それは、もうすっかり寒くなった、ある休日の昼下がりのことでした。
「行け! スターライトナイト! メテオキャノン!」
「させるか! かわせ、バルティーグル!」
寝子小のすぐそばにある風の原公園では、今日も子供達がスマートフォンを片手に熱いギアバトルを繰り広げていました。
とりわけ、その日はいつも以上に公園でギアバトルをしている子供達が多い日でした。
バトルのみならず、お気に入りのコーディネートをした自慢のギアを見せ合いっこする子供達もいて、風の原公園は子供達の楽しそうな声でいっぱい。
「平和だねー。ユグドラシルも全然動きがないし」
のどかな公園の様子を見まわしながら、
工藤 歩夢くんがほんわかと言います。
「平和なのはいいことですよ」
神嶋 星志郎くんも、穏やかに微笑んでそう言いました。
実際、公園は本当に平和で、もしかしてこのまま何事もなかったかのように平和な日常が続くのではないかとさえ思えました。
と、そのとき。
「え……っ?」
「……なんだ?」
突然、公園のど真ん中に赤い炎が燃え盛ったかと思うと、その中から一体の赤いギアが現れました。
そのギアは、頭部に十字架の飾りをつけていて、胴は細長く、手足に当たる部分がありませんでした。
そのギアの姿は、あるボードゲーム――チェスの駒にとても良く似た形をしていました。
『――ごきげんよう、諸君』
そのとき、子供達のスマホから機械的な合成音声が聞こえました。
何事かと画面を見てみると、そこには見たこともないシャチのアバターの姿。
シャチはスマホ(あるいは携帯端末)に表示されたA.I.C.O.の画面の中を自由に泳ぎまわってはときおり画面にざっぱんと大きな水(?)飛沫を上げて、好き放題に振る舞います。
すると、なんということでしょう。
いつのまにか、A.I.C.O.に表示されていたRED KINGというギア――おそらくは目の前にいるキングの駒によく似たギアのことでしょう――とのバトルが承認されてしまいます。
「……な、なんだよ!? オレは今、タイラとギアバトルしてるんだ、邪魔すんなよ!」
竜世くんがRED KINGのマスターを探してあたりをきょろきょろしながら言います。
ですが、不思議なことに、あたりにはさっきまで一緒に遊んでいた子供達以外の姿は、誰一人として見当たりません。
「……また、暴走?」
と、誰かが言いました。
なるほど。確かにギアがひとりで動くという状況は暴走とよく似ています。
ですが……。
「いや、違う。あのギア、暴走ギアみたいに、物を破壊していない……」
また別の誰かが言います。
そう。
子供達の目の前に現れた赤いギアは、暴走ギアのように公園の備品を壊したり、人を傷つけたりすることはありませんでした。
これはいったいどういう状況なのか。
呆然と立ち尽くす子供達に、スマホから響く声は静かに続けます。
『――私の名は海堂。カプセルギアの開発者の1人。かつては、プロフェッサーKと呼ばれていた男だ』
子供達はざわつき始めます。
海堂と名乗る男の声は、子供達のどよめきなどそしらぬ様子で、言葉を続けました。
『私は知りたい。君達が本当にカプセルギアの使い手に値するのかどうか』
その声は、合成音だというのに、どこか冷たく背筋をぞっとさせる迫力のようなものを感じさせる声でした。
『――今からそれをテストさせてもらう』
その瞬間、どこからともなく押し寄せてきた大量のチェスの駒の形をしたギア達が子供達を取り囲みました。
「タイラ! いったん休戦だ! まずはこいつらをやっつけるぞ!」
「……うるさいぞ、トリ頭。お前に言われるまでもない。このボクにケンカを売ったことを後悔させてやる」
「シロちゃん、ぼく達も……!」
「ええ。降りかかる火の粉は払わないとですね……!」
竜世くんとタイラくん、そして歩夢くんと星志郎くん。
その場に居合わせたギアマスター達が、自身のスマホを手に、それぞれのギアに臨戦態勢を取らせます。
『――見せてもらおうか。君達に、カプセルギアの真なる使い手たる資質があるかどうかを』
『望むところだ!(です!・だよ!)』
かくして、歴史には残らない、しかし子供達の間では『風の原公園の戦い』として語り継がれることになる、激しいギアバトルが幕を開けたのでした。
ごきげんよう。MSの水月鏡花です。
そんな感じで、突如として現れたチェスの駒を象ったギア達とのバトルの始まりです。
皆のアソビを邪魔する無粋なギア達を撃退し、プロフェッサーKを名乗る男の真意を探りましょう。
なお、今回のガイドには、源 竜世くん、タイラ・トラントゥールくん、工藤 歩夢くん、神嶋 星志郎くんにご登場頂きました。
この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
もし、シナリオに参加して頂ける場合は、ガイドにとらわれずご自由にアクションをお書きくださいませ。
*このシナリオは小・中学生以外の方にもご参加頂けます。
『カプセルギア』とは?
