占い少女のトリックオアトリート｜リアクション

占い少女のトリックオアトリート

◆和洋折衷は如何

　外ではぴゅうぴゅうと冷たい風が吹いているが、喫茶店の中は煖房がきいていて暖かかった。その隅の席でイムイムは羊羹を食べている。なんとも幸せそうな彼女を前にして、天満七星はううん、と唸った。

「何を占ってほしいか、ですか……」
「そうなのだ！　なにかあるか？」

　イムイムは緑茶を飲みつつ悩む七星を見ている。二人の間に暫し沈黙が流れた。

「では……和風と洋風、私はどちらに進むのがよいでしょう？」
「うん？　どういうことなのだ？」
「つまり、旧きを大事にするか、新しきを重んじるか、ということです」

　漸く口を開いた七星の言葉にイムイムは首を傾げる。七星はこう続けた。

「伝統か、進化か、と置き換えてもいいかもしれません」
「なるほど」

　イムイムは再び羊羹を口に含んで顔を緩めると、彼女の話に耳を傾けた。

「どちらへ進むのが適切か、まだまだ悩み続ける部分であると思うので、答えが出なくても一向にかまわないものではあるのですが……」

　真剣な彼女の目に、イムイムも自然と真顔になっていく。

「ですが、何かの道しるべがわかるなら、それに従っていくのもいいかと思うのです」
「ふむふむ……」
「もちろん難しいことがらと思っています。むしろ迷ったほうがいいのかもしれません」

　俯いた彼女は少しの間考えてから、顔を上げた。

「だからこそ、迷いながらも、小さなひとすじのなにかがみえれば、と……」

　それを最後まで聞くとイムイムはゴクリと羊羹を飲み込み、なんだか神妙な面持ちになり、懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。七星がカードを繰るイムイムの手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「わかったのだ！　早速占っていくのだ！　んむー……んむむむむー……」

　イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。

「ナホナホは本当に悩んでるみたいなのだ……でも、無限の可能性に満ち溢れているのだ！　それで、どちらの道に進むかだな……」

　イムイムはVの字に並んだカードの中の、杯を持った王のカードを指し、続いて三本の杭の描かれたカードを指す。

「和風の道に進んだ場合には、ありのままのナホナホでいる未来が見えたのだ。で、洋風の方は新しい環境に身を置いて、のびのびと活躍しているナホナホが見えたのだ。イムイムが思うに、いったん洋風の道に進んでみるといいと思うのだ。合わないと思ったらやめるといいのだ」

　ここまで言い切ったところで、イムイムは緑茶を一口飲み唸った。

「うーん……人生はいろいろなのだ。ナホナホの相談内容は一生かけて悩む人も多いのだ……イムイムの言う事はあくまで参考程度にとらえてほしいのだ」
「そうなんですね……わかりました」

　七星はイムイムにお礼を言うと、すっと立ち上がる。

「ありがとうございました。とても参考になりました」
「良かったのだ！　また何かあれば相談に乗るのだ！」

　和服を翻して去っていく七星を見送りつつ、イムイムは視界の端に見えた人影に振り返った。

「お？　次の人、どうぞなのだー」

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