占い少女のトリックオアトリート｜リアクション

占い少女のトリックオアトリート

◆運命の下、輪転する恋

　午後の旧市街はどこかゆったりとした空気が漂っていた。のんびりと散歩をしていた渥美ニナは人混みの中に気になるものを見つけて声をかけた。

「えーと、噂のイムイムさんてあなたですか？」
「そうなのだ！　占いのお客さんか？」

　その少女イムイムはニナの声に元気よく振り向くと微笑みかける。ニナは彼女に微笑み返して並び立った。

「お手すきでしたら私も占って頂きたいんですが」
「わかったのだ！　何か注文してくれると嬉しいのだ。イムイムの分も頼むのだ」

　二人は喫茶店に入って空いている席に座る。ぱらぱらとメニューをめくりながら、ニナはイムイムの様子を見た。

「そうですねぇ。因みにあなた、お腹の減り具合はどうです？」
「すいてるのだ」
「じゃ、お食事と飲み物を……好きに選んでもらって大丈夫です」
「本当か！？　やったのだ！　じゃあこれとこれにするのだ！」

　イムイムはニナの言葉に気をよくしてサンドイッチとソーダを頼む。それが届くまでの間にと、イムイムはニナの話に耳を傾けた。

「で、どうしたのだ？」
「それがですねぇ。私の婚期とか、これからの出会いの有無やヒントなんかを聞きたいんですよ」

　彼氏は今までにいたものの、色々な事情で折り合いがつかずに別れる……といった事情らしい。イムイムはサンドイッチを食べながら続きを促した。

「うーん……まぁそんなに焦っているという訳でもないですが。ここ、うーん二年ちょいかな、それくらいはフリーだったもので」

　それを最後まで聞くとイムイムはゴクリとサンドイッチを飲み込み、なんだか神妙な面持ちになり、懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。ニナがカードを繰るイムイムの手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「わかったのだ！　早速占っていくのだ！　んむー……んむむむむー……」

　イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。一枚のカードを十二枚のカードがぐるりと囲んでいる。イムイムはその中の一枚、恋人たちの描かれたカードを指さすとニカッと笑った。

「ここ一年の恋愛運を見たのだ……来年はちょっと波乱の年になるのだ。でも雨降って地固まるというのだ。六月ごろに良い方向に話がまとまっていくところが見えたのだ」
「おお、それはちょっと、頑張りたくなりますね」
「うむ！　でもまとまった後もちょっと大変そうだったから注意してほしいのだ。結婚はしてからが生活ってドラマで言ってたのだ」

　そう言ってから、イムイムは再びサンドイッチにかぶりついた。ニナはイムイムの返答を聞くと口角を上げる。

「成る程ねぇ、ふふ。どうも、ありがとうございました」
「どういたしましてなのだ！　参考になるといいのだ！」
「寝子島観光楽しんでくださいね」
「うむ！」

　去っていくニナを見送りつつ、イムイムは視界の端に見えた人影に振り向いた。

「お？　次の人、どうぞなのだー」