占い少女のトリックオアトリート｜リアクション

占い少女のトリックオアトリート

◆精神的双生児の而今

　訪れた客の姿にイムイムは見覚えがあった。ただ三日月のヘアピンと硬い表情だけは見覚えのないもので、彼女が以前恵御納夏朝が言っていた別人格なのではないか？　という考えが浮かぶ。

「こんにちは、イムイムさん……」
「久しぶり……でいいのか？」

　首を傾げるイムイムに対し、夏朝は落ち着いた様子でこう言った。

「久しぶり……というより、『僕としては』初めましてになるかな。夏朝の別人格『夏夜』だよ」
「あ、そうか。はじめましてなのだ。どこまで知ってるのだ？」
「この前のことは夏朝から聞いてるから大丈夫。夏朝、結構喜んでたよ」
「良かったのだ！」

　そうしてイムイムの向かいに座った夏夜は、メニューを開きつつ彼女を一瞥する。

「だから僕も気になって……占ってもらえればと思って」
「わかったのだ。で、どうしたのだ？」

　店員にイムイムの分のサンドイッチとウーロン茶、クッキーを注文して、夏夜はメニューを閉じた。

「そうだな……『僕の未来』で頼むよ。夏朝が占ってもらった内容を踏まえた上で、新たな指針が出てくるかもしれないから」

　それを聞くとイムイムはゴクリとお冷を飲み込み、なんだか神妙な面持ちになり、懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。夏夜がカードを繰るイムイムの手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「わかったのだ！　早速占っていくのだ！　んむー……んむむむむー……」

　イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。彼女は六枚の金貨が描かれたカードを指さしこう言う

「結論から言うとかなり不安定な未来なのだ。何か強大な敵が現れるところが見えたのだ。そしてそれは二人の身近なところに居るのだ。学校とか……でも周りの人が二人にいいアドバイスをしてくれるところが見えたのだ。乗ってみるのもアリなのだ」

　そうしていると注文したものが届いた。イムイムはカードを片付けつつTemperanceと描かれたカードを夏夜に見せる。

「状況を打開するにはとにかく落ち着いていることが大事なのだ。焦ったり怒りにとらわれると良くない判断をしてしまうのだ……気を付けるのだ」
「……なるほどね」

　夏夜は彼女の言う事を真剣に聞いているのか度々頷いている。終始渋い表情をしていたイムイムであったが、サンドイッチを食べ始めた途端元気な声でこう言った。

「でもそれに気を付ければ大丈夫なのだ！　二人の仲が壊れるとかそういう未来はとくに見えなかったのだ。敵もなんとか倒せそうに見えたのだ」
「……そうか」

　夏夜はそれを聞くと柔らかな微笑を見せる。

「僕の事も占ってくれて……本当に、ありがとう」
「どういたしましてなのだ！　こちらこそサンドイッチありがとうなのだ。美味しいのだ……」

　イムイムも微笑み返し、暫しの間食事を楽しんだ。時計の針がぐるりと回った頃、夏夜は席を立つ。

「じゃ、僕はこれで」
「お？　また会おうなのだ！」

　そうして喫茶店を出た夏夜は、その扉に振り返りこう思うのだった。

（イムイムさんが、これから先の寝子島等でも……良い事・楽しい事に沢山巡り合えますように）

　その祈りが届くかどうか、誰も知らない。

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あとがき

担当マスター：六原紀伊
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この度はご参加ありがとうございました。六原です。

ご相談内容についてはリアクション中で答えていますが、全体的な結果は個別コメントで簡単に書いています。
イムイムからの一言付きです。イムイムはしばらく寝子島に留まるようですので、また皆さんを占うこともあるかもしれません。

今後のガイドですが、未定です。マスターページで改めて告知いたします。ご縁がありましたらその時はよろしくお願いします。
それでは改めて、ご参加ありがとうございました。

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