携帯戦記カプセルギア　出現！チェスの駒とＫからの挑戦状｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　出現！チェスの駒とＫからの挑戦状

【中盤戦】
　ギアマスター「エクリプス」ことスピカさんの操るトライアルγは、飛行形態で敵陣の只中に突っ込み、一騎当千の戦いぶりを見せていました。
「対多数なら、βの広域行動掌握あるけど……。持久戦なら、こっちで……」
　スピカさんは青の瞳を凄まじい速度で動かして、無数のチェスの駒達の動きを捉えつつ、その動きに合わせて的確な攻撃で各個撃破を狙っていきます。
　それは、スピカさんの腕前もあって、まさに孤軍奮闘と呼ぶに相応しいものでした。
　しかし、
「……っ！」
　ステルスとシールドを駆使して的確な防御行動を取るスピカさんのわずかな隙を狙い、遠距離から狙撃をしてくる隠れルークの存在が、ここにきて大きなネックになりつつありました。
「数の暴力って、言葉あるけど……ちょっとこれは……」
　と、そこにデコイとデコイの間をすり抜けて点滅するポーンがトライアルγの目の前に。
「……！？」
　思わず目を見開くスピカさん。
　素早くスマホに指を走らせますも、回避は絶望的に思われました。
　しかし、その瞬間、トライアルγのはるか後方から一直線の飛んできたビームが、点滅するポーンを正確に撃ち抜きました。
　ハッとしてスピカさんが振り返ると、そこにはサンダルフォンの援護によって水を得た魚のように狙撃の精度を上げ始めたボナパルト2の姿がありました。
「……援護、ありがと……」
　ぽつりと呟きつつ、スピカさんもまた調子を取り戻し、敵陣の懐に飛び込んだところで、切断翼で一閃。
　一直線上に並んだポーン＆ルークをまとめて撃破したのみならず、機体を大きく左右に振ることでさらに近くにいたナイトの駒をも巻き込んでいきます。
　素早いナイトはわずかにボディをそらすことで、致命傷を回避しましたが、あと一撃を加えれば倒せるのは明らかでした。
　しかし――。
　そのとき、後方から現れたビショップがナイトのダメージを修復。
　せっかく減らしたナイトのHPを元通りにしてしまいました。
「……それなら……ビショップから先に――あるいはビショップごとまとめて倒すだけ……」
　それでも。スピカさんは臆することなく、残機がゼロになったデコイをもう一度バラまき、機銃掃射で再攻撃を開始します。
　ところで、その間、公園のあちこちに潜む隠れルークの数は、じつは刻一刻と減り続けていました。
　というのも、たとえばジャングルジムの裏から隠れルークが現れれば――。

「ふふふ、わるいこパゥワーが高まってきたです」
　と、姿を潜めていた姫さんのナデシコが、ニンジャさながらの動きで背後から針のようなカタナをルークの心臓にクリティカルヒットさせ、一体また一体と地味かつスタイリッシュに数を減らしていたからです。
「キャノンを構えていては接近戦に対処できない。そして、至近距離で回り込まれれば突撃もままならない。綿密な情報収集と隠密を得意とするナデシコの敵ではないのですよ」
　にやり、と悪い子な笑みを浮かべると、またナデシコをステルスし、自身も身を隠す姫さん。
　姫さんとナデシコだけではありません。
　たとえば、剣を手にポーンやルークを相手に無双するカノンくんのキングニャーサーを狙う隠れルークがいれば――
（……チマチマ隠れて狙ってる奴がいるのはわかってんだよ！）
　と、レオンくんのアタランテーで先に弓で射抜き、
　滑り台の上でガトリングを撃ち続けるマンモスさんの「ぐれーと☆まんもす」を狙うルークがいれば――
「そこのウサギのギアの子、滑り台の陰にルークが」
「まかせてぇ！　ラビちゃん、わっかビームだよぉ！」
　周辺を警戒していた柚春さんの指示で、瑠樹くんのラビちゃんがわっかビームで反撃します。
　これは、ちょっと凄いことでした。
　チェスの駒の数はギアマスター達のギア数を大きく上まわるものです。
　しかし、その数の不利を、ギアマスター達は仲間同士の華麗な連携でものともせずに立ち向かっていきます。
　強大な敵に、力を合わせて立ち向かっていく。
　それは、ギアマスターのあるべき姿にほかならぬように思えましたが――。
『どうした、少年少女達。君達の力はそんなものか？』
　謎の声の主、Kはまるで満足したふうもなく、そんな言葉を子供達のスマホに響かせます。
　はたして、彼の目的は何なのでしょう。