由貴奈に問う。
「落ち着いて、二手に別れればいいですよぉ。相手は二人だけですしねぇ」
　るるかと義一の後ろから迫っていた煙幕玉により逃げ切れた四人には、足止めの為に二人だけ警備員を差し向け、由貴奈はそれを口にする。
　その指示のまま、警備員はそれぞれが行動を起こし、まずは義一が入口側の警備員と挟まれる形となり――そのまま捕まってしまっていた。
「あっちは終わりだねぇ。残りは君だけだよぉ」
　窓側に残った警備員は２名、そして由貴奈がそれに加わる。
　端から、由貴奈は義一が持って逃げるとは思っていない。
　だからこそ、この場に残っていたのだ。
「……分かった。降参よ、降参」
　――不意に、るるかがその言葉を口にする。
　三対一、状況は圧倒的にるるかにとって不利である以上、両手を挙げる形で降参のポーズを取りながら。
「あっけなかったねぇ。それじゃあ、宝石の回収をお願いしますねぇ」
　まだ自分では取らず、由貴奈は警備員にそれを伝える。
「――そ。ここよ、ここ」
　だが、るるかが警備員に示す宝石の位置は、丁度胸の谷間。
　欲しいのなら、そこに手を突っ込み、取ればいいと暗に伝えていた。

「ねぇ……本当に取るつもり？あたし……恥ずかしいよ……」
　高校生とは思えない豊満な胸に加えて、軽く上気した頬に涙目、そして上目遣いと色々オンパレード状態でるるかは警備員に告げる。
　例えそのケが無かったとしても、警備員も男である以上、その手を安易に胸の谷間に入れるをためらってしまってもしょうがない。
　それこそがるるかの狙いであり、もう一人の警備員も同じ手でやり込めようと視線を向けるが――
「恥ずかしいのは一瞬だからねぇ」
　――女性である由貴奈が居る以上、その手をわざわざ見逃すはずも無い。
「きゃん！？」
　るるかに近づき、由貴奈は無造作に胸の谷間に手を突っ込み、宝石を手に取る。
「あぁん、もう！」
「残念だったねぇ。それと……ご苦労様」
　ポツリと、由貴奈が耳元でその言葉を口にする。
　背後の窓は鍵を閉めておらず、加えてここには二人の警備員しかいない。
　――故に、由貴奈はそのままくるりと振り返り、窓へと体を向ける。
　唖然とする警備員を尻目に、窓との距離がほとんどない通路を全力で走った上で窓の外へ到達し――掻き消えるようにその姿を消していた。

【確認：Cat Tearノ外部到達。該当プレイヤーノ消去ヲ確認】

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