『携帯戦記カプセルギア』とは、頭や腕、足などを組み替えてカスタマイズできる、
全高10cm程度の小さなロボットのこと!
スマートフォンにインストールした専用アプリで、ラジコンのように自由に動かすことができます。
詳しくは、以下の『カプセルギアとは』をご覧ください。
→ 『携帯戦記カプセルギアとは』
概要
強制的にバトルを仕掛けてきたチェスの駒型のギア達を、ギアマスター同士で力を合わせ、撃破してください。
なお、PCさん達の他に何人かのNPCのギアマスターがいて、それぞれの意思で行動を開始しています。
必要に応じてアクションをかけて、連携したり、ギアバトルが苦手な子を助けてあげたりするのもよいでしょう。
舞台
戦いの舞台は風の原公園全体です。
各色のチェスの駒型のギア達は、自由に公園内を動きまわりますが、公園から出てしまうことはありません。
通常敵情報
5色のキング(クイーン)の駒に率いられた配下のギア達です。
いずれも飛行能力を持ちますが、
姿や能力は各色共通となっています。
チェスの駒たちは、「頭部・ボディパーツのみで構成された特殊なギア」です。
体当たりと、周囲に展開する魔法陣型のエフェクトから発生させる特殊攻撃を使います。
■ポーン×100(各色20機)
ポーン型のギア。高速回転しながら、頭から突っ込んでくるもっとも弱いギアです。
1体1体の能力は低いですが、数に物を言わせて全方位から一斉を仕掛けてきたり、味方を守る壁を形成したりしてきます。
自分の実力をよく知っているために、あまり強くないNPCのギアを優先的に狙います。
HPが減ると赤く点滅してから自爆するので(大ダメージ)、自爆前の合図である魔法陣には注意しましょう。
■ルーク×100(各色5機)
ルーク型のギア。正面に展開する魔法陣型エフェクトからのマジックキャノンによる砲撃と、重厚なボディを活かした突撃を得意とします。
攻撃力・防御力ともに高めな反面、出力を活かした突撃によるスピードは驚異ですが、小回りが利かないためによけられると弱いです。
腕に自信のある・実力あるギアマスターのギアに優先的に向かっていく傾向があります。
基本的に前衛型ですが、一部、公園の遊具やベンチ、木の物陰からキャノンで狙ってくるタイプもいます。
■ナイト×25(各色5機)
ナイト型ギア。
機動性が高く、ルークよりも小回りが利きますが、遠距離攻撃はできません。
中衛に位置し、ポーン・ルークの攻撃をサポートしつつ、ビショップやクイーンが攻撃されると援護防御し、ビショップを狙う敵を優先的に迎撃します。
■ビショップ×25(各色5機)
ビショップ型ギア。
攻撃能力はありませんが、味方のギアのダメージを回復させる能力を持ちます。
同じエリアにいる任意のギア一体の傷を回復できます。
また頭部から流れる鐘の音は鳴っている間、周囲の味方の攻撃力を高めます。
優先的に倒すべきですが、ナイトが護衛についているために、なかなか攻撃を当てられません。
BOSS情報
キング・クイーンの駒は同色のギアの司令塔的存在で、キングまたはクイーンを倒せば、同色の駒は全て倒した扱いとなります。
キングの駒は多くの配下の駒によって優先的に守られるため、近づくためには、ある程度配下のギアの数を減らすなり、囮を使うなりの下準備がかかせません。
