占い少女のトリックオアトリート｜リアクション

占い少女のトリックオアトリート

◆立ち止まり振り返り

　日曜日の旧市街は観光客で賑わっていた。太陽が柔らかな光を放っていて、十一月にしては暖かい。志波武道は街を散策中に見知らぬ店があることに気付いた。看板を見るとどうやら喫茶店のようだ。彼は看板の中の『占いやっています』という文字にイムイムの噂を思い出した。

（占いかー、俺、どんな占い見ても割りと結果似てるんだよね……でも……うん、そーだな）

　少々悩みながらも武道は喫茶店の中へ入っていった。占いを希望することを伝えて案内された先に居た少女に武道は微笑みかける。

「どーも、君が噂の占い師？」
「そうなのだ！　占いの客みたいだな。座ってくれ！」

　彼女に促され座った武道はメニューを開きつつ店員を呼んだ。

「対価はお店のケーキ、でいいのかな？　あ、俺はホットコーヒーください！」
「ありがとうなのだ！　店員さん、イムイムはモンブランをいただくのだ」

　店員は二人の注文を聞くとキッチンへと去っていく。それを見届けるとイムイムは武道に向き直る。

「で、どうしたのだ？」
「えっとねー、『皆に対する振るまい方に関して』占ってもらおうカナー」

　と言って、彼は届いたコーヒーを飲み飲みこう語り始めた。今まで自分からガンガン動いていたが、これからもこんな風に行動していいのか、と。十一月。高校三年で部活も生徒会もひと段落した時期。それに少し寂しさを覚える中ふっ……と思い返すことが多いのだという。

「って感じぃ！　……悩むくらいなら、俺以外の何かの意思を参考にするのもいいかな、なんてね」

　それを最後まで聞くとイムイムはゴクリとモンブランを飲み込み、なんだか神妙な面持ちになり、懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。武道がカードを繰るイムイムの手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「わかったのだ！　早速占っていくのだ！　んむー……んむむむむー……」

　イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。彼女は二本の杭が描かれたカードと三枚の金貨が描かれたカードを指さしてこう言う。

「結論から言うと、まったく問題ないのだ。この調子で進んでいけば周囲の人間関係や成績も良い感じになるのだ。何かトラブルが起こっているとかそういうのも見えなかったのだ。周囲の人の様子もいつも通りなのだ」
「ふむ……なら気分が少し楽になったな」

　とは言うものの、イムイムの表情は暗い。彼女は腕を組んでちらちらと武道を見た。

「でも……うーん……イムイムの感想だけど、ちょっと心配になるのだ。弱音を吐ける友達がいるなら大事にするのだ……」
「うーん……わかった、参考になったよ」

　その言葉も真剣に受け止める彼の様子にほっとしたのか、イムイムは顔を上げる。

「大丈夫か？」
「うん、オッケー！　ありがとう！」
「良かったのだ！　体調に気を付けてなのだー！」

　それから代金を置いて去っていく武道を見送りつつ、イムイムは視界の端に見えた人影に振り向いた。

「お？　次の人、どうぞなのだー」

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