占い少女のトリックオアトリート｜リアクション

占い少女のトリックオアトリート

◆合縁奇縁の根拠は何処に

「食べ物……ちくわでもいいかしら？　友達のお店で作っているものなの」
「お！？　オッケーなのだ！　早速いただくのだ」

　外ではざあざあと雨が地面を叩いていた。渡されたちくわをもきゅもきゅと食べながらイムイムは神野美野梨に微笑みかける。注文した飲み物が来るまでの間、二人は緊張を解そうと何かと言葉を交わしていた。

「科学者っぽいからこういうのは信じないと思ってたのだ。嬉しいのだ」
「そうね……わからないからこそ興味深いわ。科学的根拠がないと言っても、現在の科学ではわからないということかもしれないから」
「なるほどなのだ！　考え方が超頭良いのだ。で、どうしたのだ？」

　そうこうしているうちに二人のもとへ飲み物が届いた。暖かなそれを味わいながら、美野梨は俯いてこう言った。

「……友人が最近忙しくて部活に来ないのだけど、このままフェイドアウトしてしまうのかということなの。そんなのでも占いの対象になるかしら？」
「もちろんなるのだ！　人間関係の相談は多いのだ」
「そう……」

　彼女は俯いたまま続ける。

「別の部でもこういうことがあったわ……別な人だけど。会えなくてもいい仲間ではいられる、とは思うのだけど……なんとなく気になってしまって」

　ここまで言うと美野梨は顔を上げた。

「しつこく誘うのも悪いかしらと、迷うから……」

　それを最後まで聞くとイムイムはゴクリとちくわを飲み込み、なんだか神妙な面持ちになり、懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。美野梨がカードを繰るイムイムの手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「わかったのだ！　早速占っていくのだ！　んむー……んむむむむー……」

　イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。

「うーん……たしかにみんな色んな事情があって部活に来れないみたいなのだ。でもノリノリのせいじゃないのだ。それでこれからのことなんだが……申し訳ないけど、あまりいい未来は見えなかったのだ……」
「……そうなのね」
「で、でも運命は変えることが出来るのだ！　これはワンドのキングというカードだが、相手のことを慮ることが大事ってメッセージなのだ。遠慮していると本当にフェイドアウトしてしまうのだ。なにか機会を見つけて声をかけてみるといいのだ。そしたら状況が好転するかもしれないのだ」

　ここまで言うとイムイムは飲み物を口に含む。外では降り続いていた雨が止み、雲間からは陽光が差し込んだ。しかし雲はどんよりと黒いままで、いつ雨が降り始めるかわからなかった。美野梨は外の様子を横目に見ながらそそくさと席を立つ。

「ありがとう。参考になったわ」
「どういたしましてなのだ。あんまりいいこと言えなくてごめんなさいなのだ」
「気にしないで。今度占いの科学的根拠について研究させて欲しいわね」

　去っていく美野梨を見送りつつ、イムイムは視界の端に見えた人影に振り向いた。

「お？　次の人、どうぞなのだー」

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