またキング自体がそれぞれ強力な能力を持っているために、一対一で戦うことも避けるのが賢明です。
共にアソビ・戦ってきたギアマスター同士のチームワークで、この強敵を撃破しましょう。
■キング(赤)×1
赤のキングの駒形のギア。
足元に巨大な魔法陣を展開し、巨大(カプギア比。人間から見ると中学生用の竹刀程度)な炎の剣を出現させ、自在に振りまわします。剣に当たれば大ダメージは避けられず、剣先からは当たり判定のある大きな火球を発射できる。
■キング(青)×1
青のキングの駒形のギア。
足元に巨大な魔法陣を展開し、そこから無数の噴水を起こします。
噴きあがった水は空中で集まって、あたり判定のある水球と化し、もう一撃放ってくるので注意しましょう。
■キング(黄)×1
緑のキングの駒形のギア。
頭上に巨大な魔法陣を展開し、そこから無数の雷を落として攻撃してきます。
また正面にも魔法陣を展開し、小さな雷球を連続発射してくることも。
雷・雷はヒット後もしばらく当たり判定が継続し、近づくと感電してダメージを受けます。
■キング(緑)×1
緑のキングの駒形のギア。
足元に巨大な魔法陣を展開し、そこから樹木を発生させます。
樹木には幹、枝、葉のそれぞれにあたり判定があり、さらに枝になった木の実は爆弾になっていて、衝撃を受けると一定時間後に爆発します。
■クイーン(桃)×1
クイーンの駒型のギア。
ドSな女王型ギアです。
足元に巨大な魔法陣を展開し、そこから塔の出現するピンクのキャンドルで攻撃してきます。キャンドル本体と炎にはあたり判定があり、接触するとダメージ。また滴る蝋にはギアに絡みついて動きを遅くする効果があります。
味方NPC
■二宮 風太
寝子小の元気な小学二年生。
皆のアソビを守るために相棒の『わんこくん1ごう』と一緒に戦いますが、あまりギアの腕は上達していない様子。
とても素直で純粋なので、何も考えずにポーンに突っ込んで、自爆の巻き添えにされて泣いたりするかもしれません。
【ギア情報】わんこくん1ごう
剣を持ち、ロケットを背負いゴーグルを身に着けた、犬型のカプセルギア。突撃命。
■牧 雪人
相変わらず能面のようなクールな表情を浮かべた小学五年生。
ギアバトルの腕はかなりのものですが、相棒の「ボナパルト2」は多対一の戦いに向いているギアではないので、今回は苦戦を強いられるかも?
とはいえ、腕は確かなので、上手く協力して貰えば、大きな戦力なってくれるでしょう。
【ギア情報】ボナパルト2
高機動と精密な狙撃がウリの戦列歩兵型ギア。
■海堂 洋子
雪人くんの幼馴染で、自称天才ハッカーの少女。
おそらくは何らかの手段で、プロフェッサーKを名乗る男の出現に気づき、雪人くんに電話などで連絡を取ってくるでしょう。
■紅 列土
第三話でギアマスター達と対決し、正義の心に目覚めた少年。
子供達のアソビを邪魔するチェスの駒型のギアに、相棒の「バーニングドラゴン」とともに戦いを挑むようです。
腕は確かですが、猪突猛進な性格なので、放っておくと自滅するかもしれません。
基本的に人の話を聞かない性格ですが、かつて戦った相手や、実力のあるギアマスターの言葉になら耳を傾けてくれるでしょう。
【ギア情報】バーニングドラゴン
竜型のギア。防御力が高く、接近戦が得意。
皆様のご参加をお待ちしております!